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秘密


朝から雨が降っている…


学園の門扉に訪れた、珍客。

一見、凶悪そうに見えるその顔にはイザマーレ族を証明する紋様

見た目を裏切らず、彼の半径500m以内は立ち入り禁止とする噂も…


そぼ降る雨も、強力に覆われた結界すらも気にせず

ズンズンと校内に歩を進めるエレジア


「…波動が気になると、師匠に言われて来てみたが…

そんなわけねーだろ、あいつ等が居るんだし…」


ブツブツと独り言ちながら周囲を見回す

…言われてみると、確かに結界の一部が緩んでいるようだった


「ほんの僅かな誤差だな。…たしかに

珍しいっちゃ珍しいよなあ…」


そう言いながら、守衛室を覗き込む


「!」


目にした光景に固まり、だが次の瞬間

元の穏やかな表情に戻る


「…へえ…あんな表情で寝てやがる…

それならアイツも、幸せだったんだろうよ…」


知らずの内に、フサフサのしっぽが楽し気に揺れ動く


ウエスターレンの眠りを妨げないよう、

結界の切れ目を綺麗に補強し

そっとその場を後にするエレジア



 

それから数日が経った。


体育の時間となり、学園中の生徒が

こぞって体育館に行列を作っている時間…


守衛室に再び訪れた珍客―エレジア―


一瞬警戒し、眼光鋭く見返した瞬間、八重歯を覗かせ

屈託のない笑顔を見せるウエスターレン


「よお!久しぶりだな♪どうしたんだ?」


「…ちょっとな。師匠に頼まれごとがあって、

中央に来たついでに、お前に会っておこうと思ってな」


ウエスターレンはエレジアを守衛室の中に迎え入れ

長い脚を組んで紫煙を燻らせる


「…うまくいってるようだな。安心した。お前が一時期

師匠の所に通っていた頃は、心配していたが…」


エレジアの言葉に、静かに笑みを浮かべるウエスターレン


「イザマーレが百合の花を見つけたからな。

後は俺が、あの2魔を守り抜けばいい。」


ウエスターレンの力強い言葉に、エレジアも納得して頷く


「くれぐれも、無理しすぎるなよ?お前はイザマーレにとって

最も大切な存在なんだ。力になれることがあるなら

俺にも遠慮せず、声をかけてくれ」


「…そうだなあ…リリエルのサロンに、お前も来てくれたら

アイツも喜ぶんじゃないか?」


「!…い、いいのか…?」




 

「何の問題もないだろ。時々、俺の酒の相手にもなってくれ♪」


イザマーレがリリエルと愛し合う間

暇を持て余すようになったウエスターレン。

ちょうど良い相手を見つけたと、ほくそ笑む。


そして、ウエスターレンに懐き始めたリリエルと、

リリエルに向けるウエスターレンの視線が

気になり始めていたイザマーレも、

エレジアのサロン入室とウエスターレンとの逢瀬を快諾する。


もちろん

「朝には帰れよ。絶対だからな!!」

と忠告も忘れずに……





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