「ウエスターレン?ひょっとして防ぎきれておらず、どこか怪我でも…」
思わず、ウエスターレンの胸元に手を寄せるイザマーレ。
ウエスターレンは涙が溢れそうになるのを堪え、その小さな手を握り返す。
「!」
成し遂げてきた事柄の偉大さに反比例する
庇護欲を掻き立てる小さな手には、うっすらと傷跡がある。
「…お前の身体には、傷跡ひとつ、つけるなと言ったはずだ」
言霊一節発するだけで、傷口は塞いだが、
傷跡を消すまでには至らなかったようだ。
「咄嗟のことで、つい思わずお前の名前を呼びそうになったのを
何とか堪えたんだ。力の抜き加減で失敗したな」
「!」
「この場でお前の名を呼んでしまったら、
せっかくの陛下との時間が台無しになってしまうではないか。
ウエスターレン。お前とも、こうして会えた時間が惜しくてな」
「!!!!」
「今更驚くことではなかろう?」
「……」
ウエスターレンは無言のまま、傷跡が残るイザマーレの手に口づける
「!!なっ、何をするのだ、吾輩は平気だと言ってるだろう!
それに、まだみんなが…っ」
そう言いながら、言葉に詰まるイザマーレ
言葉が出ない
ウエスターレンから目を逸らすことができない
ウエスターレンもまた、同じだった
イザマーレの目から、一筋の涙が零れる。
堪らずに、イザマーレを抱き寄せるウエスターレン。
「イザマーレ、お前は俺だけを見てればいい。誰にも渡さん!!!」
「ばっ馬鹿者!みんなのいる前でっ…何てことを言うんだ!」
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