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芯に光る


裕子が人間界から魔界に戻っても、

ダイヤのモヤモヤは相変わらずだった


「そもそも、なんで私に一言の相談もなく!

いつもはあんだけ大事にしてるリリエル様にも

平気で酷い事させるんだから、閣下は…!」


ダイヤは誰もいない部屋で、ブツブツ独り言ちて

気を紛らわしているつもりだったが、裕子には丸聞こえだった


「なっちゃん。なっちゃんは、大魔王陛下のお后だよ?

魔界で日常的に起こる事件の事で

いちいち報告って、出来ないものなんじゃないの?

最前線にいる閣下たちと、なっちゃんじゃ、立場が違うしね」


裕子の冷静な口ぶりに、ダイヤは驚いて顔を上げる


「あの時、閣下が現れて、

私のことを文化局に連れて行ってくれた理由も、やっと分かった」


静かに微笑む裕子


「でも、たしかに、なっちゃんの気持ちも分かるわ。

閣下、素敵過ぎるよ……(笑)」


「( ゚∀ ゚)ハッ!そうだ、ゆうちゃん

閣下に抱き寄せられたんだっけ?( ̄▽ ̄)ニヤニヤ」

裕子の言葉に、ケタケタ笑うダイヤ


「凄く、守られてる感じがした。……なんでだろ?」

俯きがちに、素直な感想を述べる裕子




 

「ちょっと!ゆうちゃん、

まさか、閣下に惚れちゃったんじゃ……(^-^;」


裕子の様子に焦ったダイヤは、問い詰めた


「それは、なっちゃんでしょ?全く……(苦笑)」

裕子は呆れたようにため息をつく


「でも、ダメ。勘違いは、いい加減にしないと。

閣下は素敵でも、ダメだよ。分かってる?なっちゃん」


裕子は目を細め、じっとダイヤを見つめていた


「…えっ……な、なんの事かな……(汗)」

目を反らし、誤魔化そうとするダイヤ


ダイヤの様子を注視しながら、裕子は話題を変えた


「それはそうと、和尚に頼まれたの。

明日、一緒に文化局に来てって。」


「Σ(・ω・;)ギクッ……和尚が……?なんだろ?」

ますます焦りながら、承諾するダイヤ


その後、迎えに来たダンケルに抱き上げられ、

プライベートルームへ連行されたダイヤ


見送った裕子は、静かに、ある決意を固めていた……




 

翌日、文化局に訪れると、

出迎えたベルデの横に、ウエスターレンが佇んでいた



「よお!ダイヤ。明日から、俺も職場に復帰する。

いつも以上に厳しく仕事させてやるから、楽しみにな♪」


「(笑)ハイハイ。…鬼上司の復帰ですね。覚悟しておきます」

ダイヤも笑顔で応じる


「ところで、ダイヤ。」


「はい?なんすか?」

普通に見上げたダイヤ


「ここからは、まずは僕が話をするね」


これまで静かにやり取りを眺めていたベルデが話し始めた


「確認したい事があってね。エマ事件のお陰で、すっかり

忘れてしまったかもしれないんだけど…

プエブロドラドで起きた襲撃事件の事で…」


「!…はい」

怪我を負った事件の事を思い出したダイヤ


「よく考えたんだけど、やはり

プエブロドラドの中で事件が起こるのは

あり得ないんだよね…襲撃された場所は、

本当にプエブロドラドの中だったのかい?」


「え……」


咄嗟の事件すぎて、記憶が曖昧になっていたダイヤ


「いえ、あの時は、プエブロドラドの中ではなく

村から出て、魔宮殿に戻る間の道で起きました」


ダイヤに代わって、はっきりと伝える裕子


「!…ゆうちゃん、そうだったっけ?」




 

「うん。私は青ざめて震えて見てるしかできなかったけど、

はっきり覚えてるよ」


驚いて見返すダイヤに、静かに微笑む裕子


「…プエブロドラドの外を、歩いたんだな?ダイヤ。

しかもお前、出歩く時、何の警戒もしてない。そういう事だろ。

村の外か中か、それすら記憶が曖昧なのは

日頃から、そんな意識を持って過ごしてないからだ」


ウエスターレンは断言するが、ダイヤはまだ、首をかしげていた


「あのなあ、ダイヤ。よぉおく思い返してみろ。

リリエルが屋敷から魔宮殿に行くとき、

1魔で歩いて行った事があったか?」


「…!でも……!私は今まで、お屋敷まで行くときも

しょっちゅう普通に歩いてましたが!」

思わず言い返すダイヤ。


「だから!お前ホント、自覚ね~な。どんだけ俺とイザマーレが

守ってやったと思ってるんだ。昔、イザマーレに反発して

生意気にも屋敷を飛び出して行ったろ?

そのまま放置しても良かったが、仕方なく保護してやったんだ。

命知らずも、いい加減にしろよな(苦笑)」


「……!」


愕然とするダイヤ。そして、じっと見つめる裕子……


「まあまあ、昔の事はそれくらいでいいじゃない。

とにかく今は、これからの事を話しておこうと思ってね」


重くなりかけた空気を、ベルデが宥める


「…す、すみませんでした…」

真っ赤になって俯くダイヤ。


「婚姻の儀式を済ませ、お前の認知度が高まり、危険度が増している

さすがに遠隔操作だけでは補いきれないこともあるだろう。

そもそも、俺たちに守られてる事すら、自覚がないようじゃ困るぞ」




 

「…はい」


容赦のないウエスターレンの言葉に、しっかりと返事をするダイヤ


「魔法陣でも、瞬間移動でも、使えるものは使うべきだよ。

幸い、君は、その能力があるしね。

瞬間移動できないリリエルちゃんより、身軽に動けるんだから(笑)」


穏やかに指導するベルデの言葉に

ダイヤは再び、モヤモヤし始める


「リリエル様には危険な囮調査させるのに??」


「リリエルが1魔で出歩くことを許しているのは市場だけだ。

その時も、必ずイザマーレと俺が、厳重に保護している。

そしてリリエルも、覚悟を持って臨んでいる。

無自覚にのほほんと歩くお前に、言われる筋合いはない」


バッサリ言い切られ、俯くダイヤ


「…私に対して、過保護になってる場合じゃないよ、なっちゃん。

なっちゃんこそ、どんだけみんなに甘やかされてるのよ」


裕子も情け容赦なく、断言する


ようやく納得しつつ、落ち込んだダイヤは

魔宮殿に戻り、ダンケルに甘える。だが


「ダイヤ!いつ襲撃にあってもいいように、訓練するぞ!

怪我無く終わったら、可愛がってやるから覚悟しろ!」


いつの間にか、厳しさを取り戻したダンケルに

連日特訓を受けるハメになったダイヤ…



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