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目覚め


「…かっか…」


目を覚ましたリリエル。前後の記憶があやふやで

今、自分がどこに居るのか、一瞬分からなくなる

それでつい、不安になって探してしまうのだ


「気が付いたか?リリエル…」

イザマーレが手を握り、呼びかける


「…私…?」

まだ記憶が曖昧なリリエルを抱き起し、髪を撫でる

「Lily‘sの奴らを襲った天使の襲撃に遭い、

一時的に気を失っていたのだ。怖い目に遭わせた。

すまなかったな…」


「…!」

イザマーレの言葉に、瞬時に全てを思い出す


「…すみませんでした。急な事で、適切な対処もできず…

あの…皆は…っ」


「安心しろ。お前が盾になり庇ったお陰で、全員無傷だ。

来襲した天使どもは、吾輩が即、片付けた。

心配はいらない。だが…」


その言葉にホッとして、

ようやく笑顔になるリリエルをそっと抱きしめる


「あまり無茶な事はやめてくれ。吾輩の為にな…」

ゆっくりと口唇を重ねる


「///ごめんなさい…閣下が救ってくださったの?」

すまなそうな表情で見つめるリリエルに微笑みかける


「そうしてやりたかったんだがな。今回は吾輩ではなく

奴らが頑張ってくれたぞ。リリエル。お前の為にな」




 

イザマーレはリリエルを抱き寄せて、語って聞かせた


Lily‘sが率先して声を上げ、

構成員も巻き込んで合唱隊を結成し、

何度も練習して、歌い上げてくれた事


それにより、リリエルを

深い眠りから目覚めさせることが出来た事


「せっかくの機会だからな。

お前にも気づかせてやりたい事があるのだ」


「…?」


「お前は吾輩の事になると、

確かに見境なく、無限の力を発揮する。

だがな、リリエル。それと同じくらい、お前の事を思い、

お前の為に何かしてやりたいと願う存在があるのだ。

リリエル、お前は決して孤独ではない。

お前だけで全ての事を背負い込もうとするな。良いな?」


「!!…///////」

リリエルは恥ずかしそうに、俯いた


(その事を私に言い聞かせたい為に、

ご自身の魔力を封印なさってくださったのね…)


リリエルから聞こえてくる心の声に微笑み、

髪を撫でるイザマーレ


(吾輩だって、それくらいの我慢は出来るぞ…)


イザマーレからのテレパシーにクスっと笑う

そして、口元を手で覆いながら、思いを馳せ始めた




 

目の前に居るイザマーレは、とても心が穏やかで、

いつもの通り、優しく寄り添ってくれる

では、あの姿は何だったんだろう…


「リリエル?」


「閣下…私が気を失っている間、

ずっとお傍にいてくださったのですか?」


「///まあ…他にやる事もないからな💦」


ド直球なリリエルの問いに、

やや照れくさそうに目を泳がせるイザマーレ


(……)


「どうしたんだ、リリエル?」


突然、黙り込む様子に、イザマーレは首を傾げる


「閣下…どうして?先程からずっと、

リリエルの傍ではない所で

苦しまれてる閣下の御姿が見えるのです…

いや…嫌です…リリエルはここにおりますと、

何度も呼びかけてるのに

気づいてくださらないの……っ、嫌……!!!!!!!」


取り乱し、泣き出したリリエル

イザマーレはしばらく静かに見つめていたが、

そっと抱きしめる


「リリエル、安心しろ。吾輩はここに居る。

お前の傍にいる吾輩こそが、お前の王子だ。

お前の脳裏に見えているそいつは、

吾輩であって吾輩ではない。」


「……!! まさか…」

ある事に思いが至り、言葉に詰まるリリエル


「…ミカエルに残る吾輩の魂が、限界のようだな」




 

「!何故ですか?何故、今になって……?

私はずっと気づきませんでした。

隠していらっしゃったとしても……

あんなにお辛そうな想いが伝わったのは初めてです」


イザマーレは改めて、リリエルを抱きしめる


「お前には話していなかったな。

少し前に、お前をリリの姿にして

ウエスターレンと朝まで過ごした時があっただろ?」


「……///////」

つい思い出して真っ赤になるリリエル


「あの日、お前が目を覚ます前に、ミカエルが現れたのだ。

相変わらず、陛下とダイヤを喰いものにしたようだが……」


「それなら…いつもの事ですよね?」


「その時にな、お前とスプネリアの生い立ちについて

話題になったらしい。ウエスターレンに一言、

ねぎらいの言葉を伝えたかったようだぞ。

それでな、ミカエル自身も思いを巡らせたのだろう。

あの場でリリエル、お前の事を諦めると宣言して

天界へ戻って行った」


「……閣下。でも、あの…」


困惑するしかないリリエルの髪を撫で、

イザマーレも天を見上げる


「ミカエルの言葉など、少しも信用していないし、

どうせすぐに戻ってくるだろうと思っていたのだが…

あの時ばかりは、どうも本気だったようだな」


「でも…そんな事も、とっくの昔に…///////」


「言霊というのは、つくづく厄介だな。

自分自身の言葉に縛られ、なおかつ、誰かさんが

吾輩との思い出の曲を歌いあげた事により

かつての記憶を呼び起こした。そうに違いないな。

今まさに、雁字搦めといった所だろう(笑)」




 

苦笑しつつ、

穏やかに抱きしめてくれるイザマーレのぬくもりに、

リリエルはようやく落ち着きを取り戻した


「そんな訳だから、お前はあまり気にするな

それより…起きられるか?Lily‘sの奴らにも

お前の元気な姿を見せてやれ」


「…あ、はい。大丈夫です。でも閣下…」


「ん?」

リリエルの手を取り、身体を支えてやりながら、

首を傾げるイザマーレに抱きつく


「それでも…ありがとうございました。

私は、閣下のお陰で、とても幸せです///」


率直に想いを吐露するリリエルに、イザマーレの心も軽くなる


「ミカエル様に残る閣下が辛い思いをなさってるのも

私のせいですね。少しだけ、考える時間をくださいますか?」


「…そうだな。それなら吾輩も一緒に考えよう。

ウエスターレンも一緒に。分かったな?」


「…はい♪ ありがとうございます(≧∇≦)」




 

イザマーレの髪に載せられ、プエブロドラドに瞬間移動する


「リリエルちゃん!!!」「リリエル様!!!」

次々に抱きついて出迎えるLily‘s


「皆、ありがとう!心配かけました。

もう大丈夫だから、安心してね」




「リリエルちゃん、良かった」

傍で控えていたベルデが笑顔で近づく



「彼女たちの頑張りのお陰で、魔界に生じていた結界の

亀裂も、ほぼ修復出来たみたい。」


「!…そうでしたか。皆、凄い!

和尚も、すみませんでした……」


リリエルはペコリとお辞儀する


「僕の事なんか気にしなくて良いよ。

それに、魔界と人間界以外は僕もお手上げで…

もし天界に亀裂が残ってる場合は、もう一度、

リリエルちゃんとイザマーレに頼まなきゃいけないかも…」


「…!…そうでしたか。畏まりました。

責任もって対処致します。ありがとうございます」


ベルデの言葉を受けて、

改めてイザマーレと見つめ合うリリエル

イザマーレも無言で頷いていた



 

そしてその夜……


「お待たせしましたー。どうぞ~」

屋敷にリリエルの声が響く


「お!今日は生春巻か♪」

テーブルを見てほくそ笑むイザマーレ


「はい💕暑くなってきましたからね

さっぱりしたものにしようと思いまして(´∀`*)ウフフ」


「上手い!このソースは梅かつおか?なるほどな~」

ウエスターレンもご機嫌で舌鼓を打つ


「むきエビ、アボカド、季節の野菜の方は

和テイストでもいけるかな、と思いまして。

牛肉サラダの方はチリソースでどうぞ💕」


リリエルはニコニコしながらお茶を淹れる


「長官、あの…」

「ん?なんだ。どうした?リリエル」


「教えていただきたい事があるのです。閣下にも…」



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