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再会


イザマーレがリリエルと直接関わりを持てたのは

ウエスターレンを一時的に失い

孤独に苦しむ最中、25周年が過ぎた頃だった

その後、『アーティストとファン』を装い、

逢瀬を重ねるイザマーレを微笑ましく見ていたラァードル。


「いいよな、サムちゃんは。魔界と人間界だけど…

遠距離恋愛の極意ってあるの?教えてくれない??」


「さて…そうは言っても、ウエスターレンを失ったままだからな。

お前の親父にも、迷惑をかけてしまっているよな。申し訳ない…」


彷徨い始めた言霊を抑えきれず、苦慮していたイザマーレは

この頃、人間界を訪れては

人間の女性を次々と黄泉の国へ葬り去っていた

ようやく蜜月になりかけたリリエルとも

その身の安全のために距離を置いていた


自身の抹殺を考えたイザマーレの窮地を最終的に救ったのは

天界でミカエルに直談判したラァードルとダンケルだった


その後、人間として天寿を迎え、悪魔として甦ったリリエルを妃に迎え

ついに念願を果たしたイザマーレ。


穏やかな笑顔で寄り添い続けるイザマーレとリリエルを

ラァードルも心から祝福していた

ようやく一安心。そう思った時、ふっと湧き上がる想い。




 

随分と長い間、別れたままになっているスプネリア…


「…ま、今さら、仕方ないよな。それよりミサの準備っと…

ああ~お腹空いちゃったな。サムちゃんのとこに行けば、

リリエルちゃんに作ってもらえるかな♪」

そんな事を呟きながら、屋敷に向かったラァードル


ラァードルの思惑通り、笑顔で出迎えたリリエルがご馳走を作り

ウエスターレンも交えて、4名で食事をしていた


「そういえば…」

ふいに、リリエルが問いかける。

「ん?どうした、リリエル」

イザマーレが見つめ返す。


「最高魔軍の黎明期については、よく夢に見ておりました。

ただ、ラァードル殿下が最高魔軍に加入された頃の

エピソードをあまり存じ上げてなくて…

雷神界の皇太子様である殿下が、

どうして人間界に潜伏なさってたのでしょうか?」


「ああ!そのことねー。実は吾輩もあの時、

親父に頼み込んで人間界に行かせてもらったんだよ」


「!…雷神殿が?」


「そうそう。サムちゃんとウエスターレンが

人間界に潜伏してから、数年後だったんだけど。

天界での出来事があまりにも酷くて、

それでも何もできなかった自分が悔しくてね。

リリエルちゃんを追って、

サムちゃんたちが人間界に行ったって聞かされて、

吾輩も直談判したってわけ。」


「……そうだったんですね。」


思わず涙ぐむリリエルの髪を撫でながら、イザマーレも尋ねる。

「封印が解ける瞬間は、やはり突然だったのか?」




 

「ああ、そうねー。あの時、近所の子に

曲のプレゼントをしようとしてて……

実はその曲が、封印を解く鍵だったみたいでね。

驚いたよ。突然ベルデがお迎えに来てさ……」


「えっ……じゃあ、その時の曲って、

プレゼントできなかったんですか?」


「あまりにも急だったからね……

でも実は、最高魔軍の教典に入ってるよ♪」


「そうなんですね!!……じゃあ、

その子も聞いてくれてるといいですね」




 

……

数日後、Lily‘sの女子会を開いたリリエル。


「リリエル様、こんにちは。

今日はお招きいただいてありがとうございます」


「スプネリア様、いらっしゃいませ♪楽しんでいってね。」


「リリエルちゃん、この子が新しいメンバーね」


「うん。スプネリア様です。

ラァードル殿下がお好きなんですって♪」

Lily‘sに紹介するリリエル。

「へ~そうなんだ。よろしくね♪」


とりとめのない会話で盛り上がる女子たち。



そこへ、リハーサルを終えた最高魔軍の構成員たちが姿を現す。


「!あ、おかえりなさいませ。お疲れ様です♪」


「リリエルちゃん、

この間話していた曲、持ってきたよ。これこれ!」

ラァードルがリリエルに話しかける。


「わぁ♪ありがとうございます!早速聞かせてもらいますね♪」

リリエルはいったん、自分の部屋に戻っていった。



その時はじめて、周りにいる女子に顔を向けたラァードル。

その中の一人に気づき、固まる




「……スプネリア?」




 

「ラァードル?どうかしたか?」


いつもと様子が違うラァードルに気が付いて

イザマーレが声を掛ける。


「……彼女。隣に住んでた女の子。」

「! ああ、曲をプレゼントしそこなったっていう?」


戻ってきたリリエルも驚いた

「えっ!スプネリア様が?????凄い♪こんな事って……

ふふっ。スプネリア様、殿下の事が好きって言ってたもんね?」


一部始終を見聞きしていたスプネリアは涙が止まらなかった……



スプネリアの前にゆっくりと近づくラァードル。

「…スプネリア。すごい遅くなっちゃってごめん。

今更だけど、吾輩からのプレゼント、受け取ってくれるかな?」


リリエルがそっと、曲を流す。



「どんよりな雨が嫌いなスプネリアのために、

本当の雨の色を教えたいと思って作ったんだ。」


泣き続けるスプネリアを優しく抱きしめるラァードル




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