top of page


イザマーレの屋敷でラァードルと濃密な時間を過ごしたスプネリア

その後はラァードルの専属ペットとして、いつも一緒に行動するようになった


一緒に居る時間が増えれば、愛おしさも増える。

夜にはプエブロドラドの部屋で、毎日のように寄り添われながら

少しでもラァードルの役に立てるように、何をすればいいのか

いつも考え続けるスプネリア


『閣下の御心が、少しでも軽くなれるように力を尽くしたいだけなの』


リリエルの言っていた言葉の意味も、深く理解していく

リリエルでさえ、答えのない毎日に努力し続けているのだ


(…私なんか、まだまだよね。)

いつの間にか、急激な状況の変化に対する不安より

より深く、ラァードルを愛するようになっていたのだ


「…スプネリア、支度できたか?そろそろ出かけるぞ」

「あ、うん…大丈夫」

ラァードルはスプネリアと軽く口唇を合わせ、

ドラムスティックで彼女の髪をポンと優しく叩く

小型化したスプネリアを髪に乗せ、打ち合わせの為に

バサラの邸宅へ向かった


「ラァードル、スプネリアちゃん、いらっしゃい♪」

邸宅ではバサラが笑顔で出迎える。


ラァードルたちが打ち合わせを行っている間、庭に出て

遊びに来ていたバナトラと一緒にのんびりと散策していた


鏡のように綺麗な池の前に来た時

あるものを見てスプネリアは固まる




 

「あら…蛍ね。そんな季節になったのね」


「……っ」


「…? スプネリアちゃん?顔、真っ青だよ、大丈夫?」

スプネリアの異変に気付いたバナトラ。

だが、バナトラの問い掛けに応えることもできず、震え続けていた


「やだ、ちょっと無理しないで。殿下を呼んでこようか?」

さすがはナース。

バナトラはスプネリアを近くのベンチに座らせ、冷静に観察を始める。


「…ご、ごめんなさい。心配かけて…

殿下には言わないでほしいの、お願い…っ」

必死に震えを止めようとしながら、バナトラを引き留めるスプネリア


「……分かった。スプネリアちゃんの言うとおりにするから。

今はとにかく落ち着いて…」

ただならぬ状況であることを察したバナトラは

とにかく彼女の希望どおり、傍に居て介抱し続けた


やがて、打ち合わせを終えたラァードルが迎えに来て、

一緒に帰って行った


「バナトラ~♪お待たせ。ようやく仕事終わったよ~。おいで♪」

数分後、優雅な姿を惜しげもなく振る舞い、バナトラを抱きしめるバサラ


そんなバサラを後目に、バナトラは支度を始める

「…あんたはいいわね、いつでもお気楽で(苦笑)出かけてくるわ。」

「えっ…ちょっとバナトラ…行くってどこへ…?」

バサラは慌てて後を追う


バナトラの向かった先はイザマーレの屋敷。


「あら?バナトラ様。いらっしゃい。

参謀もご一緒なのね。どうなさったの?」

リリエルがいつものように笑顔で出迎えた



 

「……そうだったの…」


リビングで、バナトラの話を聞いたリリエルは、口に手を当てて考え出す


「スプネリアちゃんには頼まれたけど、

なにかあるんじゃないかと思って…

リリエルちゃんにだけは伝えた方が良いと思ったの。

バサラ!あんたも黙ってなさいよ。絶対だからね!!」


「いやだなあ、バナトラ。僕がそんな事、するわけないじゃない。

でもそうか、ラァードルもあの子のことは間違いなく愛してるからね。

あいつらの事で困ったことがあるなら、何でも力になるよ♪」


そう言いながら、リリエルの淹れたコーヒーを優雅に飲むバサラ


「クスっ 参謀、本当にお優しいですね。ありがとうございます。

そうですね、出来れば今は、そっと見守ってあげてくださいますか。

バナトラ様も、本当にありがとね。」

リリエルは微笑みながら、答えた


「ううん。あたしに出来ることがあるなら、いつでも言って!!

急に来てごめんね。また女子会で!!…ほらっバサラ!帰るわよ!!!」


2杯目のコーヒーを注ごうとしていたバサラを引っ張り、

バナトラは屋敷を後にした



 

その夜、イザマーレに寄り添われながら、

リリエルは想いを馳せていた


「…リリエル?何かあったのか?」

抱き寄せ、髪を撫でながら見つめるイザマーレ


「閣下…閣下はきっと、私がいくら隠しても

ご存じでいらっしゃいますよね?今でも毎日…」

言いかけて俯くリリエル


「ん?…誰かさんが欲張りになってしまう事か?

夜空を見上げる度にな…」

「///も、もう……っ」

真っ赤になってプンスカしながら、

涙を浮かべるリリエルをゆっくりと押し倒す


「それから天界の奴らを心底憎み、怖がる。

目覚める度に吾輩を探し続けるほどにな…」

微笑みながら口唇を重ね、愛し始める


(心配するな。それはすべて、吾輩も同じなのだ。お前以上にな…)





閲覧数:0回0件のコメント

最新記事

すべて表示

紅蓮の確信

「閣下。そしてリリエル様。今日は本当にありがとうございました。 貴重なお話まで聞かせていただいて、本当に嬉しく思います。 もう一度、よく考えてみようと思います。前向きに… あの、その時は…よろしくお願いします///////」 「遠慮はいらない。何かあったら、...

紫蘭の告白

…… 「…そうだったの…」 屋敷のリビングで、スプネリアの話を聞いたリリエル。 「私たちにとって、何にも代えがたい、約束の場所でした。 その場所が大人たちの都合で埋め立てられ、守り通すことが出来なかった… 殿下が大好きだったあの場所が奪われてしまった怒り、悲しみ、憤り……...

スプネリアが暮らしていた家の近所に蛍の生息地があり、 毎年、人間の姿をしたラァードルと一緒に見に行っていた ラァードルが急にスプネリアの前から姿を消したのも、 ちょうど蛍が飛び始める今頃の時期だった お互いに言葉にはしなかったが、蛍を一緒に見に行くことは...

Commenti


bottom of page