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花火


スプネリアがラァードルの妻として、

元老院に暮らすようになってから数日後

リリエルはイザマーレと一緒に人間界の屋敷へ訪れていた


「イザマーレ様、リリエル様、お帰りなさいませ」

「ランソフ、いつもありがとう。よろしくお願いしますね。」


柔和な表情で、畏まって出迎えるランソフの手を握り、

微笑むリリエル



「今回は、ごくプライベートな滞在だ。

お前たちも、たまにはゆっくり羽を伸ばせ。」


「畏まりました。では、私どもは離れに控えておりますので。

何かありましたら、すぐにお声かけくださいませ。」

イザマーレの言葉にランソフはにっこり笑って一礼し、退室する



 

「リリエル、花火まではまだ時間があるが、

どこか行きたいところがあるか?」

イザマーレはリリエルを見て問いかける


「そうですね…やっぱり…」

手を口に当てながら、少し俯くリリエルの髪を撫で、微笑む

「…なんだ?言わないとキスするぞ?」


「////…あのっ…ん…////」

慌てて答えようとするリリエルの口唇を奪う

そのまま口づけは深いものになり、舌を絡め合う


「////////…も、もう…」

真っ赤になって照れるリリエル

リリエルの姿を確認し、ニヤッと笑うイザマーレ

「…シャワーを浴びてくるから、少し待ってろ。」


数十分後、イザムの姿に変身してから屋敷を後にし

リリエルの生家側の川原へ訪れた


大きな橋桁の下は、真夏でも日陰で吹き抜ける風が気持ち良い

自然の力によって作られた土手にも、そんな事を知ってか知らずか

恋人同士が語り合うのにピッタリな段差が設けられているのだ


「…懐かしいなあ。よくここで、お友達と一緒に花火をやりました…」

「……そうだな。飽きもせず毎年な(笑)」

「///やっぱり、ご存知だったんですね…もう!……」

恥ずかしそうにプンスカしながら

遠い昔の胸の痛みがよみがえり、静かになるリリエル



「吾輩がよく覚えているのは、

お前が人間たちとやった最後の花火の時かな」


「!!!////」

何となく気づいてはいたものの、

改めて言われて真っ赤になるリリエル



 

「消えた恋を、花火の残骸を燃やす事で浄化させようとしていたな。

リリエル。あれは言っておくが、吾輩のせいではないぞ(笑)

あの時の相手は、人間になったお前の孤独を最初に救った奴だからな」


「////…はい。今でも感謝しております。」


「そして、あの時のお前の涙は綺麗だった。

すぐに現れて抱きしめてやりたいほどにな…」

イザムの言葉に、リリエルは俯き、ぎゅっと腕に抱きつく


「…我慢なさってたの?リリエルはすぐにでも

会いに来てほしかったのに…///////」


「会いに行ってやっただろうが。夢の中だったけどな♪」

「ふふっそうでした♪」


「…次に記憶に新しいのは…やはりあの年か。」

「……」

イザムの言葉に、表情を曇らせるリリエル


「…あれが、人間として見る事の出来た、最後の花火になるなんて…」


地球温暖化による影響なのか、猛烈な台風とゲリラ豪雨が

頻繁に起こるようになり、毎年夏に打ち上げられていた花火大会が

10月に変更されたあの年…


その花火大会の翌週に、関東を直撃した台風によって

その地域全体が水流に飲み込まれたのである



「…結局、私の生家で親戚一同が集まれたのも、あの日が最後でしたね」


その年を最後に、花火大会そのものが中止となり、

開催されなくなってから久しい。



 

「あの家に生まれて、唯一楽しかった思い出が、

夏の花火大会でした。途轍もなく大きな音と、眩い光…

そう言えば、最高魔軍と似てますね(*´艸`*)

だから、あんなに好きだったのかな…///////」


少しだけ遠くを見上げるリリエル。

記憶にあるかつての花火大会の光景を愛おしく眺める

そんなリリエルをそっと見守るイザム


「たしかに、人間としてはあの年が最後になってしまったが、

こうして再び見れるじゃないか。相手が吾輩だけでは足りないか?」

リリエルの髪を撫で、ニヤッと笑うイザム


「…もうっ そんなわけないじゃないですか///…だけど…」

分かり切った事をわざわざ聞いてくるイザムに

口を尖らせた後、真っ赤になって俯くリリエル


「リリエル?」

甘く囁くイザムの魅惑の声に触発され、真っ赤になる


「一緒に花火大会に連れてきてくれた事、ありましたよね。何度も…

だけど…あの時から私、花火より…閣下の事ばかり…

見てしまって…///////」


抱きついていた腕に顔を埋めるリリエル

「花火より、眩しくて綺麗な光なんて、ズルいです…///////」


俯いたまま、呟くリリエルが可愛くて仕方ない

湧き上がる食欲を抑えるのに必死なイザム


「…お前の理想の王子になってやってるだけなのに、

ズルいとは何事だ?」


「///そ、そんな事ないもん!閣下は最初から王子様なんです!!!」


ムキになって言い返してくるリリエルを優しく抱きしめるイザム




 

「…はいはい。そう思って貰えて光栄だ。だが、あまり煽るな。

花火が見れなくなっても良いのか?(笑)」


「Σ( ̄ロ ̄lll) そ、それは…イヤ……💦」


「とりあえず、今はこれで勘弁してやる♪

花火用に着替えも必要だろ?」


「え…っ////…」


突然、フワッとした感覚。口唇を塞がれたと思ったら

屋敷のベッドルームに寝かされ、押さえつけられていた

見下ろすイザマーレの、逆立てていないサラサラの金髪が

見上げるリリエルの胸元を掠める


「///…そんな、見ないで…恥ずかしいです…///////」

「…お前の負け。燃え尽きたら消えるだけの花火より

お前がいつも笑顔で居てくれれば、それで良い。分かったな…」


リリエルの腕を押さえつけたまま、口唇を重ねる

力が抜けたのを見計らい、舌を絡めてとろけさせていく

名残惜しさを堪え、ようやく離れたその時、

屋敷の外がパアッと明るくなり

続けて雷鳴のような音が鳴り響く


「…始まったようだな」

イザマーレの魔力で、浴衣姿に変身したリリエルを抱き起し

夜空を見上げる


「では、見に行こうか」

「…はい♪」

嬉しそうなリリエルと手を繋ぎ、屋敷側の川原から花火を見上げる



やがて花火は終わり、屋敷に戻って来た


「閣下、今日はありがとうございました」


シャワーを浴びた後、

嬉しそうな笑顔で抱きついてくるリリエル




 

「どういたしまして。リリエル、おいで…」

イザマーレも本来の姿でリリエルを抱き寄せ、ベッドに横たえる


女の顔で見つめるリリエルの心の声が聞こえてくる

(…やっぱり、閣下の方が綺麗…)

実際の声は、イザマーレの口唇に塞がれ、発する事ができない


そのままバスローブを脱がせ、見つめ合う


「吾輩に言わせれば、お前の方が綺麗で可愛い。

何度も煽りやがって…喰わせてもらうぞ…」


首筋に舌を這わせ、胸のふくらみに口づけし頂点を味わう

足を割り、その中心に顔を埋めて甘い蜜を絡めとる

快感に震え、何度果てても許さず、心ゆくまで愛し続ける


その度に、艶やかな声で啼き、スパークする脳内は光に満ち溢れ

鮮やかに咲き誇る大輪の花に、イザマーレもまた溺れていく…




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