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誘拐


その日、リリエルと一緒に買い物に行こうと

屋敷を訪ねた裕子


だが、誰も姿を現さず、屋敷の扉も消えていた

不思議に思ったが、仕方なく市場へ向かう


市場に着くと、少し離れたところに歩いているリリエルが見えた

声をかけようとした時、裕子より先に、リリエルに近づく女悪魔が居た


「リリエル様!こんにちは!お久しぶりです♪」


「あら!エマじゃない。久しぶりね。養父魔はお元気?」


「こんな所でリリエル様に会えるなんて!

良かったら、少しお時間ありますか?

お茶を奢らせてください♪」


ニコニコ笑顔でリリエルの手を取り、物陰に連れていくエマ


「………」


一連のやり取りを、漠然と眺めていた裕子

リリエルと何度か買い物に来ていたが

様々な悪魔から声をかけられるのは、当たり前の光景だった

その度に気さくに応じるリリエル。触れ合う者の殆どが

リリエルを慕っているようだった


この時も、そんないつものやり取りのように思っていたのだ


だがその時、向こう側から

小汚い格好の悪魔が慌てふためいた様子で駆け寄ってきた


「た…大変だ!!あんた!

最近いつも、お妃様と一緒に来てるよな?

大至急、副大魔王様に知らせてくれ!

お妃様が何名かの悪魔達に連れ去られた!!」




 

「!!えっ!!!」

驚く裕子


「さっき、物陰でお妃様の気を失わせ

何処かに連れていく所を、俺は見てた!

頼むよ、あんた!俺はお妃様に助けられた恩がある

何とかしてやらないと……!!」


「わ、分かりました!」


裕子は慌てて来た道を引き返し、

屋敷に向かって走り出そうとした


だがその時、何処からともなく声が聞こえた


「裕子。大丈夫だ。心配するな」


その瞬間、裕子の目の前にイザマーレが現れ

裕子の手を取り瞬間移動で立ち去った


文化局で、出迎えるベルデ


「イザマーレ、後のことは僕に任せて。」


「分かった。よろしく頼んだぞ」


それだけ言い残し、すぐさま消えるイザマーレ



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