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王都ビターバレーの外れ


負のオーラに覆い尽くされ

壁は崩れかけ、蜘蛛の巣が張り巡らされている



曲がりなりにも、イザマーレ族の中では

イザマーレに次ぐ地位と称号が与えられていた

名門の落ちぶれた様は、情けないとしか言いようがない


貧相な建物の周囲を、ウエスターレン率いる情報官たちが取り囲む

紫煙を燻らせ佇むウエスターレンの傍らに現れる影。


「…ご苦労さん。リリエルは…?」


「待たせたな。リリエルは無事だ。どんな状況だ?」


「ランソフなら、先ほど部下に保護させた。

かなり魔力が消耗していたが…それより、問題はヴィオラだ。

あいつ、リリエルの髪を使って、とんでもない事をしでかしやがった」




 

特殊な魔術を駆使し、

リリエルの髪を一本ずつクローンに仕立て上げる

だが、ベルデにはるか及ばない魔術では、

正確なリリエルを生み出すことができない


結果として、何体ものリリエルもどきを量産させていた


腕のないリリエル

足のないリリエル


出来損ないのリリエルもどきは

裸体のまま打ち捨てられ、放置されていた


そして、最後の一本で、

本物に寸分違わぬリリエルを生み出した時

思わぬことが起きた


偽のリリエルを作り、副大魔王を失墜させ、王家に反旗を翻す


当初掲げていた目標が、

いつの間にか、リリエルを生み出すこと、

そのものにすり替わっていたのだ


ヴィオラ自身が生み出したリリエルもどきに魅せられ

その色に溺れ、凌辱の限りを尽くしていた


かつての、天界の事件のごとく…




 

色に狂った首謀者に、従い続けるほど馬鹿な悪魔はいない

ランソフを拘束していた悪魔たちも、いつの間にか逃げ出していた


ランソフは、ヴィオラの悪行三昧を決して許さず

証拠になるものはないかと、建物内に足を踏み入れた


無残な姿で凌辱されるリリエルの姿を目にした途端

身体中から怒りが噴出し、ヴィオラに立ち向かったランソフ


敢え無く、ヴィオラから反撃を喰らい、瀕死の状態に陥りながら

メッセージを飛ばした……


「…ミイラ取りがいつしかミイラに。

マリオネットの操り糸の呪いにかかったか。」


「最早、奴に王家を狙う程の気概は残っていない。

放置しても、問題はない程度だが…」


イザマーレとウエスターレンはお互いに目配せし合う


「そんなものは関係ない。リリエルに対する非礼千万。

それだけで、万死に値する。そうだろ?」

ニヤリと笑うイザマーレ。


「やれやれ。証拠隠滅のために、俺様も力を貸そう♪」

ため息をつくフリをしながら、ほくそ笑むウエスターレン。




 

近づく影に、拘束されたヴィオラが目を剥き、悪態をつく

「ケケケっ、お前の大事な女は、すでに私のも……」


今際の言葉を最期まで言わせず、剣を翻し、首をはねる


無残に転がる首を踏みつけ、冷酷に嘲笑うイザマーレ


「…良い夢を。」


そのまま踏みつぶされ、ヴィオラの身体は木っ端微塵に弾け飛ぶ


その瞬間、ウエスターレンが邪眼を解き放ち、

跡形もなく焼き尽くされ、焦土と化した。


全てが無に帰し、抱きしめ合うイザマーレとウエスターレン


「…よく我慢したな、イザマーレ。いい子だ。」


「ウエスターレン…お前に甘えたいところだが、ランソフが心配だ。

お前も来い。お楽しみは、後でな」



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