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光の孤独


イザマーレは髪を掻き上げ振り返る…

真っ黒い軍服を着ているウエスターレンが立っていた…


『…ウエスターレン…そこにいたのか?…寂しかったぞ』

イザマーレは手を広げ、嬉しそうにウエスターレンを見つめた。


『…いつも側にいるって言っただろ?何を泣いてる?

…そんなに寂しかったか?可愛い奴だな…』

ウエスターレンの笑顔…温もり…


『もう…どこも行かないよな?ウエスターレン…』

抱き締められる胸の中でイザマーレは涙声で言った

『馬鹿だな…どこにも行かないに決まってるだろ?俺を信じろ…』

『…信じて良いのか?ウエスターレン...』

『あぁ…信じろ…お前を離すことはない』

優しく髪を撫で口唇を重ねた...


しかしいきなり風景が変わり、突然ウエスターレンは手首から血を流し

フラフラの状態で歩いている

『…ウエスターレン…何処へ行く!…』

『…』

『…ウエスターレン!聞こえてるのか!返事をしろ!』

懸命に叫んでも振り返らない

『待て!吾輩を置いていくな!ウエスターレン!行くな!』

『…イザマーレ…ごめんな…』

ウエスターレンは振り返り様に涙を流し呟いて消えてしまった

「ウエスターレン!頼む!吾輩を1魔にしないでくれ!」


自分の声で目を覚ました…人間界へ行っても魔界に帰ってきても

毎日のように同じ夢でうなされる…もう限界だ…

イザマーレは起き上がり布団を握りしめ震えている


『ウエスターレン…吾輩はどうすればこの寂しさから解放されるのだ!

聞こえないのか!ウエスターレン!!』


イザマーレは心で叫んでいた…


(ウエスターレン、吾輩はお前に一度も言葉で伝えることはできなかった。

吾輩の言霊に縛られた、まがいものの愛など、欲しくないからだ。)




 


この世に発生した時から「夢幻月詠」としての宿命を背負い、

つねに自分の欲望を抑え込み、己を律し、

大魔王陛下に仕える立場として粉骨砕身の日々。

時に感じる孤独や疲れも、自身のパワーではねのけてきた。

だが……それ故に、信念、愛情は誰よりも強い。吐き出さなければ……。

自身の心が壊れてしまえば、その影響も計り知れないのだ。









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