top of page

祇園の夜


ミサ成功の余韻もそこそこに、

構成員達は楽屋裏口にスタンバイしているタクシーに分乗して

ある場所に向かった


目的を告げずに、タクシーは走り始めた


今夜はスポンサーからの招待で夕食会が開催されるのだ

スポンサーが目的場所を告げ、料金も支払い済みだったようだ

ミサ後の興奮状態がおさまりつつある時に、タクシーが止まった

どうやら目的地に着いたようだ

タクシーを降りて見ると…


そこは重厚な佇まいの高級料亭だった


構成員達は互いの恰好を見比べる

「この格好じゃ失礼にあたるか」

戦闘服の上にカラフルで派手なジャージを羽織っただけのイザマーレ


「でも服装の指定なかったじゃんね」

代名詞とも言えるロングブーツにロングのライトダウンを着こなすセルダ


「いくら時間がなくても、もう少しお洒落できたな」

Tバック丸見えのスケスケパンツ姿のバサラはボヤキながら、

ほぼ全裸状態のラァードルを見返す


「え?吾輩もこういう所ほとんど来た事ないけど、すげーな」

自らの恰好にはまるで無頓着で、門構えに興味深々なラァードル


「まぁ、良いんじゃない。とりあえず行こうか」

ベルデを筆頭に料亭の門をくぐった時、奥から声がかかった


「閣下!皆さん!お疲れ様です。ようこそ。さぁ中へ…」


構成員を迎えたのは今夜のスポンサー、国際弁護士のラオだ


東京で悪チン接種をすれば良いものを、

わざわざ京都まで足をのばし接種をしていた

そして彼の馴染みの店での夕食会となったのだ


ラオにイザマーレが訊ねる

「ラオさん、我々はこの料亭に入るに

ふさわしい服装をしていないのですが、大丈夫でしょうか」


イザマーレの言葉に弾けるような笑顔を振りまき答えるラオ

「大丈夫ですよ。僕がちゃんと話をしておきましたので、

皆さんは何もお気遣いなく楽しく過ごしてください。

ささ、中へ入って今夜のミサ成功の乾杯をしましょう」


ラオに背中を押され店に入るイザマーレ


それに続き構成員達も入っていくのだが…


「…なんか自慢入った?『僕がちゃんと』って。

前もって言ってくれてたら、僕だってお洒落出来たんだよ」


「まぁまぁ。バサラはどんな格好でも麗しいから大丈夫だよ」


美意識の高いバサラは殊更悔しがるが

どんな状況でも動じないベルデがさり気なくフォローする


「これでえぇんなら行こう。お腹空いたじゃんね」

細かい事は気にも留めないセルダは

店内から漂ういい匂いに舌なめずりする


「吾輩も腹減ったー」

食欲なら誰にも負けないラァードルは、嬉々とし始める

わいわい騒ぎながら、やっと店内へと足を運ぶのだった


通された部屋は舞台も設えられた煌びやかな部屋だった

それぞれの構成員の前に膳が置かれ、豪華な料理が並んでいる

ラオの乾杯の音頭を皮切りに食事会が始まった


ある程度時間が過ぎた頃

舞台側の襖がスッと開き、静かに人が入ってきた


食事をしながらふとそちらを見遣る構成員達


箸を落とす者

酒を吹き出す者

料理を喉に詰まらせる者

ポカーンと見つめる者

にやりと笑い写真を撮る者


構成員達の目の前には、粋に着流しを着こなし

アコースティックギターを持つウエスターレンと

少し派手目な着流しに鼓を手にする海星


アコースティックギターで静かなメロディを奏で始めるウエスターレン

一見、不協和音を奏でるように見える和室とギターの音色

しかしウエスターレンのテクニックで、見事なハーモニーを奏でていた


暫くの間、聞き惚れていると、次に芸妓達がしずしずと入ってくる

1 番最後に置屋の女将。


芸妓達の姿を見て表情を曇らせる構成員達


彼らには、それぞれに想う相手がいる

いくら酒の席でも女性を側におくのは

あまり気分の良いものではない


女将が頭をさげて挨拶を述べる


「今宵はお招きいただきありがとうございます。

どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ」


女将の言葉に顔を上げる芸妓達

よく見ると…リリエルとLily’s達だった


和室には不釣り合いと思える程の軽快な調べに合わせ、全員で舞い踊る


元バトンクラブの実績を誇るリリエルとリリアとムーラン

この3名を中心に、残りのメンバーも見様見真似に舞い踊る


軽妙な一曲目が終わり、ガラッと一転、しっとりとしたバラードになると

扇子をうまく捌きながら、クルクルと舞い踊る


芸妓達が彼女たちだと分かった瞬間、

それまで硬い表情だったイザマーレたちの緊張も解けた


リリエルを筆頭にそれぞれの構成員の側に向かうLily’s


舞台ではウエスターレンと海星の演奏に合わせて舞い続けるリリアとムーラン


イザマーレの隣に座り、にっこりと微笑むリリエル


「驚いたぞ。まさか芸妓になるとはな」


「いつも素敵な黒ミサで夢心地にさせてもらっている御礼がしたいと

Lily’sの皆が仰ってくださって…

そしたらスポンサー様が閣下たちのために京都中の美女をお探しになっている

…とか耳にしましたので♪京都の美女じゃなくて、申し訳ありません…//////////////」


「なるほど(笑)しかし、その姿もよく似合うな」


「…あ、あの…それで、閣下にお願いがあるのですが…」


恥ずかしさに顔を覆いながら、耳元に口を近づけて内緒話するリリエルに

イザマーレはニヤリと笑いながら杯を差し出す

そして、そっとリリエルの耳元に口を寄せ囁く


「今宵で禁欲生活の第一弾は終わりだな。男の憧れを実現させて貰おうか」


「閣下のお心のままに////////」


真っ赤に頬を染めながら、酌を注ぐリリエル


そこへ舞い終わった リリアとムーランがやってきた


「二人とも見事だったぞ。」

「ありがとうございます」

「閣下のお目汚しでなければ良いのですが…」


そこへ、闇の影が浮かび上がり、ダンケルとダイヤが姿を現した。


「ダイヤ様♪♪いらっしゃい~」

気がついたリリエルは、嬉しそうに微笑む


「あ、リリエル様♪…今回もお綺麗だわ~…(笑)」

お楽しみの所、すみません…実は、京都ミサの直前にプエブロドラドにきた

信者さんがいらっしゃって…是非、この機会にご紹介したいと思って

お連れしたんです」


ダイヤの後ろに縮こまるように佇んでいた影に、

店に居た全員が振り向く


「あ、花蓮光ちゃんじゃない♪良かった、間に合ったのね♪」

気がついたバナトラが気さくに声をかけ、構成員に紹介していく


最後にイザマーレの元へ向かい、傍に寄り添うリリエルと挨拶を交わす

「…は、初めまして…リリエル様…//////////////」

「(´∀`*)ウフフ……ようこそ、いらっしゃいました。お名前は?」


「花蓮光です」


「リリエルちゃん! 是非Lily’sの仲間にしてあげたいと思うの。どうかな…?」

率先して進めてくるバナトラ


「そっか…バナトラ様のお知り合いなのね。ってことは、参謀宗なのかな?

勿論ですよ♪花蓮光様、よろしくお願いします。

私とも、是非仲良くしてくださいね♪」


挨拶を終えて、バサラの傍に彼女を連れて行くバナトラ


次に舞い始めたのは セリーヌとメーラだ


バナトラはバサラの横でお酌をしている


「バナトラ……なんて美しいんだ。お酒を飲む前に君に溺れてしまうよ」

誰よりも嬉々としてバナトラに感想を述べるバサラ

「ありがとう、バサラ♪

メーラちゃんも花蓮光ちゃんも綺麗でしょ」


「本当にみんな素敵だよ。」

2名も舞い終わり、バサラのところへ…

両手どころか前にも2人芸子をはべらせて、まさにハーレム状態のバサラ


ベルデの横に座ったのは裕子

いつものベルデはどこへやら

顔を真っ赤にして、杯を持つ手も震えて見える


「さ、和尚。一献どうぞ」

「う…うん。ありがとう」

「どうしてこちらを向いてくださらないんですか」

わざと悲し気な声をだすと、ベルデは慌てて酒を飲み、裕子の方を向いた

「あ…違うんだよ。君が綺麗だから…その…」

「綺麗と言ってくださって…//////嬉しいです」


穏やかで優しい時間が流れていく


ラァードルはスプネリアを迎えに行き、自分の横に座らせ、

上から下までじっくり堪能していた

「すっげぇ綺麗だぞ。あ、写真撮って良いか」

隠さないまっすぐな言葉を受け取り、

スプネリアもニコニコと可愛らしい笑顔になる


「似合ってますか?」

「おう、すっげぇ似合ってる」

「殿下とのツーショット写真も欲しいです」

「俺も。あ、ラオさん。ちょっと写真撮って貰っても良いですか」


そう!


この部屋にはスポンサーのラオもいたのだが、誰も側には行かず

一人ポツンと酒を飲んでいた


ラオに突き刺さる、ウエスターレンと海星の哀れみの視線


そこに声をかけられたものだから、

ラオは喜んでラァードルの元へと飛んできた


「良いですよ!お似合いのお二人ですね。撮りますよ。はいチーズ」


「ありがとうございます」


ラァードルとスプネリアはラオにお礼を述べ、また二名の世界へと戻っていった


また取り残されたラオが視線を向けると、そこには置屋の女将がいた

芸妓を頼んだのは、スポンサーのラオだ

しかし、置屋の女将まで座敷に呼んだ覚えはない

話している相手はセルダ


怪訝な顔で置屋の女将の会話を盗み聞く


「なんで、その格好なん?」


「あまりにも芸妓の着物が似合わなくて…

でも、せっかくだから着物が着たくてお願いしたら…めっちゃ貫禄出てしもて…

それやったら置屋の女将って設定が面白いんちゃうか?

って言われたんで、そうしました」


その言葉に「ブフッ!」と吹き出すセルダ


「我慢せんでも良いですよ。私も笑って貰った方が嬉しいし」

プルーニャがそう返した時、袖が何やらモソモソ動いているのが目に入った

「なぁ…袖動いてるけど…」

と訊ねるジェイルに「あ!」と大声をあげて袖の中に手をやるプルーニャ


何が出てくるのかワクワクしているセルダの目に飛び込んできたのは、

可愛い着物を着たハルミちゃんだった


狭い袖の中からようやく出る事が出来たハルミちゃんは

伸びをした後、セルダを見つけ、すぐに膝に飛び乗りゴロゴロと喉を鳴らした


「うちの中で1番べっぴんさんな売れっ子ですよ」


してやったりな顔のプルーニャも、

セルダの膝の上でご機嫌なハルミちゃんを撫でる


「どうせやるなら、徹底的にせな、おもしろないですからね」

そう言って笑うプルーニャにセルダも笑顔を返す


その流れをずーーーっと眺めていたラオ


ふと部屋を見回すと、

圧倒的ハーレム状態のイザマーレとバサラが目に飛び込んできた

自分もイザマーレの席に近寄ろうかと思ったが、

ふと目が合ったリリエルの笑顔に、何故か背筋が凍る感覚がして

すごすごと自分の席に戻っていった


それまで黙って演奏をしていたウエスターレンと海星だが

とうとう我慢の限界を超えてしまった!

しびれる足を誤魔化しつつ、空いているラオの席に辿り着き

手酌で酒を楽しみ始めた


そこへ、じっとしていられなくなったハルミちゃんがお部屋探索を始め、

それに付き合って一緒に部屋の中を回りながら

セルダとプルーニャが近づいてきた


「長官も海星さんもお疲れ様です」

プルーニャがお銚子を持つと、2名は笑顔で杯を差し出してきた


「和室にアコースティックが似合うとは思わんかった。

めっちゃ良かったな…俺も一緒に演奏したかったなぁ」

ハルミちゃんを撫でながらセルダがぼそっと呟く


「ん?あと1本だったら控室にあるぞ」


美味しそうに酒を飲みほしたウエスターレンが答えると、

セルダはそそくさと控室に向かい

もう 1 本のギターを持ってきてチューニングを始めた


「せっかくだからセッションするか」

少しお酒が回ってきたウエスターレンが声をかけ

ダブルギターと鼓の不思議な演奏会が始まった


軽快な音楽に、それまでまだ残っていた緊張もすべて解き放たれた


愛しい女からの笑顔と美味しい食事とお酒で

すっかり気分の良くなったイザマーレの元にウエスターレンが近付く


「イザマーレ…今宵は俺からお前に頼みがあるんだ

俺のギターに合わせて、歌ってもらえないか…?」


ウエスターレンの言葉に、周囲から拍手と歓声が沸き上がる


イザマーレの返答を待たずに、ウエスターレンはギターを奏で始めた


『GO AHEAD』のイントロを……


「やれやれ…仕方がないな」


ため息をつく素振りでイザマーレも笑みを浮かべ、歌い始めた

ギターと鼓の不思議な音色に、

イザマーレの艶やかな美声が重なりあい、祇園の夜に響く


間奏に入ると、リリエルから受け取った扇子を手に舞う


イザマーレの美し過ぎる舞いと奏でられる演奏に

その場にいた全員が息を飲んで見つめる


奇蹟の数分が終わると、甘美な余韻が漂う


拍手喝采の後、海星のテンションが爆上がりし、鼓を乱れ打ち

ウエスターレンとセルダのギターが加わり

二度と味わえない摩訶不思議な時間が流れた。


最後の一音が消えると、まるで潮が引くように

その場の空気も落ち着きを取り戻し

今宵の宴の時間が訪れた事を告げた


華やかな宴で歌い終わったイザマーレは

にこやかな笑顔で佇むリリエルの元へ戻り、

髪を撫でながら、囁く


「この後は、もちろん報酬をいただく。良いな?」

「…はい…//////」

頬を赤く染めて俯くリリエルを抱き寄せるイザマーレ


その時…


「イザマーレ…改めて言う。先日は本当にすまなかった。

これからも俺に、お前たちを守らせてもらえるだろうか…」


「!! ウエスターレン…そんな事…///////」

思いがけないウエスターレンの真摯な態度に、

言葉を詰まらせ真っ赤に俯くイザマーレ。


その綺麗な金髪を優しく撫でるウエスターレン


「まさか…姫君よりも俺が先に解禁になるとはな(笑)

だがそれなら、今度はお前らの番だ。そうだろ…?」

そう言って、2魔を瞬間移動させた先は、料亭近くの旅館だった


「//////////////」


ますます、真っ赤な顔で俯くリリエル

すぐに後ろから抱きしめられる


「…閣下…//////////////」


久しぶりのイザマーレのぬくもりに、とろけそうになる


「まさかウエスターレンが、こんな計らいをするとはな…

リリエル、おいで」


そのまま敷き詰められた布団に誘い込むイザマーレ

「//////で、でも……やはり今宵も、長官とお過ごしになりたいのでは……?」


やや躊躇い、そぉ~っと遠ざかろうとするリリエル

逃すまいと、帯をガッシリと掴み、一気に引き寄せる


「きっ、きゃあああああ!!」


駒のようにクルクル回りながら、イザマーレの腕に収まるリリエル


「毎回毎回、最もな理由をつけて逃げやがって…

悪魔の掟だ。報酬は頂く。逃れられると思うな♪」


目が回り、クラクラしているリリエルを後目に、

指を鳴らし、魔力で出した盃に酒を注ぐ

自身の口に含ませてから、リリエルに口移しで飲ませる


「…んっ…//////////////」


そのまま深く口唇を重ね、力の抜けたのを見計らい見つめ合う


「さ。極上のデザートを頂こうか、芸者風情の誰かさん♪」


襦袢の袷から手を差し入れ、肌をまさぐる

堪らず吐息を漏らし、啼き始めるリリエル

数か月ぶりに愛される喜びに、酔いしれ始める…だが

ふと気がつき、俯きがちに見つめ返すリリエル

「…どうした?」


「閣下…///////せっかくの祇園の夜なのに

私ばかり芸者の真似事では…そうだ♪え~いっ」


久しぶりのリリエルの魔法で、着流し姿に変身するイザマーレ


「なるほどな(笑) これで満足か?お姫様…」


再び口づけを交わし、耳朶を甘噛みする。首筋に舌を這わせ

徐々に露になるリリエルの肌に赤い刻印を付けていく

ゆっくりと舌を這わせ、何度も果てさせる


相変わらずの花の色香に酔いしれ、光のオーラが更に輝き始める


消された扉の外で、警護しているウエスターレンが

イザマーレの波動を感じ取り、静かに微笑む


そして、虚空を見上げ、紫煙を燻らせる


今まで頑なに拘り続けた意味は何だったのか

ひとつだけ、見失っていたのは確かだ

最高魔軍という集団の、恐るべき柔軟さに


リリエルをはじめ、Lily’sたち信者から

改めて教えられた気がする


自分だけがその場を離れるより、

新たな活動の場を最高魔軍と共に楽しむ

そんな方法もあったんじゃないか


もちろんそれを、イザマーレ、お前が許してくれたら、なんだけどな…


イザマーレとリリエルが姿を消した後、

Lily’s達が着替えるのを待ちながら、残りの余韻を味わう構成員達

そこにちゃっかり混ざる、スポンサーのラオ


ラオの企みは、最初はイザマーレと2名での食事を目論んでいた

だが、無理だと分かり、構成員達も込みで食事に誘った

芸妓を呼んで他の構成員達が芸妓と戯れている間に

イザマーレと2名の時間を作るつもりだったのだ


なのに、まさかの芸妓が構成員達と知り合い…

結局、自分だけが独りぼっちで飲む羽目になった


(京都まで来る必要なかったな…いや!

閣下の歌と舞いが見られたのは本当に奇蹟だ

京都まで来なかったらこんな素晴らしい時間は味わえなかったんだ。

よくやった!俺!)


ポジティブ男、ラオ!


彼のお蔭でイザマーレを始め、構成員とLily’sの仲が

より深まった事を彼は知らない…


Fin.




Epilogue


イザマーレ達が消えた後…

一本の光が部屋に差し込み、宴会場にいた全員が一斉に振り返る。

「…ふっ…来たか…」

ダンケルは微笑み、ダイヤはパッと明るい顔をしてワクワクしている。

そこに現れたのは、黄金の髪を靡かせ真っ黒い服を着たミカエル


「きゃ~いらっしゃ〜い 」」

即座に抱きついたのはダイヤ

ミカエルは苦笑いしながらもダイヤの背中をポンポンしながら

「いつも元気だね〜 相変わらずに」


久しぶりのミカエルに、ダミアンも嬉しそうにしていた。

「ところで…あいつ等は?」

ミカエルは会場を見渡す

「…あぁ 閣下達ならなら先に宿に行っちゃって……」

ダイヤは顔を上げて言った


「…一歩遅かったか…」

ミカエルは残念そうに呟く


ラオはミカエルを見て驚いていた

イザマーレに勝るとも劣らない美男子…これは…チャンス到来

と思っていた。


「はじめまして✨ラオです。 とっても美男子ですね✨」

ここぞとばかりに近寄ると、ミカエルはニコニコ微笑み会釈する


だが…ラオの話を遮り

「どうだ?ミカエル…私とセッションしないか?構成員もいる事だしな…」

ダンケルは微笑みながら言った


「俺が???」


困惑しながらミカエルは引きつった


イザマーレの片割れとは言えど…歌など歌った事がない…


「良いじゃん、ミカエル様の歌声、聞きたいわ」

ダイヤがワクワクし始めた途端にダンケルは魔力でアコギを出した


「…たまにはお前の歌声を聞かせろ」


そして…ダンケルのギターに合わせ、ミカエルが歌い出す


「………マジ?……」


構成員も驚きLily’sも魅入るように歌を聞いていた…

地球デビューしたてのイザマーレの声そのものだった


透き通る美声…

バラードまで披露したのだ

Lily’sは驚きながら、聞き惚れている


特に泣き虫のダイヤはホロホロと涙を流す

魔界に来てからの全ての事が走馬灯の様に脳裏に浮かんでいた


歌い上げたミカエルは恥ずかしそうにしている

ダンケルは微笑みミカエルを抱きしめた


「ダイヤ、先に魔界に帰る。お前はどうする?」

ダンケルはミカエルをガッチリ掴んで離そうとはしない


「あ… いえ、私は少し残ります ごゆっくり〜 」

扉を消すな…と思いつつ答えるダイヤ


「気を付けて帰ってくるのだぞ?

…さ ミカエル……私に付き合ってもらおうか」


「はぁ???!俺は…」

ミカエルは焦るがダンケルは構わず引っ張り魔法陣で消えていく…


見送りながらダイヤは辺りを見た……

気が付けば…Lily’sや裕子、構成員が全て居なくなっている…


残っているのはラオとダイヤのみ……


「貴女は残るんですか?」


ラオに聞かれ、酒を飲みつつダイヤは頷く

「既にみんな居ないし…魔宮殿帰った所で

陛下は当分部屋から出て来ないから

ラオさん、飲み直しましょうよ〜

目的の閣下もリリエル様と姿暗ましたし、同じ匂いがする〜」


あっけらかんと言うダイヤの話を聞き始めたラオ……


飲んだくれているダイヤはラオに人生相談に乗ってもらっていた……


流石は国際弁護士のラオ…的確なアドバイスをしながら

朝まで飲み明かしていた

閲覧数:5回0件のコメント

最新記事

すべて表示

ある話

「なっ……」 ツアー初日を終え、屋敷に戻った吾輩の目に 信じられない光景が飛び込んできて、呆然と立ち尽くす 熱っぽい赤ら顔で、ベッドの左側に鎮座する 抱き魔クラにもたれ、スヤスヤと寝ているリリエル… ツアーの為に人間界に出向く間、寂しさを埋めるために...

聖なる悪魔がふたたび・・・

魔歴24年2月15日 聖飢魔Ⅱ期間限定再集結35++ 執念の大黒ミサFINALを迎えるに当たり 献上作品となります。 ※ただし、本作品は「聖飢魔Ⅱに非常によく似た架空の世界の物語」です。 SNS等への公開は断じてお断りいたします。...

父と子

穏やかなある夜 家族それぞれが寛いでいるひと時、シューゾウはセルダの部屋を訪ねた 「おとん。聞きたい事があるんだけど…」 「ん?シューゾウが俺に聞きたい事あるなんて珍しいじゃんね。どうした?」 「うん…今日プエブロドラドのレストランで長官にお逢いしたんだ。...

コメント


bottom of page