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疑惑の種


その日、イザマーレは公務のついでに

自身が統括する本拠地、枢密院を訪れていた。


大抵の事は、屋敷内の執務室で事足りるのだが

すべての事象を他魔任せにせず、常に状況を把握する

そして、悪魔軍666師団のスタッフたちに的確な指示を伝えていく


この徹底ぶりこそが、周囲に全幅の信頼を寄せ

副大魔王としての能力を遺憾なく発揮することが出来るのだ


半端ない量の書類に目を通しながら、スタッフ魔の報告に耳を傾ける


何気なく発したスタッフ魔の言葉に

長い睫毛を震わせ、透き通った目で見つめ返す


あまりにも澄んでいて、心の内まで見透かされてしまいそう……

実際、口から出る言葉だけでなく、裏側にある思いまで

すべて見透かしている副大魔王だ


「…枢密院の要員不足だと?」


「あ…い、いえっ、イザマーレ様やウエスターレン様を

補助できる程の能力がなければ、頭数だけ増やしても

邪魔なだけですよね。我々も、その事はよく理解しております」


報告するスタッフ魔は、少々焦るが、

長年、イザマーレに信頼されているだけある。

能力は高い


「それで?」


「あ、はい。イザマーレ様に報告するまでもなく、

必要ないと返答したのですが」


短い言葉で先を促され、話を続けるスタッフ魔



 

「お妃様の負担を少し軽くすれば、イザマーレ様にとっても

良い事なのではないかと……言われ……うわっ、ちょっと!」


困ったように話しながら、イザマーレの顔をチラッと伺うと

物凄く怖い顔で睨んでいる


(…もう!僕が言ったわけじゃないから…!)


イザマーレの性格を知り尽くすスタッフ魔は、

どうやったら隠れてため息を零せるか、

考えるだけ無駄だと悟り、堂々とため息をつく


「ミルよ。ご苦労だった。そのような下世話な事まで持ち込む輩は

どうせくだらない策略を企ててるだけだろ。お前の判断は正しい。

だが何故、わざわざ報告した?」


即決し、問いかけるイザマーレは、

普段の穏やかな表情に戻っている


「リリエル様のお仕事を邪魔して、悪戯するくらい、

お忙しいのは間違いないですから…」


書類からチラッと顔を覗かせ、

イザマーレをじっと見つめるミル


「ふっ、リリエルの仕事は完璧だ。新たな要員など不要。

ましてや能なしの外野に、とやかく言われる筋合いもない」


不敵な笑みを残し、イザマーレは立ち上がる。


「畏まりました。余計な手間を取らせました。

予想通り、この案件はお断りっと…♪」

ミルは笑顔になり、イザマーレを見送った


次の瞬間、イザマーレは姿を消していた



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