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涙の代償


プエブロドラドの空気を一変させた事に全く気付かず、

リリエルに対する誹謗中傷を繰り返したことで、気分良く

すっきりした顔で、その場を立ち去ろうとしたアヤ


ふと顔を上げて、花のように綻ぶ


「イザマーレ様♪」


待ち構えていたイザマーレの元に近寄ろうとした


イザマーレは、その美しく整った顔を微動だにせず

口元に微笑を浮かべ、アヤを見ていた


アヤが駆けつけてきた瞬間、

黒塗りの口唇が静かに動き出す


ほんの少し開かれた口唇から、

恐ろしい程に澄んだ声が発せられた



……コキュウハトマリドウコウサンダイ……

……ヤガテホロブジメツハメツ……




 

その瞬間、アヤの足元から黒い影が浮かび上がる

夥しい無数の影が、アヤを取り囲み、追い詰めていく

取り囲んだ影が、アヤに向けて繰り返し罵り始める


それは、アヤ自身が周囲に向けて垂れ流した言葉の怨念

その呪いが自らに向かう毒となり、体内に蔓延り

アヤの身体を内側から食い尽くしていく


自ら発した言葉に捉えられ、呪縛され

最期には口さえ引き裂かれ、叫び声を上げる事すら許されず

消滅していった


その場には、ただひとつ、菖蒲の種が転がっていた


その種を拾い上げ、目玉蝙蝠に忍ばせる

それと同時に、裏で糸を引いていた黒幕のアジトが

一瞬のうちに消滅していた


(任務完了♪あとは、お前に任せる)


ウエスターレンの声が聞こえ、イザマーレは微笑を浮かべる


イザマーレは再び口唇を開き、詠唱を始める

先程とは異なる、美しく伸びやかな歌声


呪いの闇に覆い尽くされた大地に光が射し

気がつけば、もとの平和なプエブロドラドの風景に戻っていた


風がそよぎ、木々が揺れる

行き交う信者に、活気が戻る


(…ふっ、リリエルのおねだりだからな。仕方あるまい)


マントを翻し、イザマーレは瞬間移動で立ち去った……





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