top of page

おまけ


「リリエル…吾輩はお前とは別れる」


生放送の収録を終えて、屋敷に戻ってきたイザマーレに

突然告げられた、別れの言葉


「………」

衝撃で何も考えられなくなったリリエル


ほんの数分前には、いつものように優しく髪を撫でてくれて

同じように抱きついて甘えさせてもらった…はずなのに


そのままキッチンに向かい、

お茶を淹れて戻った時に言われたのだ


「…分かりました。これまで、ありがとうございました」


淹れたてのお茶をイザマーレの前に静かに置いて

お辞儀をして再びキッチンに戻った


キッチンには、屋敷の表扉とは別に、

主に使用魔たちとの連絡用に使う扉がある

そこから外に出て、屋敷を後にした


(…どこに行こう…)


何の荷物も持たず、広大な魔界の中で

迷子にならずに行ける場所など限られている

結局、「始まりの場所」しか思いつかなかった


元老院の裏庭は、かつてのあの日のように穏やかだった


自分が生まれ根付いた場所に、改めて座り込んで

静かに空を眺める。


間もなく夕刻…きっと夜になれば、花に戻るに違いない

そしたら何も考えず、眠りにつこう…

そう思いながら…




 

「……っくしゅ…」


魔界の空は、陽がすっかり落ちて、闇夜に月が輝いている


昼間とは違い、どんどん冷えてくる


予想外の事に、困り果てるリリエル

なぜか花の魔法が解けず、百合の花に戻ることができないのだ

仕方なく、種を取り出し何度も潰してみるが、永眠することも出来ない


(…どうして?もう、私の事を見限ったはずでは……?)


腕をさすりながら蹲る

…本当は最初から気がついていた


イザマーレが自分に対して、

そんな事を本気で思う筈がないという事を


でも何か理由があり、敢えて告げたのだとしたら

喜んで従わなければならない


それが、イザマーレの意思なのだから


だから本当は、言葉に出してしまったらいけないのだが

堪える事ができず、泣き出してしまった


「…ごめんなさい、閣下……怖い…っ」


その瞬間、リリエルはイザマーレの腕の中にいた

いつもと同じぬくもりに、涙が止まらないリリエル


「閣下…ごめんなさい。花に…戻ることができません

花に戻していただかなければ、リリエルは……っ」



 

「吾輩の腕の中でなければ、永眠する事などできない…

そうだな?リリエル…」

優しく抱きしめ、囁くイザマーレに、何度も頷く


「…まったく。なぜそうなる前に吾輩を呼ばんのだ?

相変わらず、お前と言う奴は…」


「///だって…だってだって……っ」

真っ赤になって俯くリリエル


「だってじゃない!!いつも言ってるだろ!

少しは吾輩に対して、もっと我儘になれ!!分かったか!!!」


「……っ そ、そんな事を言われても…💦」


「毎年この時期、お前に試験を行っているが、

未だに不合格だ!!罰として…」


「い、いやああああ(´;ω;`)ウゥゥ」


言いかけたイザマーレの言葉に、慌てて耳を塞ぐリリエル

すかさず、チュッと音を立ててキスをするイザマーレ


「…///////」


ぽかんとするリリエルに、吹き出しそうになるのを堪える


「嫌じゃない!!お前は今日から一週間、公設秘書の任を解く。

そして今からすぐ、人間界の屋敷に行くからな!」


「!!…一週間ってΣ( ̄ロ ̄lll)」

「ん?人間界なら、ちょうど一か月。物足りないか?」


ニヤッと笑いながら、改めて抱きしめるイザマーレに

慌てて首を横に振るリリエル


「よろしい。では、早速行くぞ。だがその前に…」




 

ゆっくりと口唇を重ねる

「誕生日おめでとう、リリエル…」


7月…


ヨッツンハイム事件を乗り越え

人間として生まれ変わったお前と吾輩の

第二の物語が動き出した月


決して、忘れはしない……



Fin.




閲覧数:0回0件のコメント

最新記事

すべて表示

どうなる? B

「お2魔様とも楽しそうですね… 私は別に花に戻っても構わないので…この辺で失礼します」 リリエルは冷めた目で見ながら言った 「「花に戻るって…許さん!」」 ダイヤとイザマーレが声を揃えて言うと、 益々冷めた目で、リリエルはイザマーレを見る。...

どうなる? A

「馬鹿もの!リリエルは誰にも渡さん!」 「何を❗️悲しませといて💢💢💢」 ダイヤとイザマーレのやり取りを、 静かに眺めていたリリエルは 立ち上がり、部屋を出ていこうとする 「ダイヤ様と閣下、楽しそうね💕じゃ、私はこれで」 「「コラー💢💢💢」」...

パターンDX

「では…その通りになさいますか? たとえ、ラオさんからのアドバイスとは言え、 それを仰ったのは閣下です。それが閣下の御意思なんですね?」 「そんなわけないだろう…💦」 「それが閣下の御意思なら、従います。 たとえお傍にはいられなくても、ずっとお慕いしております。...

Comments


bottom of page