花火
- RICOH RICOH
- 2024年10月22日
- 読了時間: 6分
スプネリアがラァードルの妻として、
元老院に暮らすようになってから数日後
リリエルはイザマーレと一緒に人間界の屋敷へ訪れていた
「イザマーレ様、リリエル様、お帰りなさいませ」
「ランソフ、いつもありがとう。よろしくお願いしますね。」
柔和な表情で、畏まって出迎えるランソフの手を握り、
微笑むリリエル
「今回は、ごくプライベートな滞在だ。
お前たちも、たまにはゆっくり羽を伸ばせ。」
「畏まりました。では、私どもは離れに控えておりますので。
何かありましたら、すぐにお声かけくださいませ。」
イザマーレの言葉にランソフはにっこり笑って一礼し、退室する
「リリエル、花火まではまだ時間があるが、
どこか行きたいところがあるか?」
イザマーレはリリエルを見て問いかける
「そうですね…やっぱり…」
手を口に当てながら、少し俯くリリエルの髪を撫で、微笑む
「…なんだ?言わないとキスするぞ?」
「////…あのっ…ん…////」
慌てて答えようとするリリエルの口唇を奪う
そのまま口づけは深いものになり、舌を絡め合う
「////////…も、もう…」
真っ赤になって照れるリリエル
リリエルの姿を確認し、ニヤッと笑うイザマーレ
「…シャワーを浴びてくるから、少し待ってろ。」
数十分後、イザムの姿に変身してから屋敷を後にし
リリエルの生家側の川原へ訪れた
大きな橋桁の下は、真夏でも日陰で吹き抜ける風が気持ち良い
自然の力によって作られた土手にも、そんな事を知ってか知らずか
恋人同士が語り合うのにピッタリな段差が設けられているのだ
「…懐かしいなあ。よくここで、お友達と一緒に花火をやりました…」
「……そうだな。飽きもせず毎年な(笑)」
「///やっぱり、ご存知だったんですね…もう!……」
恥ずかしそうにプンスカしながら
遠い昔の胸の痛みがよみがえり、静かになるリリエル
「吾輩がよく覚えているのは、
お前が人間たちとやった最後の花火の時かな」
「!!!////」
何となく気づいてはいたものの、
改めて言われて真っ赤になるリリエル
「消えた恋を、花火の残骸を燃やす事で浄化させようとしていたな。
リリエル。あれは言っておくが、吾輩のせいではないぞ(笑)
あの時の相手は、人間になったお前の孤独を最初に救った奴だからな」
「////…はい。今でも感謝しております。」
「そして、あの時のお前の涙は綺麗だった。
すぐに現れて抱きしめてやりたいほどにな…」
イザムの言葉に、リリエルは俯き、ぎゅっと腕に抱きつく
「…我慢なさってたの?リリエルはすぐにでも
会いに来てほしかったのに…///////」
「会いに行ってやっただろうが。夢の中だったけどな♪」
「ふふっそうでした♪」
「…次に記憶に新しいのは…やはりあの年か。」
「……」
イザムの言葉に、表情を曇らせるリリエル
「…あれが、人間として見る事の出来た、最後の花火になるなんて…」
地球温暖化による影響なのか、猛烈な台風とゲリラ豪雨が
頻繁に起こるようになり、毎年夏に打ち上げられていた花火大会が
10月に変更されたあの年…
その花火大会の翌週に、関東を直撃した台風によって
その地域全体が水流に飲み込まれたのである
「…結局、私の生家で親戚一同が集まれたのも、あの日が最後でしたね」
その年を最後に、花火大会そのものが中止となり、
開催されなくなってから久しい。
「あの家に生まれて、唯一楽しかった思い出が、
夏の花火大会でした。途轍もなく大きな音と、眩い光…
そう言えば、最高魔軍と似てますね(*´艸`*)
だから、あんなに好きだったのかな…///////」
少しだけ遠くを見上げるリリエル。
記憶にあるかつての花火大会の光景を愛おしく眺める
そんなリリエルをそっと見守るイザム
「たしかに、人間としてはあの年が最後になってしまったが、
こうして再び見れるじゃないか。相手が吾輩だけでは足りないか?」
リリエルの髪を撫で、ニヤッと笑うイザム
「…もうっ そんなわけないじゃないですか///…だけど…」
分かり切った事をわざわざ聞いてくるイザムに
口を尖らせた後、真っ赤になって俯くリリエル
「リリエル?」
甘く囁くイザムの魅惑の声に触発され、真っ赤になる
「一緒に花火大会に連れてきてくれた事、ありましたよね。何度も…
だけど…あの時から私、花火より…閣下の事ばかり…
見てしまって…///////」
抱きついていた腕に顔を埋めるリリエル
「花火より、眩しくて綺麗な光なんて、ズルいです…///////」
俯いたまま、呟くリリエルが可愛くて仕方ない
湧き上がる食欲を抑えるのに必死なイザム
「…お前の理想の王子になってやってるだけなのに、
ズルいとは何事だ?」
「///そ、そんな事ないもん!閣下は最初から王子様なんです!!!」
ムキになって言い返してくるリリエルを優しく抱きしめるイザム
「…はいはい。そう思って貰えて光栄だ。だが、あまり煽るな。
花火が見れなくなっても良いのか?(笑)」
「Σ( ̄ロ ̄lll) そ、それは…イヤ……💦」
「とりあえず、今はこれで勘弁してやる♪
花火用に着替えも必要だろ?」
「え…っ////…」
突然、フワッとした感覚。口唇を塞がれたと思ったら
屋敷のベッドルームに寝かされ、押さえつけられていた
見下ろすイザマーレの、逆立てていないサラサラの金髪が
見上げるリリエルの胸元を掠める
「///…そんな、見ないで…恥ずかしいです…///////」
「…お前の負け。燃え尽きたら消えるだけの花火より
お前がいつも笑顔で居てくれれば、それで良い。分かったな…」
リリエルの腕を押さえつけたまま、口唇を重ねる
力が抜けたのを見計らい、舌を絡めてとろけさせていく
名残惜しさを堪え、ようやく離れたその時、
屋敷の外がパアッと明るくなり
続けて雷鳴のような音が鳴り響く
「…始まったようだな」
イザマーレの魔力で、浴衣姿に変身したリリエルを抱き起し
夜空を見上げる
「では、見に行こうか」
「…はい♪」
嬉しそうなリリエルと手を繋ぎ、屋敷側の川原から花火を見上げる
やがて花火は終わり、屋敷に戻って来た
「閣下、今日はありがとうございました」
シャワーを浴びた後、
嬉しそうな笑顔で抱きついてくるリリエル
「どういたしまして。リリエル、おいで…」
イザマーレも本来の姿でリリエルを抱き寄せ、ベッドに横たえる
女の顔で見つめるリリエルの心の声が聞こえてくる
(…やっぱり、閣下の方が綺麗…)
実際の声は、イザマーレの口唇に塞がれ、発する事ができない
そのままバスローブを脱がせ、見つめ合う
「吾輩に言わせれば、お前の方が綺麗で可愛い。
何度も煽りやがって…喰わせてもらうぞ…」
首筋に舌を這わせ、胸のふくらみに口づけし頂点を味わう
足を割り、その中心に顔を埋めて甘い蜜を絡めとる
快感に震え、何度果てても許さず、心ゆくまで愛し続ける
その度に、艶やかな声で啼き、スパークする脳内は光に満ち溢れ
鮮やかに咲き誇る大輪の花に、イザマーレもまた溺れていく…
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