top of page

消える扉


部屋から出ようとしたリリエルを抱き寄せ、イザマーレは強い語感で言い放つ。


「ダイヤ!リリエルとの時間を邪魔するとは何事だ!!

お前はそこで指くわえて待ってろ!」


「え?ちょっと、………閣下っ………」


戸惑うリリエルにさえ有無を言わせず部屋に連れ戻し、

ダイヤの目の前で部屋の扉を消した

そのままリリエルを抱きしめる。


「…こんな時くらい、他者を構うな」

ダイヤの元に行こうとしたリリエルだが、未だに震えが止まらなかったのだ


「震えを止める事すら出来ないくせに、

なぜそこまで、他人を思い遣れるのだ?」


「…閣下、お許しください。

これまで閣下がどんなに辛い思いをなさっていたかも知らずに……っ」


リリエルを見つめるイザマーレは、先程とは違い、優しい表情をしている。


吾輩のためだけに涙を流すリリエルに、いつの間にか全ての憂いが消えていた

すべての季節を、新しい出会いに変えて見せた、これまでの日々。

それさえも、かけがえのない宝になっていたことに気づかされる


「今は自分の事だけ考えろ…おいで、リリエル…」

震えるリリエルに口唇を重ね合わせ、丁寧に服を脱がせていく

恐怖の記憶が、愛される喜びで覆いつくせるように……


悲しみの記憶など、吾輩が光に変えてやる

お前と吾輩で紡ぎ出す絵物語は、これから幾度も色を染め直すだろう


やっと記憶を取り戻したリリエルとの時間、誰にも邪魔はさせない……



next                          目録に戻る

閲覧数:1回0件のコメント

最新記事

すべて表示

あてのない日々

「流石だな。でもやっぱり、 お前も少しは寂しいんじゃないか?」 「…そうですね。でもやはり私は、全ての人の悲しみを幸せに変えてくださる 素敵な閣下が好きなのです。いつもお願いばかりで、申し訳ないですけど。」 「…お前にとって最高の王子様という事か。確かにな」...

花盛り

いつも邪魔するダンケルにダイヤという宝を与え、 心置き無く愛し合うイザマーレとウエスターレン。 ダイヤがイザマーレの元に呼ばれる時間は 人間界にあるイザムの屋敷で、 ウエスターレンと共に待つようになったリリエル。 「いや、しかし、やっぱりお前は流石だな」...

花の居ぬ間に

どんなに酷い扱いでも、一度、寄り添われれば その時間はとても優しく、激しく求められる。 ときめく心を抑えられないダイヤ (悪ふざけをすれば、叱ってもらえる。 ひょっとしたら、またお仕置きされるかも… 相手にされないより、ずっとマシ) リリエルが人間界に帰る直前に部屋に訪れ...

Comments


bottom of page