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小部屋


イザマーレと一緒に、北の大地に訪れたAnye


かつて、フェアリー国から侵入した際に滞在していた、

カラフルでおもちゃ箱のような町だ


迷子になっていたAnyeに声をかけ、

仮の宿まで用意してくれた低級魔たちは皆、

2魔の所見訪問を暖かく出迎えてくれた


一時は、Anyeを担ぎ上げ、王都を夢見た事もある彼ら

だが、彼女にピッタリと寄り添うイザマーレの姿に、誰もが酔いしれ、

不穏な空気も感じない


光と花のオーラが合わさる事で起きる奇蹟


そんな事を知ってか知らずか、界隈の低級魔たちに取り囲まれ

穏やかに笑顔を見せるAnyeに、こっそりとため息をつくイザマーレ


やがて、とある商店の前に辿り着き、Anyeの肩を抱き寄せる


「Anye、ここだ。」

「…!…」

イザマーレの言葉にハッとして、ワクワクしながら店内を窺うAnye


「事前に連絡してある。入ってみよう」

「…はい…」


店内では、瞳にハートマークを浮かべながら魔界NO.2のイザマーレに

必死に対応する数名の店員魔たち

静かに寄り添いながら、Anyeは何気なくオーラを探していた

肉眼で、その場に居ない事はすぐに分かった

だが……ラディアの残したオーラを辿り、全てを把握した




 

明らかに自分を避け、わざとこの場から姿を消し

隠れているラディア…


残念そうに俯き、そっと息を吐くAnye

(まったく…相変わらずなんだから…)


その時、ポンと髪を撫でられる

見上げるとイザマーレが静かに微笑んでいた


「Anye、疲れただろ?そろそろ行こうか」


「…はい。あ、そういえば、次はどちらに…?」


こういう時に感じるイザマーレのさり気ない優しさに、

Anyeも微笑み返す


「どちらにしようか迷ったんだが…お前が気苦労なく過ごせるなら

この町が良いだろう?」


意味深なイザマーレの言葉に、首を傾げながら

連れて行かれた場所に驚く


「///まだ…残っていたんですね…///////」


「そりゃあ…誰かさんが尋常ではない力を解き放ち

作り上げた家屋だ。壊せるわけなかろうが♪」


ニヤッと笑いながらエスコートするイザマーレ


シンプルな白で統一された、綺麗な小部屋

小ぶりながら、キッチンやソファ、ベッドも同系色で揃えられ

まるで…どこかのリゾート地にあるコンドミニアムのような一室


かつて、襲撃に失敗して大怪我したAnyeの傷を癒し

封印されていた無償の愛の真価に、初めて触れた場所だ



 

…どうせ、そんな相手は居るわけない

いつも…言われていたもの…私の理想は高すぎるって…


かつての会話を思い出し、フッとほくそ笑むイザマーレ


(気づいているか?あの時から、

吾輩の方がお前を追いかけているという事に…)


お茶を淹れようとキッチンに向かうAnyeを引き寄せ、抱きしめる


「あ、あの…///」

口唇に触れる寸前、遠慮がちなAnyeの声に見つめ返す


「…どうした?」


「ご…ごめんなさい…実は…先程のお店で

ラディアのオーラを辿っていた時に…」


申し訳なさそうな表情を浮かべるAnyeに、ある事を察したイザマーレ


「気がついてしまったの…ラディアによく似た…

いえ、未来の彼女でしたね。ダイヤ先生のオーラが…」


「ついでに、ウエスターレンと、何故だか留学生たち…だな?」


「!…やはり、ご存知だったのね?

いつまで知らん振りを続けたら良いのか、気になってしまって…(^-^;」


困ったような素振りを見せるAnyeの頬に手を添え、

見つめるイザマーレ


「気にするな。後でちゃんと、出迎えてやるから…」


そのまま口唇を重ねる。服を脱がせ、肌に舌を這わせる



 

Anyeの脳裏から邪念を押し出し、光のオーラで包み込みながら

身体の隅々まで愛撫していく。


イザマーレに全てを委ね、何度も果て続けるAnye


しばらくの間、小部屋の扉は消え続けた…



やがて、腕の中で眠りにつくAnyeの寝顔を見つめ、

深くため息をつきながら、ウエスターレンにテレパシーを送る


(…Anyeが目覚めたら、扉を出してやる。分かったな?)


(イザマーレ…すまんな💦 まさか俺がお前らの障害になるとは…

そんなつもりではなかったんだが…💦)


(…まあ良い。チャンスはこれからも、いくらでもあるからな)


若干、苛立ってはいるが、意外と落ち着いているイザマーレに

ウエスターレンは目を細める


(なるほど…少なくとも、お前の意思は固まったようだな)


(…ああ。決めた。どんなに迷っても、答えは出ない。

それなら、時間を浪費するだけ無駄だからな)


…………

……


イザマーレと交信を終えたウエスターレンは、静かに微笑む


(安心しろ。お前らの事は、俺が必ず守り抜く…)


「…そうと決まれば、後はヒヨッ子の背中を押してやれば良いって事か?」


紫煙を燻らせ、独り言ちる

視線の先には、商店街にある雑貨屋で、

校長に渡すお土産を見繕う留学生たち…


 

数時間後、小部屋に集結した彼ら


全員にお茶を淹れ、差し出しながら

それとなくダイヤを見つめ、微笑むAnye


「遠くまでご苦労様です。こちらの世界には、もう慣れましたか?」


「はい…」

ダイヤはお茶を飲み、ふとAnyeを見つめていた


「…?」

不思議そうに首をかしげるAnyeにダイヤは微笑んだ


「…やっぱりそっくりね。理栄校長に…不思議よね…

理栄校長と同じオーラを纏っているのに…

閣下とは敵対してるなんて…思ってもみなかった…で?

私とそっくりな…ラディアって子はここに居ないみたいだけども…

彼女は貴女様と仲良くしてるのかしら?」


「…ダイヤ先生…でしたね。そちらの世界にも、私がいるのかしら。

“理栄”っていうのは…私の事なのね?私もお尋ねしたいの。

貴女達の世界では、ダイヤ先生の傍に、私は居るのかしら?」



 

「勿論、いつも側にいてくれる大切な方よ…

私も何かと頼ってしまうのよね…。私にとっても大切な悪魔だから

…ラディアって子もどんな原因でこの場に居ないのかわからないけど…

いつかは分かり合える仲になると良いね…。一度は会ってみたいけど」


「…(´∀`*)ウフフ それなら心配いらないわ。

ラディアの事なら誰よりもよく理解しているから。未来に居る貴女達が

その証拠だもの…安心してください。私は今も、ラディアの親友ですよ」


心の奥でほくそ笑むAnyeに、イザマーレがポンと髪を撫でる


(無償の愛の呪縛、第一号って事か…)



「それを聞いて安心したわ…てか…こっちでも相変わらず扉を消してるん?

遺憾ですなぁ…閣下。罪深いわ〜」


ニヤッと笑うダイヤに、キョトンとするAnye


「扉って…?何の事ですか?」


留学生たちが一様に、唖然とする中、

Anyeに近寄り、耳元でゴニョゴニョと伝えるダイヤ


「私たちの世界でも大変なんだから~副理事長も理栄校長と

毎日のように副理事長室の扉を消してるのよ?」


ダイヤの決定打に、力強く頷くプルーニャ達


「…あ、でもそれって、もしかして私のせいですよね?

きっと…虫が怖いから…///////」


口元に手を当て、しばらく考えていたAnyeは、恥ずかしそうに俯く


その場に居た誰もが固まり、かえって真っ赤に照れ始める

「い、いやいやいや…///////💦」


イザマーレとウエスターレンは素知らぬフリして笑いを堪えていた



 
 
 

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