top of page

光が消えても

……………………

…………

……

あれから数多の歳月


(なぜ今、思い出したんだろう……)


天界からの総攻撃という未曽有の事態

人間界に姿を眩ませ、魔力を失うという大失態を犯したウエスターレンに対し

激昂する大魔王


部屋中の窓が莫大な音と共に割れ吹き飛んだ


「私に嘘がバレないと思ったか!ウエスターレン!」


天井のシャンデリアも弾け飛び、ウエスターレンに突き刺そうと襲い掛かった。

ダンケルの前に真っ赤な鮮血が飛び散った。

鮮血を見るなりダンケルは嬉しそうに微笑みを浮かべていた。


「…イ…イザマーレ…?」

「…ウエスターレン…大丈夫か?…」


シャンデリアの矢を受けたのはウエスターレンを庇ったイザマーレだった。

まともに攻撃を喰らい全身血塗れとなっていた。

ボタボタと床に血が広がっていく。


イザマーレはウエスターレンの顔を見て安心したように気を失っていった。


ウエスターレンの視界からイザマーレが崩れ落ちていく。


ウエスターレンは顔にも身体にも

イザマーレの返り血を受けて真っ赤に染まっていた。

ワナワナ震えているウエスターレンが顔を上げると、

その光景を前に冷酷な微笑を浮かべるダンケルに怒り

一気にウエスターレンの顔は元の悪魔に戻った。




 

そして怒り任せで魔力で剣を出しダンケルに襲い掛かった。

しかしダンケルの前には結界が張られていて弾き飛ばされた…


ウエスターレンは弾き飛ばされ壁に叩きつけられ

全身を強く打って仰向けに倒れた



強く強打したせいか息がろくに出来ない。

気配を感じ目を開けた

「!?」

真上にダンケルが飛び掛かっていた

金色に光る剣を振りかざし冷たい微笑みを浮かべて…

ウエスターレンに馬乗りになり剣を振り下ろした

剣はウエスターレンの首横にすれすれに刺さった


「ウエスターレン!!!」

セルダが叫ぶ。


しかし助けに行こうにもダンケルが結界張ってあり、入る余地がなかった

ウエスターレンの首筋からうっすらと切れたのかほんのり血が流れた


「お前が私に歯向かうなどなんぞ666万年早いわ!

お前は私に忠誠を誓ったのは嘘だったのか?

皆の前で殺してもよいのだぞ?ウエスターレン…

それとも許可無しに人間界へ行ったイザマーレを八つ裂きにしてやろうか?」


ウエスターレンは息が上がって答えることすら出来ない。

「…イザマーレには…手を…出すな…ダ…ケ…」


ダンケルはウエスターレン襟首を掴み顔を近くに寄せた


「…ふふふ…イザマーレの返り血でお前の顔は血塗れ…美しい…。

もっとイザマーレの血を浴びたいのか…?」



「や…やめろ…ダンケル…アイツは…」


「おやぁ?笑わせないでぇ?大切なイザマーレの事ほっといて

人間界にのめり込んだのは誰だ?…わかってるのか!

お前だ!ウエスターレン!」


ダンケルがウエスターレンの身体に魔力を送り込み

ウエスターレンは叫ぶ暇もなく気を失っていった




 


…………

ダンケルがウエスターレンに馬乗りになっている時、

ベルデはイザマーレを医務室に運び手当てをしていた。

かなりのダメージを受けていたが、ベルデの全霊の魔力で

数週間後に目を覚ました。


「…ベルデ?…ここは…」


「やっと目覚めたね...ここは僕の医務室。」

ベルデは安堵した


「…!ウエスターレンはどうした!怪我してるんじゃないだろうな!ベルデ!」

がばっと起き上がりベルデを掴んだ


「イザマーレ駄目だよ、起き上がっちゃ!傷口開くから!」

ベルデはグイグイ掴んでくるイザマーレを窘める。


「ベルデ!ウエスターレンはどうしたと聞いてるんだ!答えろ!」


耳を貸さないイザマーレに、ベルデは今までの経緯を話した。


「…陛下に歯向かっただと…バカな事を!無事なのか?ウエスターレンは…」


「…ウエスターレンは陛下の担当医師が診ているから僕にはわからない。」

ベルデの言葉に震えて聞いている


「…ウエスターレンに会いたい。会わせてくれ!ベルデ!」



 

「だから、無理なんだってば!陛下が許すわけないでしょ?

冷静な陛下がウエスターレンを襲った位、激怒してたんだから。

それにイザマーレだって無許可で人間界に行っちゃったから

更に怒ってるんだってば!

で、これ…陛下からイザマーレが目覚めたら渡せとさ。」


胸ポケットから取り出した手紙を渡した。

イザマーレは手紙を受け取るなり封を開けて目を通した。

読み終えるなり震えて愕然としている。


「…もう…ウエスターレンとは話も出来ないようだ...」


「え?何で?」


「二度とウエスターレンに吾輩の護衛はさせない。

情報局は部下に任せ、ウエスターレンは陛下の護衛のみにするって…

わ、吾輩がウエスターレンに近付いたら、即刻あいつを抹殺する…と…」

イザマーレは震えて顔を背けて泣いていた


「…イザマーレ?」


「…助けてもらって悪かったな…ベルデ…

申し訳ないが吾輩1魔にさせてくれ…」


「…わかった。何かあったら呼ぶんだよ?」




閲覧数:7回0件のコメント

最新記事

すべて表示

事件当日

…… 大魔王陛下から、久しぶりにお茶会を開こうと誘われたのは数日前。 今日がその日なのだが、まだ少し時間がある。 どうしたものかと思案していると 「あ、……クリス様…」 吾輩の髪に腰掛けている女、リリエルが呟いた あの時吾輩の手に落ちて、一度は瀕死の重傷を負ったが、...

ここに、永久に

久々の晴天... そろそろ人間界では春を迎える季節になっていた。 イザマーレから未だに呼び出しが掛かって来ない… リリエルは寂しさを感じていた。 イザマーレの髪に座るには彼の力も必要だった。 リリエルは寂しさを紛らわすために休まず接客業をしていた。...

陰謀

イザマーレはリリエルが姿を現した途端に抱きしめた。 「!…どうなされたのですか?…閣下」 いつもと違うイザマーレに動揺が隠せない 「…このままで居てくれ」 結構長い時間抱きしめ、やっとイザマーレは離れた 「リリエル…確認したいことがある…コイツ知ってるか?」...

Comentários


bottom of page