「よお!ちょっといいか?」
文化局に颯爽と姿を現したのは、紅蓮の悪魔、ウエスターレン。
「やあ。いらっしゃい♪もちろんだよ。どうぞ、腰掛けて。」
ベルデは穏やかに出迎え、椅子をすすめる。
「事件のことで、世話になったな。お疲れ!」
長い脚を優雅に組み、紫煙を燻らせるウエスターレン。
「…それにしても、だいぶ魔力を消耗してるね…(笑)
その様子なら、イザマーレもご機嫌かな?」
禁煙のことも、それ以外の事も
諸々、呆れ気味に苦笑しながら、ベルデものんびりと応じる
そこへ、裕子がお茶を淹れて運んできた
「お!裕子。今日はこの後、人間界に行くのか?」
ウエスターレンはニコニコして話しかける
裕子も微笑んでお茶を差し出す
「はい。しばらく留守にします。
その間、なっちゃんをよろしくお願いします♪」
「ふっ、あいつの甘ったれと暴走癖は、
今に始まったことじゃない。俺らに任せな♪」
ウエスターレンはニヤリと笑う
2名のやり取りを見つめていたベルデが、穏やかに語り出す
「…始まりの場所に咲きかけていた百合の花は、
ランソフがイザマーレたちに危険を知らせるための
メッセージだったんだね。」
「そうだな。そして、リリエルの市場での1魔歩きは、
細かい情報を探るために必要不可欠。
あいつに任せていれば、問題ない。俺もイザマーレも
リリエルには絶対的な信頼を寄せているからな」
ウエスターレンも力強く語る
「…なっちゃんは、多分、拗ねてますよね(苦笑)」
裕子はすまなそうな顔をして俯く
「魔界の諸問題は、プエブロドラドのそれとは雲泥の差だからね。
かなりの能力とスキルが必要なんだよ。こなせる悪魔なんか居なくて
元々は、イザマーレとウエスターレンが全て請け負っていたくらいだから。
公設秘書が務まるのは、リリエルちゃんだけなんじゃないかな…」
ベルデも納得顔で頷く。そして、話を続けていく
「そういえば、裕子ちゃん。
イザマーレやダンケルの扉消しについては、もう知っているよね?」
「////////はい…」
聞いた内容を思い出して赤面し、俯く裕子
「実はさ…イザマーレの扉消しタイムの後は、
魔界のオーラが物凄く安定するんだよ。」
「えっ…そうなのか?」
ベルデの思わぬ発言に、ウエスターレンも驚く
「毎回、物凄い波動を引き起こし、魔界中に解き放ってるからね。
君たちは無自覚だろうけど(笑)」
やや苦笑しながら、穏やかに語るベルデ
「波動といえば、先日プエブロドラドで、
ダイヤちゃんが襲われたでしょ?」
「…それについては、俺も疑問に思っていた。
強力な結界が張り巡らされたプエブロドラド内で、
なぜあんな下っ端悪魔が襲撃なんぞ出来たのか。」
とるに足らない事件で忘れていたが、
僅かに抱いていた疑問を投げかけるウエスターレン
「…もちろん、婚姻の儀式を終えて、
ダイヤちゃんが有名になった事も一因だけど……
やっぱり、ダイヤちゃん自身が、自分で引き寄せちゃってる
それが一番の問題なんだと思うんだよね……」
裕子には気づかれないよう、視線を送りながら
ウエスターレンに応えるベルデ
「は、はぁ~ん。なるほどな。」
やや呆れ気味に、含みを持たせ呟くウエスターレン
だが、そのやり取りで、なんとなく察する裕子
「もしかして……私を心配し過ぎとか…ですか?」
「!……」
驚いて裕子を見つめる2魔
「…へえ。ダイヤの奴と親友ってだけあって、
あいつの事はよく分かってるんだな♪
しかも、かなり鋭い審美眼を持ってるな?」
ウエスターレンは改めて、裕子を見ていた
ベルデは穏やかに微笑んで、裕子に指南した
「そういうことみたい。だけど……
それを素直に伝えたところで、
分かる子じゃないのよ、ダイヤちゃんは(笑)
魔力のコントロールの事もあるから、いい訓練になるよね
裕子ちゃん、ダイヤちゃんをよろしく頼むね」
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