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スプネリアが暮らしていた家の近所に蛍の生息地があり、

毎年、人間の姿をしたラァードルと一緒に見に行っていた


ラァードルが急にスプネリアの前から姿を消したのも、

ちょうど蛍が飛び始める今頃の時期だった


お互いに言葉にはしなかったが、蛍を一緒に見に行くことは

2名にとって自然な約束事のように感じていた


もしかしたら、蛍だけは見に来るかも…

そんな僅かな期待を抱きながら、

雨が止むとすぐに沢に行かずにはいられない


今日だけは都合が悪かったんだ

今年だけはきっと時間が合わなかったんだ

そんな言い訳を必死に探しながら…


だが、そんなスプネリアの儚い夢さえ打ち砕く日が来る


都市開発で、沢が潰されたのだ

もう二度と会えないのだと思い知らされたようで、

蛍が苦手になった


それからは、その土地からも離れて、ひたすら仕事に没頭した

大事なモノを奪われた悲しみを忘れるため、

人が嫌がる仕事を率先してやり、

考える暇なしに自分で追い込んでいた

嫌いになれれば、むしろ気が楽になったのだろうけど…



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