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矢の呪い


セルダの構築した戦術は、

敵の裏の裏をかき、天界の意図した通りに動くことにより

蠢く天使たちを一同におびき寄せ、自らが矢面に立つ事だった


見た目には、天使を従えたセルダと

迎え撃つイザマーレという構図が出来上がる


イザマーレが天使を狙えばセルダを

セルダを見捨て、狙えば、後ろに控える構成員を根絶やしに出来る


(…ふっ 幼稚園児にしては、上出来の筋書きだな)


不敵な笑みを浮かべ、黒い口唇をそっと開く


イザマーレの動作を起点に攻撃を仕掛けるはずが

己の意図しないまま、次々に弓矢を構える天使たち



遥か前方…天使の軍勢を挟み撃ちにする位置に

ウエスターレン軍が控えていた

事前に、イザマーレの言霊により気配を消されているため、

姿は見えていない


「…始まったな」


赤い髪を垂らし、長い脚で仁王立ちするのは

紅蓮の悪魔、ウエスターレン


イザマーレの言霊を合図に、傍で控えていたリリエルに笑いかける


「リリエル。お前の出番だ。退屈だったろ?

しりとりゲームでもするか♪」


「はい、お任せくださいませ♪」


いつも通り、微笑みを絶やさないリリエルを抱きしめ、耳元で囁く


「よし。リリエル、行けっ」

ポーン…




 

天使の放った矢の放物線を追い越し、同じ軌道上に飛んでいくリリエル

その身体に、無数の矢が突き刺さる


血濡れになりながら、着地点に待ち構えるイザマーレに抱き止められる


「閣下…しりとりゲームですよ♪パン…ダ🐼🐾💕(≧∇≦*)…」

天真爛漫な笑顔を浮かべたまま、気を失っていく


受け止めたイザマーレの手が、リリエルの血で染まる

力が抜けて倒れこむリリエルを抱き抱え、静かに笑みを浮かべる


「…仕方のない奴だな、リリエル♪お前に刃が向かえば、

森羅万象が怒りに満ち溢れると分かっておるだろう?

その力、遠慮なく使わせて貰うぞ。

しりとりの最後は…『ダリア!!!』」


イザマーレがその声を発した途端

怒りに満ち溢れながらエネルギーを充満させていた自然界が、

光の意思に従い、一斉に毒の粉をまき散らす


抗う隙も許されず、一気に消滅していく天使たち


天界の呪縛から解放されたセルダが、

真っ青になりながらすぐさま駆け寄る


「リリエルちゃん……!!!閣下、なんて馬鹿な事を……!!!」


全てが終わり、イザマーレに抱き上げられたリリエルは

すでに息をしていなかった


「セルダ、落ち着け。リリエルのことなら心配いらない。

それよりも、自然界の怒りを鎮めてやらねばならない。

その為にはセルダ。お前の力が必要だ。頼んだぞ」




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