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花の覚醒


「……これで良かったのか?ダイヤ」

ダンケルは魔宮殿の一つの部屋に行き聞いた

「……ご迷惑お掛けして申し訳ありません…」

ダイヤはずっと膝を抱えて泣いていた

「このままいつまでも居ても構わないが…

これから先どうするのか決まったら、私の所においで…」

ダンケルはダイヤの頭を撫でて優しく言った

ダイヤは頷くことしか出来なかった…




「…陛下」

ダイヤの部屋から戻ったダンケルに近寄る影……リリエルだった。


……

イザマーレに人間界へ戻された翌日。部屋にいたリリエルは

欠かさず見ているイザマーレ出演のTV番組をつけてはいるものの、

内容が全く入らないほど困惑していた。


髪から降りたいと伝えたが、応じないと言われた。

今日この後も、必ず会いに来ると…

自分との約束を破ったことなどないイザマーレは、必ず来てくれるに違いない

会いに来てくれたら、やはり嬉しくなって拒み切れない自分を思うと…

(だめだめ!もう決めたのだから……)

だけど…話があると言われた事も気になっていた。

お話だけは聞くべきではないのだろうか…


思い悩んでいた時、空気が揺れるのを感じた。

顔を上げると、目の前にいたのはダンケルだった。


「…陛下?」



 

「やあ、リリエル。久しぶりだな。しばらくこの部屋で過ごせばいい。

不自由にはさせないぞ」


「!……で、ですがそろそろ、閣下がいらっしゃる時間なので……」


「おや?髪から降りるという禁忌を犯しておきながら、

まだ相手との約束を守るのか?」


「!!……申し訳ありません。陛下のお心に従います…」


ダンケルの冷たい微笑に、リリエルは自分の立場を理解した。


リリエルが連れていかれた部屋はとても静かだった。

その時、隣の部屋からウエスターレンとダイヤの話し声が聞こえてきた。


『リリエル様が閣下の妻だって陛下から聞きました…私…最低だ…』

『そうだ。イザマーレの妻だ』


!!……まさか…私が?閣下の妻……??






だがすぐに、疑いようもないことを理解する。

それを語るのが、他でもないウエスターレンだからだ。

いつもイザマーレのすぐ傍で支え続けるウエスターレンの言葉は

真実に違いなかった。そして、長い間寄り添った自分だからこそ分かるのだ。

記憶を失くしたであろう自分さえ、見過ごせなかったイザマーレの思いを…



 

自分を見つめるイザマーレの瞳は、いつも誰かを探しているようだった

それが、ダイヤなのだと思い込んでいたのだ。

リリエルの中にある、かつての妻の姿だったとは思いもよらなかった……



……!!ああ、やはり……私はまた間違えてしまった

閣下はあの日も、私の部屋にお越しくださったはず。

姿のない部屋を見て、どんなに辛い思いをなさったか……

愚かなリリエルをお許しください!!!!

行かなければ……たとえ、許されなくても。


強い決意の元、リリエルは部屋を出て、ダンケルの元へ向かった。





「…陛下」


「どうした、リリエル」

冷たい微笑を浮かべ、玉座に座るダンケル


「……ダイヤ様がいらしているようですね。

私は、そろそろお暇させていただきます」


「ほお?人間のお前が、魔宮殿を出てどこへ行くというのだ?

イザマーレの髪から降りた今、この魔界を自由に歩き回れると思ったか?」

表情を変えず、突き放すダンケル。


だが……リリエルは微笑みを絶やさない。


「ご心配なく。確かにあの日、

私は髪から降ろしていただきたいと願い出ました。」


「……」




 

「ですが、応じてはいただけないとお返事をもらっております。

イザマーレ閣下は、私との約束を違えるような方ではありません。」

ダンケルから決して目を反らさず、にっこりと言い放つ。


「……大層な自信だな。相手はお前を裏切り、

新たな相手と契約までしているというのに」

さらにダンケルは意地悪そうにリリエルを追い詰めようとする。


「……ダイヤ様を髪に乗せて差し上げたいと願い出たのは私です。

その程度の事を、裏切りなどと思うわけがありません。それよりも、陛下。

貴方こそ、また同じ過ちを繰り返すおつもりですか?

どれだけあの方を、孤独に陥れたら気が済むのですか」


「!」


リリエルはいつのまにか、ダンケルを強く睨んでいた。


「この世の安泰が、誰のおかげだったのか…忘れたとは言わせませんよ。

それとも、私が今ここで怒り狂って、閣下を暴走させましょうか?

止められるのですか?あの方の魔力を……」


「わっ、私を脅すのはやめろ!

私はただ、お前たちがギクシャクしてるようだから

間に入ってどうにか治めてやろうと……」





…………


リリエルの覚醒を確信したウエスターレンは、ほくそ笑んでいた


ダンケルを睨みつけ、叱り飛ばすリリエルは

かつての妻、そのものだった



 

ダイヤの言い放った言葉で、リリエルを悲しませていたのかと

多少気にしていたイザマーレだが、

相変わらず、自身の事で見境をなくすリリエルの様子に

微笑みを浮かべ、見守っていた


「クククッ、あの様子なら、間もなくだな♪

一刻も早く会いたいだろう?俺が迎えに行ってやる。

その間に、泣き顔を何とかして、カッコいい王子の姿で迎えてやれ。

分かったな?」


「///分かった…ウエスターレン。よろしく頼む」


「これから、泣きたい時は俺の所に来い。姫君の前でも泣き虫のままでは

見限られても知らないからな♪」

「////////…ああ……」

もう一度、固く抱きしめ合う2魔





………


「途中からは、楽しんでらっしゃいますよね?

でなければ、ダイヤ様を匿ったりなどなさらないはず。

赤子を泣き止ませたいのなら、放置するべきです。

ご自分を頼るダイヤ様が、さぞ可愛らしいのでしょうね?」

リリエルはダンケルに近づき、にっこりと笑顔で言い放つ。


「というわけで、失礼させていただきます。

少しの間でしたが、お世話になりました」

お辞儀をして出ていくリリエル。




 

魔宮殿の扉を開けると、そこにウエスターレンが立っていた。


「ウエスターレン長官!」


「リリエル、待っていたぞ。一刻も早く、イザマーレの元に行ってやれ」

そう言って、瞬間移動させてくれた。


「わぁ♪ありがとうございます!長官、あの……閣下のご様子は……?」


「…リリエル、頼む。何があってもあいつを孤独にさせないでくれ。

俺もお前を守るから……」


迷いもなく頷くリリエルを、心の底から誇りに思うウエスターレン


…………


リリエルが去っていった後、ダンケルはため息を付いて項垂れていた。

(…相変わらず、恐い女だ。昔から苦手なんだよ!全く……

イザマーレも趣味が悪い!ダイヤの方がよっぽど可愛いぞ……)


その時、ベルデがダンケルの元に現れた。

王室の中に生じた強い波動が気になったのだ。


「ダンケル…何してるの?リリエルちゃん怒らせて…いい加減にしてくれよ…

ここ数年来なかったほどの強い波動を感じたから、何かと思ったら……

彼女怒らせたらイザマーレが理性失って大暴れだよ?

誰も止められないよ?やり過ぎだよ!」

嗜めるようにダンケルに言った


「おい、強い波動って……あいつまだ、人間だよな?」

「…命拾いしたね、ダンケル。

今、リリエルちゃんが悪魔だったら、瞬殺されてる(苦笑)」


「…まぁ私にも失敗はある…そう責めるな!」

ダンケルも目を細めて呟いた…



 

…………

その頃リリエルとウエスターレンはイザマーレの屋敷に到着した

「イザマーレ」

ウエスターレンが声を掛け、リリエルを部屋に入れた。


そのまま扉を閉めて、ウエスターレンは再び魔宮殿へ向かった



「閣下!」

リリエルはイザマーレに駆け寄り、抱きついた……






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