数日後、リリエルはイザマーレの髪に乗せられ、
元老院に訪れた。
建物の裏庭は、かつてリリエルが百合の花リリだった頃に
イザマーレと出会った「始まりの場所」だ。
建物内は、副大魔王のお膝元である枢密院がある。
その隣に、かつては副大魔王の執務室があった。
内廊下を挟んだ正面にあるのが
先代の副大魔王のプライベート用の居室。
副大魔王の養子として迎えられたばかりの幼いイザマーレが、
多くの時を過ごした場所である
今は誰も使用していない為、消されていた扉を、言霊で押し開く
「…さすが、几帳面なラァードルらしいな。
吾輩が使用しなくなってからも、
綺麗に管理していてくれたようだな」
プライベート居室の中に
雷神界の皇太子、ラァードルの長期留学中の寝所として
部屋が設けられていたのだ。
ラァードル付きの家臣としてイザマーレが差配した使用魔が
主の居ない部屋も隅々まで綺麗に管理し続けていた
「…これからは、スプネリア様もお暮らしになりますし、
明るく賑やかになりそうですね♪」
部屋の様子を興味深く観察しながら、ニコニコ笑顔のリリエル。
「そうだな。ま、内装もあいつらに合わせて変えてやろうな」
そこへ、スプネリアを髪に乗せたラァードルが現れた
「よ~お♪待たせたね。どうぞ、入ってちょーだい!!」
部屋のリビングに通される。
「懐かしいな。よくお前と遊んだよな、ラァードル」
一瞬、子供のような表情で部屋中を見回すイザマーレ
「そうだね。サムちゃん、執務室を移設してから、
なかなかこっちには来なくなっちゃったから…
また、いつでも遊びに来てよ!!」
「本当に小さな頃からの仲良しだったんですね。」
イザマーレとラァードルのやり取りを
微笑ましく見ていたスプネリアが聞いた
「そうだよ!吾輩とサムちゃんとウエスターレンは、
出会った時期がほぼ同じなんだよね♪」
「そうだな。ウエスターレンと出会ってから一か月後くらいか。」
「!!…そっか、だから私は、記憶がないのですね?閣下。」
部屋に入ってから、記憶の糸を手繰り寄せていたが、
やはり初めての場所だったのだと、確信したリリエル
「お前はその頃、すでに吾輩の屋敷に居たからな♪」
「///でも、先程のお部屋までは覚えてましたよ♪
先代の副大魔王様の公務中、あの裏庭に遊びに来られた
閣下の御姿も…」
「そりゃそうだ。屋敷に行くにしても、
先程の部屋は通ったからな(笑)」
思い出したように笑い、リリエルの髪を撫でるイザマーレ
「そうだ、リリエルちゃん。母ちゃんと話したいよね?
この部屋にある魔鏡なら、いつでも雷神界と交信できるよ。」
「えっ、本当ですか?!」
「うん。こっちこっち」
ラァードルに案内され、行きついた場所には
全身が映し出せるほどの大きな魔鏡が飾られていた。
ラァードルが魔鏡の前に立ち、
ドラムスティックをクルッと回すと
鏡面が光を放ち、雷神界が映し出された
「お~い…誰かいない~?」
「おや、ラァードル坊ちゃま、どうなさいましたか?」
柔和な面立ちの老家臣が姿を見せた
「シセンか。母ちゃん今どうしてる?」
「只今、呼んでまいります。…おや?
母君にそっくりな、そちらの女性は…?」
「初めまして。リリエルと申します。シセン様ですね?
お手間をおかけして、申し訳ありません。」
リリエルはペコリとお辞儀をして、微笑みかける
「シセンと申します。以後、お見知り置きを♪
…では、少々お待ちくださいませ」
「…相変わらず、お元気そうだな。シセン殿」
「とても優しそうな方ですね。」
「そうだな。吾輩もよく遊んでもらった。
ランソフとも茶飲み仲間だったようだぞ?」
「そうでしたか……ふふっ、素敵ですね♪」
懐かしそうな表情を浮かべるイザマーレを、
微笑ましく見つめるリリエル
しばらくして、鏡面に雷帝妃が笑顔で姿を現した
「……リリ!!」
「お母様…、急にお呼びかけして申し訳ありません。」
「ビックリしたわ♪シセンが、『私によく似たお嬢様がお待ちです』
なんて言うものだから…(*´艸`*)」
「ふふっ♪ 驚かせてしまい、申し訳ありません。
ラァードル様の新生活に向けて、準備のお手伝いに伺いました。」
「そうだったのね。リリの隣にいるのが、あなたの旦那様で
そのお隣が…あの時紹介してもらった、可愛い子ちゃんよね。
お名前は…『スプネリアちゃん』で良かったかしら?」
「はっ…はい!スプネリアです。よろしくお願いします」
スプネリアは焦って、90度にお辞儀をする
「キャー(≧∇≦) ほんと可愛いわ♪
スプネリアちゃん、畏まらないで良いのよ。
ラァードルのほんの一部でいいから、
私とも仲良くしてくださいね」
「///////」
さすがはリリエルの実母。
スプネリアはただ真っ赤になるしかなかった
「ところでリリ。準備って…どんな事するの?」
「結婚式に向けて、スプネリア様のドレスを
用意させてもらいます」
「!!リリがドレスを…?」
「あ、はい。魔法でお作りできるので…」
「キャー(≧∇≦)、リリったら凄いのね!
…ひょっとして、私にも出来るのかしら…」
「……えっ?」
雷帝妃の思わぬ言葉に、リリエルはイザマーレを見る
「…百合の花に元々備わっていた能力ですから、
不可能ではないと思いますよ」
イザマーレの言葉に、嬉々として顔を赤くする雷帝妃
「…ねえ、リリ。お願いがあるの💕
スプネリアちゃんのドレス、私にやらせて💕」
「!! もちろんですよ。素敵です(≧∇≦)」
雷帝妃の提案に、自分の事のように喜ぶリリエル
「嬉しい♪リリ、ありがとう!スプネリアちゃん!
私、すっごく沢山、練習しておくから♪よろしくね♪♪」
小一時間後に、再交信の約束をして一度全員でリビングに戻る
「スプネリア様、良かったね。お母様にドレス作って貰えるなんて…」
リリエルがクスっと笑いかける
「///本当に宜しいのでしょうか💦 」
却って恐縮するスプネリア
約束の時間になり、再び雷神界と交信を始める
「じゃ、我々は、リビングで待ってるから。
母ちゃん、よろしく頼むな♪」
ラァードルとイザマーレは、リビングに戻って行った
「お母様。よろしくお願いします♪」
「リリ、スプネリアちゃん、お待たせ♪雷神殿を練習台にして
うんと練習してきたわ。」
「……💦」
雷帝妃の天真爛漫な様子に、
さすがのリリエルも苦笑するしかなかった
「よし!まずは練習させてね……えいっ」
魔鏡越しの雷帝妃の掛け声と共に、変身するスプネリア
その姿を見た途端
「!!きゃあああああああ////////」
「あ、あらヤダ!ラムちゃんビキニ出ちゃった(ノ≧ڡ≦) ☆」
スプネリアの叫び声と雷帝妃の言葉に、
目をパチクリするしかないリリエル
ウェディングドレスとは程遠い、
スプネリアの豊満な身体が強調されるような
稲妻柄のビキニ姿……
「…お…お母様……(笑)」
真っ赤になって恥ずかしがるスプネリアと
堪えきれず、お腹を抱えて笑い出すリリエル
「ご、ごめんなさい…でも、すっごく可愛いわ!
スプネリアちゃん。せっかくだから、写メ撮らせてね♪♪」
「……💦」
どこからかタブレットを持ってきて、
嬉しそうにパシャパシャ撮影する雷帝妃
スプネリアはただ、ひたすら震えるのを我慢して、
固い笑顔になるしかなかった
「じゃ、今度こそ💕えーい!」
途端に美しいドレス姿に変身したスプネリア
「キャー(≧∇≦) スプネリアちゃん、素敵よお!
写メ撮らせて!後でお母様の風帝妃に送るから!(〃艸〃)💕」
「お母様、さすがです♪スプネリア様、素敵♪♪どうかしら……?」
すっかり興奮して、はしゃぎ始める雷帝妃に
リリエルも嬉しくなりながら、スプネリアに確認する
「////////…こんなに優しくしていただいて…
本当にありがとうございます!不束な嫁ですが、
よろしくご指導くださいませ。お義母様……」
泣き笑いになりながら、お辞儀をするスプネリア
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