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懲罰


屋敷に着くなり、イザマーレに抱きつき甘えてくるリリエル


「閣下…」


イザマーレは髪を優しく撫で、囁きかける

「吾輩と隠れんぼをしたがるとは、可愛い奴だな、リリエル。

居場所を教えてもらおうか…」


うっとりとするリリエル

だが、次の瞬間、真っ暗闇の部屋に移動していた



「!?」


驚く暇もなく、手足を鎖で縛り上げられている


「閣下?!ひどい、外してください!」


「おや?お前が望んでいるものを与えてやろうというのに。

だが、こういう時は偽りの名ではなく、正しい名を呼んでやろうな

エマよ。…いや、むしろ、ヴィオラ侯爵の”自称”娘と呼んで欲しいか?」


「!!!!!!」


恐怖におののくエマの服を引き裂き、鞭を打ち付ける


堪らず悲鳴を上げるエマ。だが恐ろしいことにその叫び声すら

部屋の壁に吸い取られ、何も響かない


激痛に顔を歪めるたび、苦痛と共に、苦悩の記憶が甦る




 

「この役立たず女が!

何のためにお前を手塩にかけて育てたと思ってる

イザマーレに振り向きもされず、生贄にも選ばれず!」


罵られ、鞭を打たれ、ボロボロになって捨てられた…


瀕死の状態で路上に倒れ込んでいた時に

手を差し伸べてくれたのが、養父魔だった



養父魔は、古くから

イザマーレの屋敷で住み込みの使用魔を任されていた

衣装のクリーニング専門魔だった。


リリエルがイザマーレの妃となってからも、

屋敷とは深いつながりがあり、事情を鑑みた養父魔は

女悪魔に「エマ」という名を与え、自らの娘として

仕事の手伝いをさせるようになっていた




 

屋敷に出入りするたびに、リリエルに優しく微笑みかけられ

イザマーレとリリエルの幸せそうな様子を見るたび、

エマ自身の心も洗われていったのだ


だが、生まれた時からイザマーレの妻になる事を望まれ

当然のことのように受け入れて

イザマーレの腕に抱かれる日を心待ちにしていた

かつての想いを、どうしても捨てる事ができなかった


そして、パンデモニウム宮殿で行われた舞踏会で

なけなしの勇気を出してイザマーレに声をかけたが

見向きもされず、恥をかかされた


嫉妬に狂い、怒りで震えているところに、

かつて自分をボロ雑巾のように捨てた育ての父、

ヴィオラ侯爵が近寄ってきたのだ


「見間違えたように、綺麗になったな…

どうだ。もう一度、私の元に戻らんか?私の力で、

愛する彼に抱かれるチャンスを与えてやるぞ?」



……

しばらくして、我に返るエマ

手足を鎖で縛られたまま、体中に無数の傷……


だが、イザマーレはどこにもいなかった



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