「なんだって?裕子に渡したのか?歴史書を……」
情報局の仕事のついでに、文化局に訪れていたウエスターレンは
ベルデの思いがけない言葉に驚く
「…ここ最近、リリエルちゃんの生い立ちや、エマ事件の事で
花の種についてかなり詳しく研究させてもらったからね。
言いたくても、なかなか言い出せないイザマーレのために……
そんなに睨まないでよ。悪い事じゃないんだから♪♪」
のんびりと、しかし何かを企むような目つきでベルデは笑っていた
「…ほんと、喰えねーヤローだな。お前……」
苦笑しながら、ウエスターレンものんびりと紫煙を燻らせる
「だから……禁煙!」
ベルデがようやく本音を伝えた時、
ウエスターレンはすでに姿を消していた
……
数日後、魔界に戻った裕子は、早速イザマーレの屋敷に訪れた
「いらっしゃい♪裕子さん」
いつものように笑顔で出迎えるリリエル
そして、いつものように隣で寄り添うイザマーレ。だが
裕子の様子が違う事に気がつく
「…?裕子さん…?どうかした?」
お茶を差し出しながら、リリエルが問いかける
「リリエル様…閣下…あの……」
どう話したらいいのか分からず、俯く裕子
「…たまには、気分を変えて出かけてみるか。
裕子、お前も来い。ウエスターレン!出かけて来るぞ!」
「…了解♪仕方ない。今日は留守番してやるよ♪」
イザマーレの呼びかけに、
ウエスターレンはニヤリとほくそ笑んでいた
リリエルと裕子を抱き寄せ、瞬間移動で訪れたのは丸太小屋
「…?」
リリエルは不思議そうな顔をしていた
「リリエル、おいで。」
長椅子にリリエルを座らせ、イザマーレも隣に座る
「裕子、お前も座れ」
木製のテーブルを挟んで、正面の椅子に裕子を座らせる
「リリエル。そして、裕子。お前たちに話したい事がある」
静かに語り出したイザマーレ
……
「!!」
驚いて口を手で覆い、涙を浮かべるリリエル
そして裕子も、同じように涙を流していた
「リリエル。お前が百合の花リリの姿で屋敷に居た頃に
産み落とした種から生まれ変わった裕子は
間違いなく、お前の娘だ」
リリエルの髪を撫でながら、
穏やかな表情を見せるイザマーレ
「お前の笑顔が見たかったんだが……泣き虫め(笑)」
「/////もう、閣下ったら…これは嬉し泣きですっ……」
恥ずかしそうに俯いたまま、
イザマーレに抱きしめられるリリエル
「ま、そんなわけで、裕子。お前はどちらかというと
陛下やダイヤより、我々との縁が強い。
お前が望むなら、魔界で暮らす間、
この小屋をお前に使わせてやっても良いぞ?」
泣き続けているリリエルの髪を撫でてやりながら
イザマーレは裕子に問いかけた
「…閣下、話してくださってありがとうございました。
憧れていたリリエル様の娘として、
この世に産んでくださって感謝しています。」
裕子も涙を浮かべながら、話し始めた
「ただ…やはり、なっちゃんの事は放っておけないし、
私はなっちゃんの元で暮らします。
友だちですから…それでも良いですか?」
芯のある裕子の言葉に、イザマーレも異存はなかった
「良いだろう。だが、これからはお前も
リリエルの支えになってやってくれ。お前の事も
吾輩が守ってやるからな」
「…閣下…」
イザマーレの言葉に、リリエルもようやく笑顔になる
「裕子と一緒に暮らせなくて残念か?
心配するな。お前の産み落とした花の種なら
まだいくつか持っている。お前が望むなら
いつでも蒔いてやるぞ♪」
「…えっ…それは…う~ん…(^-^;」
「(笑)…誰かさんは、欲張りだからな♪」
予想通り、少しの焼きもちで戸惑うリリエルを
イザマーレは笑顔で見つめていた
壮絶な運命を何度も乗り越え、強い絆で結ばれていながら
出会ったばかりの恋魔のような空気を醸し出す2魔
裕子はやや呆れつつ、
それでもやはり憧れの気持ちが強くなる
いつかは自分も、そんな恋がしたいと……
Comments