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無題


葉をかさね、枝をのばし、そびえ立つ大樹の根元

鳥のさえずりに目を覚まし、重たい瞼をゆっくりとひらく


彼方の向こうに見えてくる、輪廻に刻まれた数多の記憶


鮮やかに色づく黄金と紅…そして、囚われた日々…


闇にあやされ、穂に連なり、深い眠りの波に漂う

やがて時が満ちて、泥の底へ沈み込む


月の子守唄に見守られ、花の心に宿る

言霊、愛、そして……光




 


夏の夜空に花火が上がる…毎年見ても飽きない。

今年も花火を見に町に来ていた。出店も両サイドに並んでいる。

焼きそばに焼きトウモロコシ…色々目移りしてしまう食べ物…。

リリエルはふと一緒に肩を並べ、金髪の長髪で眼鏡をかけている男性

イザムを見つめ真っ赤になった。

人混みで離れないよう手を繋ぎ、出店を見ながら歩く

まさか…一緒に花火を見て、お互いに見つめ合い、微笑まれ…

これ以上の幸せはないと…心から思うのだ…


出会いは中学生の頃…その頃はすでに人と接するのが苦手になっていた。

グループでの友人もいたが、リリエルはあまり深入りせず、

遊びに誘われたら行くような付き合い方をしていた。

孤独はきつい。だけど深入りしたくないのが本音だった。

夏の夜…学校行事で訪れた宿泊施設。

周りは楽しく参加しているのに全く楽しくなかった…


キャンプファイヤーをしている時、たまたま流れていた歌声

周りの喧騒が一切なくなり、ただひたすら歌唱に耳を傾ける

まるで、自分に直接言い聞かせてると思う程の強い言霊を感じた。


…心地よい歌声…いつかこの方に会いたい。

会って話を聞いてもらいたいと、ずっと願っていた。


まさか人間ではなく、光の悪魔とは知らずに…



 

不思議な事に毎日の様に夢に現れるイザマーレ

毎日リリエルのために素敵な言霊で歌い最後に話も聞いてくれる。

『いつか夢ではなく現実に会いたい』とリリエルが言うと

イザマーレは頷き『約束する』と微笑み優しく抱きしめてくれた。

だが…夢から目を覚ますとガッカリしてしまう。


ある時からイザマーレの夢すら見ることも無くなり、

毎日ストレスの溜まる仕事に追われ精神的に参っていた。

残業して自宅に帰宅するのも真夜中…身体が持たない…

生きてる事さえもう逃げ出してしまいたいと泣いていた


「…リリエル?まだ泣いてるのか?」

泣いているリリエルの背後から聞き覚えのある声…

フワッと抱きしめられた。

抱きしめられた腕を触ると、その暖かいぬくもりに更に涙が溢れる。

「…約束、果たしに来たぞ…リリエル」

イザマーレが悪魔の姿でリリエルの部屋に現れたのだ…


リリエルは更に泣きじゃくり、イザマーレに甘えた

イザマーレも微笑みながら話を聞いてくれた。

それから、人間界でリリエルに会う時は、人間の姿「イザム」として現れ

イザマーレが魔界に居る間も、魔力でいつも髪に座って

一緒にいることも出来るようになった。


ふと出会った頃を思い出し、リリエルはイザムの顔を見ていた。

「…どうした?疲れたのか?」

と笑うイザムに更に耳まで真っ赤になった。


「あれ?リリエル様じゃないですかぁ?」

前から来る女性が声を掛けてきた

「あ!ダイヤ様!」


たまたまダイヤも花火大会に友人と来ていた。



 

「…友達?」

ダイヤと一緒に来ていた連れが聞いてくる


「そう!大切なお仲魔様だよ…って!!」

リリエルの横にいるイザムに気付いた。かなり驚いた顔をして固まったが…


「…貴方様にお会い出来て嬉しいです。

…リリエル様を大切に…末長く…

また貴方様にお会い出来ることを心から願っております。」


ダイヤはイザムに向かい、深々と数秒お辞儀をした。


「…名は何と言う?」

イザムはダイヤを見つめて言った


「…ダイヤと申します」

顔を上げて笑顔で言った。ダイヤの友人は固まってその光景を見ていた


「じゃあリリエル様また連絡するね!じゃあ行こうか!次は何を食う?」


さっさとダイヤは歩き出す。

「ちょっと!どうした?仲間って言ってた横の彼氏は誰!」

連れが騒ぐ


「…仲魔の大切なお方だもの。敬愛の意味で頭下げただけ。

私の行動は気にするなさ!」

と言いながら人混みに消えていった


「吾輩の事を知っていたようだな。人間の姿でも…」

人混みの中に消えていったダイヤを見ながら言った


「…彼女はイザム様のファンです。よくご存知ですから…」

リリエルは笑顔でイザムを見た

「そうか…」

イザムもリリエルの笑顔に微笑んだ。



 

色々出店も周り、花火大会もそろそろ終わる時間になっていた

「…そろそろ屋敷に来るか?」

「…はい!」

イザムはリリエルを連れて魔界の屋敷に移動した


イザマーレの姿に戻り、シャワーを浴びベッドでリラクッスしていると

リリエルもシャワーを浴びスッキリしてイザマーレの横に行った


「今日は楽しかったです…イザム様…」

「…そうか…良かったな。人ごみに疲れてないか?」

イザマーレはリリエルを引き寄せ髪を撫でた

「…イザム様…あの…」

「なんだ?」

イザマーレはリリエルを見つめた


「…あの…今日…もっと甘えたいのですが…」

恥ずかしそうに呟く


「…甘えたいのか?それなら、きちんと吾輩の名を呼べ…」

「…はい…イザマーレ閣下…///////」


真っ赤な顔で俯くリリエル…可愛くなる


「…おいで、リリエル…」

イザマーレはゆっくりと優しく口唇を重ねていった。

首筋に舌を這わせ、赤い印をつけて甘く噛み、リリエルをよがらせる

甘い吐息にイザマーレも堪らなくなり抱きしめる


「可愛いぞ、リリエル...良い声だ...もっと啼け」

「…閣下…お慕いしております…」

気持ち良さに喘ぎながら呟くリリエル


ひたすらに全てを愛撫され、幾度も果てながら

イザマーレの愛を感じていた。この時間がずっと続くようにと祈りながら…



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