全てを理解した。
陛下の真意。ベルデの苦悩。そして…
あいつへの想いがこみあげてくる。
真実を知った今、いや、知る前でさえ、
あいつへの執着を捨てることなど出来なかったのだ。
ベルデは全てを伝えるべきだと言う。
言われるまでもない。
ウエスターレン。今すぐお前に会いたい。伝えるべき事があるのだ。
強い信念を胸に、早足で屋敷にたどり着いた時、懐かしい音色が聞こえてきた。
ウエスターレンがギターを弾いているのだ。
それも懐かしい、2魔で共に作り上げた大事な曲を…
「…相変わらず、いいギターだな」
「!イザマーレ。悪い、気付かなかった。
いや、久しぶりに弾いてみたんだが、我々の曲はやはり難しくてな…」
「そんな事はない。吾輩はお前のギターに声を乗せるのが大好きだぞ」
「…!」
髪は怒髪天のまま、イザマーレは真っ直ぐウエスターレンを見つめている。
「…ウエスターレン。ひとつ聞いておきたいんだが」
「…?」
いつもとは違う、いやこれこそ本来のイザマーレであり
溢れ出る光のオーラに、魅惑されていたウエスターレンは戸惑いを隠せない。
「お前は、吾輩ではない他の誰かと音楽を奏でることが、
吾輩への裏切りになるなどと本当に思っていたのか?」
「…!」
何を言わんとしているのか理解したが、
それでも意図が分からず戸惑うばかりのウエスターレン。
「そうだとしたら、それはまた、随分と見下されていたものだな。
吾輩のお前に対する想いの強さをなめてもらっては困るんだがな。」
「!!」
「芸術の道を志すものならば、敵ではない。同志ではないか。
現に吾輩も人間界で多種多様な芸術を愛で続けている。
なぜお前だけ遠慮する必要があったのだ?」
「…イザマーレ…はぁ、お前ってやつは」
抱きしめようとして、近づくが
「待て!まだ話は終わっていないぞ!」
「…なんだ?」
ウエスターレンはかすれ声で先を促す。
「この際だから、きっちりと理解してもらう必要がある。
ウエスターレン、お前が好きだ」
「!!!!!!」
「お前の事だ、とっくに気付いていただろう?
お前に出会った時から、今日の今日まで…
お前に別れを切り出されても…っ、それでもウエスターレン。
お前を忘れることなど出来なかったのだ」
思わず涙ぐむイザマーレだが、強い語感そのままに語り続ける。
「お前は言ったな。愛を信じろと。だがすまんな。吾輩はそんなもの信じない。」
溢れる想いは言葉以上にとどまることを知らず
自然とオーラが強く輝き始める。
ウエスターレンは、イザマーレの厳かさに言葉を失ったままだ。
「ウエスターレン。吾輩はな、ずっとお前を想い続けた吾輩自身を信じる。
どんな状況になっても、たとえお前が目の前から去ろうとも
お前を求め続ける。諦めてなんかやらない。
この吾輩の想いを受け止める覚悟が、お前にはあるのか?」
「!!!!!!」
「その覚悟があるなら、吾輩のそばにいろ。逃げても無駄だ。見つけるからな。」
ウエスターレンは思わず跪き、その手に口づけをする。
最大級の敬意。
副大魔王、そして夢幻月詠による最大級のプロポーズの瞬間だった。
だが次の瞬間、言葉を失い続けている己の気恥ずかしさに、
「・・・すごいプロポーズだな」
わざとそんな言葉を返しながら見つめ返す。
「だがな」
「…まだあるのか?」
驚きを隠せず、聞き返すウエスターレン。
「吾輩の気持ちを伝えたまでだ。
それにより、お前の行動を制限する必要など、どこにもない。
我々悪魔は本来自由であるべきだ。そうだろう?」
「…たしかに、そうだな」
「だからウエスターレン。お前がやりたい事ならば
人間界での音楽活動も好きにしろ。ただ…」
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