top of page

冷たい雨


魔界に雨が降りしきる中…

ダイヤは俯いたまま傘もささず歩いていた


数時間前のこと。

ダンケルから公務の書類をイザマーレに届けてくれと頼まれた。


どうやらイザマーレのサインが必要らしい。

ところが、イザマーレが呼び出しに応じず、

なかなか取りに来ないとダンケルは怒っていた…


信者村の任務が終わり、魔宮殿に戻ったダイヤを呼び出す


「ダイヤすまないがイザマーレに届けてくれないか?急ぎなのだよ」

ダンケルは書類を見せて言った


「は~い!行ってきますよ」

ダイヤは微笑んで言った


「すぐにサインしてくれと伝えてくれ」

「かしこまり~!」


書類を片手にイザマーレの屋敷に行ったが…

訪ねて行った時、ちょうどイザマーレはリリエルと

プライベートルームへ行く所だった


「閣下~!陛下から…」

ダイヤが言った途端だった…


「何の用だ!」

イザマーレはダイヤを見るなりイラついた声を浴びせた




 

「……陛下から…書類を頼まれ」

唖然としてダイヤは言ったが


「今はリリエルとの時間だ!邪魔するな!」

ダイヤの言葉を遮ってイザマーレは怒鳴った


「…書類に…サインを…」

「机に置いとけ!」

イザマーレとリリエルはそのまま部屋に入り扉を消した


「………」

ダイヤは俯いたまま立ち尽くし、2魔を見送っていた


「お前も間が悪いな…」

ウエスターレンは苦笑し、ため息を付いて言った


「…長官…陛下から頼まれて持ってきました…

急ぎだそうです…なるべく早めに…」

涙が頬に流れてるのを見せないように

ダイヤは俯きながら書類を机に置いた


「…陛下が閣下のサイン待っているみたい…ですから…」

ウエスターレンの顔を全く見ず、俯き身体を震わせていた


「…わかった。大丈夫か?ダイヤ」


ウエスターレンが言ったが

ダイヤは何も言わずに屋敷から出ていった




 

外は雨が降っていた

…どうして涙が流れるのだろ…

邪魔するな…って…そんなにリリエル様が大事?

お楽しみを邪魔しに来た訳じゃない…

ただ書類を渡しに来ただけなのに…



陛下に生き血飲まれ、医務室で苦しんで居た時に

閣下に言われた『お前の事が大切だ』の言葉…

何だったのだろうか…冷たくされ、邪魔扱いされ…

私だって閣下の事が…愛しいのに…

時には優しい言葉を掛けて貰いたいのに…


でも私は陛下に愛され后になっている…

いつまでも閣下を愛しく思ってはいけない…

分かっているが…今は気持ちが押さえきれなく泣いている…

このままの気持ちで陛下の元に帰る事は出来ない。


雨に濡れて帰ろう…

この気持ちが雨に流されて無くなるまで…




 

何時間も歩いて寒さで顔を上げると

ダンケルが心配そうに立っていた


「ダイヤずぶ濡れじゃないか…手もこんなに冷たくなって…」

ダンケルの手の温もりが冷たくなった手から伝わってくる


「…陛下…あの…私…」

俯きながら呟いた


「…身体を暖めないとな…」

ダイヤの肩をを抱き、魔法陣で魔宮殿に帰って行った


帰宅しシャワーを浴びて自分の部屋に戻って行った。

身体も暖かくなり、ホッとしながら扉を開けると

ダンケルが待っていた…


「…陛下…すみません…閣下、お屋敷にいなくて…

サイン頂けませんでした…お役に立てなくて…」

ダイヤはとっさに嘘をついた。


まさか扉を消す寸前で、

イザマーレに怒鳴られ断れたとは言えなかった





 

「…ダイヤ…おいで…」

ダンケルはダイヤを呼んで抱きしめた


「悔しくて泣きたいのなら、私の胸で泣けばいい…

例えお前が光を愛しく求めても、私はお前を逃がさない…

逃げても必ず連れ戻す…永遠に私の女だ…

誰にも渡さない…覚悟しておけ…」

ダンケルには心も全てお見通しだった


「…陛下…」

ダイヤは顔を上げた

ダンケルは微笑み口唇を重ね部屋の扉を消した

ダイヤの気持ちが光に惑わされないように…








閲覧数:0回0件のコメント

最新記事

すべて表示

赤の最後通告

リリエルたちと別れ、 文化局にダイヤとウエスターレンを連れて戻ってきたベルデ。 「どうぞ、椅子に座って。」 ベルデに促され、腰掛けるダイヤは涙を流していた ウエスターレンはその横で佇み、煙草に火をつける 本来なら禁煙だが、注意することは諦めているベルデ...

秘密と宣告

イザマーレの放つ気配を頼りに、ほんの数分歩いたところで 目的地にたどり着いた。 「…なんだ、何てことはない、元老院の裏庭じゃない。」 ベルデはやや肩透かしだった だがそこに、イザマーレが待ち構えていた。 それだけで、この空間がとても厳かなオーラに満ちていた...

散歩道

数日後。 朝の家事を終わらせたリリエル。 「さて。ダイヤ様にお会いしたいけど、どうしよう……」 そこへ、ウエスターレンがやってくる。 「俺が飛ばしてやろうか?あの場所へは俺も一緒に行ってやる」 「キャー(≧∇≦)、ありがとうございます♪ それでは閣下、行ってまいりますね」...

Kommentarer


bottom of page