悪魔として目覚めた後、
イザマーレとリリエルは、濃密な契の時間を過ごした。
数週間後、ダンケルへの正式な報告の為、
ウエスターレンと共に魔宮殿を訪れた。
ダンケルへの謁見を済ませ、仮設の王室を出たところで、
破壊された王室の復旧作業のため、
現場を指揮していたベルデに会う。
「和尚!」
「やあ、リリエルちゃん。その後はどう?
魔力のコントロールが難しいようなら、いつでも相談してね」
「閣下から聞きました。儀式と施術については
和尚がサポートしてくださったと。ありがとうございます。」
ベルデとのやり取りを、見つめていたイザマーレとウエスターレン。
復旧作業に駆り出された下っ端悪魔の中には、不満を持つ者もいた。
「…ちっ 何だって俺たちがこんなことに
駆り出されなきゃならないんだ?
俺たちが逆立ちしても住めないような豪華なものをなあ!
全く、王家ってやつは………」
「…ったく、俺の目の前でよくも……」
聞きつけたウエスターレンが、手に炎を出し焼き払おうとした時、
その悪魔の前にリリエルが瞬間移動した。
「…ご苦労をおかけして申し訳ありません。
私のために、皆様にもご迷惑をおかけしております」
下っ端悪魔の目線に合わせて跪き、
ねぎらいの言葉をかけるリリエル。
「…!えっ、あ………いや(汗)」
いきなり現れた、魔界であまり見かけないタイプの
ふんわりした美貌の女性に、思わず見惚れていた悪魔は
彼女がイザマーレの妃と知り、驚きを隠せない。
てっきり、もっと高慢で嫌な女に違いないと
思い込んでいたのだ。
「そうだ!よろしければ、こちらをどうぞ。
人間界で販売していた物なので、お口に合えば良いのですが………」
そう言って、小さい乳酸菌飲料を魔力で取り出し、悪魔に差し出す。
「!えっいいんですか?いや、こりゃありがたいな。しかも美味いっ」
悪魔の反応に、にっこりと微笑むリリエル。
「よかった♪ あ、良かったら皆様もどうぞ」
遠巻きに見ていた他の悪魔も集まり、
いつの間にか、現場に漂っていた不穏な空気は消えていた
「…先日も思ったんだけど、リリエルちゃんて凄いよね」
一連の動きに感心したベルデが呟く
「なんだよ、今更分かったのか?ベルデ。
イザマーレの暴走を抑え込むのに
重要な役割を果たしているのは
リリエルのああいう性格なんだぞ」
自分の事のように誇らしげに語るウエスターレン。
全てを見守っていたイザマーレは、微笑みを浮かべる
「リリエル、おいで。そろそろ行くぞ」
「あ!はーい。…では、失礼しますね。
良かったら、またお邪魔して良いですか?
これからも、差し入れさせて貰いたいのですが……」
「!ホントに??やったー!!」
歓喜の声をあげる悪魔たちに微笑みかけながら、
イザマーレの元に戻るリリエル。
「ふふっ閣下に教えていただいたように
瞬間移動できるのか、試してみたくて♪」
あくまで天真爛漫なリリエル。
イザマーレは優しく髪を撫で微笑み返す。
「吾輩の妃として相応しい魔力が備わってるからな。
呪文などを使わずとも、お前の心の動きに応じて扱えるはずだ。
さ、戻ろう。ウエスターレン、帰るぞ」
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