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予感


イザマーレの屋敷では、

いつもと少々違う光景が繰り広げられていた


ウエスターレンが情報局部屋に籠りがちになり、

昼間にイザマーレとの蜜月な時間を過ごせなくなっていた


夜は毎日のようにリリエルと寄り添っているのだが、

ウエスターレンとは、朝食時に顔を合わせる事すら、少なくなっていた


2魔っきりの執務室で、仕事をするリリエルを眺めながら

大人しく我慢できるような副大魔王では……ない




 

PC画面と睨めっこしているリリエルの隣に座り込み

「…今日の仕事は、その辺にしないか…」

と甘く囁き、悪戯を始めるイザマーレ


「////////閣下っ もう……

すぐに次のお仕事来ちゃいますから……」


その度に真っ赤になりながら、困り顔のリリエルも可愛い


「仕事…?そんなもの、今日はもう止めてやる。おいで、リリエル…」


有無を言わさず、口唇を奪い

プライベートルームへリリエルを連行しては愛し合う日々……


滞りがちになる公設秘書の仕事だが、ウエスターレンは何も言わない

そもそも、執務室に寄せられる陳情の数そのものが

このところ、激減しているようだった


その日も、いつものようにリリエルと抱き合い

眠りについたリリエルを愛しく眺めていた……その時

屋敷の中にウエスターレンの気配を感じたイザマーレ


そっと扉を開け、確認しに行く




 

ウエスターレンは情報局部屋で、膨大な資料を前に

眉間にしわを寄せ、紫煙を燻らせていた


今のところ、ベルデから望ましい返事もまだない



 

「…ウエスターレン」


「ん!おお、イザマーレ。どうした?」


久しぶりに顔を合わせたイザマーレに、

心が潤い、見つめ返すウエスターレン


だがイザマーレは、への字口で俯き、しょんぼりしている


「吾輩に内緒で、何をコソコソと調べてるんだ?

そんなに吾輩、役に立たないか?」


可愛すぎる大悪魔に、思わず抱き寄せ

髪を撫でるウエスターレン

その途端、サラサラな髪になるイザマーレ


「寂しかったのか?可愛い奴め。

俺がお前を忘れるわけないだろ?」

イザマーレの顎に指を添え、口唇を重ね合わす


「…お前にも最終的には頼む事になるが、今はまだダメだ。

なにせ、お前は目立つからな(苦笑)」


「レン…」


見上げるイザマーレと、もう一度甘いキスを交わし合う


イザマーレのぬくもりに、湧き上がる食欲をなんとか堪え

抱きしめるウエスターレン


「ごめんな。どうしても今は集中する必要があるんだ

あとは、リリエルの所にいろ。公務のサボりは見逃してやるから。

全てが片付いたら、寝かせてやらない。覚悟してろ♪」


「…分かった。だが、お前だけで無理なことはするなよ。

約束だからな、ウエスターレン」




 

(ウエスターレンが吾輩との触れ合いを我慢してまで

集中しなければならないほどの何かが、起きるという事か…)


それ程までに守ろうとしているのは何か…

嫌な予感に苛まれる



「…ん…かっか…?」

目を醒まし呼びかけるリリエルを、優しく抱きしめる

「…ここにいる。心配するな。」


「…閣下…?なにか心配事でも?」


不安そうに見つめるリリエルに微笑み返す

「いや?何もない。お前が目覚めるのを待っていただけだ…」


すぐさまリリエルを押し倒し、営みを繰り返すイザマーレ


「……」


イザマーレが笑顔で見つめる時、

それは大抵、リリエルに余計な心配をさせまいと気を遣っている時だ


(…閣下…大丈夫です。私はいつでも、閣下のお傍におりますから…)


心の中で強く誓いながら、リリエルはイザマーレの腕に抱かれ続ける…







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