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花の調教


とてつもなく広い部屋…王室


ダンケルが玉座に座り、

イザマーレと裕子が話をして笑い声が聞こえる

リリエルの声もするが見当たらない…


『あれ?リリエル様は?』

ダイヤの声に一斉に悪魔達が振り向く…


裕子とイザマーレが左右に分かれ、ダンケルの姿が見えた。


ダンケルの姿にダイヤは固まって声も出なかった。


『あら♪ダイヤ様!』

リリエルがニコニコして微笑む。

ダンケルの膝に座り腕を首に回している。


ダイヤは唖然として立ち尽くす…


『どうしたのだ?ダイヤ、どうかしたのか?』

ダンケルがリリエルの髪を優しく撫でながら微笑み

ダイヤを睨んでいる


『…あの…一体この状況って…』


ダイヤが言うとせせら笑うダンケルとイザマーレ達…


『判らないのか?』

イザマーレもニヤニヤしている…

全く状況が掴めずにいると…


『お前みたいな甘ったれはもう面倒なんだよ』

ダンケルが冷徹に言い放つ。その言葉に笑いが起こる…

『え…?陛下…め、面倒って…あ、あの…』

言葉が続かない



 

『私の事を崇拝する下僕などわんさかいる…

お前みたいな甘ったれの面倒な奴はもう要らん』


『…本気で言ってるの?』

ダイヤは呟くように言った


『ダイヤ様♪そろそろ、

お子様からお嬢ちゃんくらいになったかしら?

大切なものを失ってから気づいても遅いのよ♪ねぇ~陛下♪』


リリエルの話をダンケルはニコニコ頷き、聞いている。


続いて裕子が…


『なっちゃん…もう手遅れだわ。

リリエル様や閣下、陛下に甘えすぎたね…

残念だけどもう遅いわ…お后お疲れ~!』


裕子もダイヤを見て笑った


『…陛下…あの…』


『もう陛下に気安く声を掛けるな!ダイヤ』


イザマーレにも一喝され言葉を完全に失った

その後も悪魔達にたっぷりといじられ、

震えが止まらなくなっていた…


『もう…全て遅いわ!陛下(私)の后お疲れ~♪』


全員に言われた…



ハッとしてダイヤは泣きながら目を覚ました。

尋常じゃない冷や汗…

辺りを見渡してやっと夢だった事に気が付くが

なかなか起き上がる事すら出来なかった。


あまりにもリアル過ぎて…


何とかその日は昼で仕事も終わり、ダイヤは魔宮殿に帰った。


戻るやいなや使用魔達がザワついている。

珍しい事もあるものだとダイヤは横目で見ながら王室に向かう。




 

「ダイヤ様!今は王室に行かれない方が…」


使用魔が焦ってダイヤの腕を掴んで言ってきたのだ


「え???何かあったの?」


首を傾げて聞くダイヤに、

使用魔も何と言ったら良いのか迷っている様子だった


「あの…陛下の元に…リリエル様が…いらっしゃって…

その…陛下に…閣下も長官もお怒りで…」


「???リリエル様が?陛下に??良く分からないけど…

帰ってきたから挨拶はしないとね♪

ヤバそうだったら部屋に戻るから大丈夫よ」


ニコニコしながら王室に向かうダイヤ


使用魔は止めるが、ダイヤも意地になり、

笑いながら走って王室に行った…

勢いよく扉を開けて入るダイヤ。


使用魔は止められず扉の前で頭を抱える…


「陛下~戻りまし…た…」


ダイヤの目の前に広がる光景…

今朝、夢でみた光景と同じだった…。


ダンケルの膝に座ってニコニコするリリエル…


ただ違っていたのは…

ダンケルが何とも言えず、困り果てている顔…


イザマーレとウエスターレンが恐ろしい程の

怒りのオーラを出している事だった


「あら、ダイヤ様。おかえりなさい♪」

リリエルは振り返り、静かに微笑んでいる



 

「ねえ、陛下♪私の髪を撫でてくださらない?

ダイヤ様の片割れなんですから。お願い♪」


リリエルは憎らしい程に可愛らしい表情で、

首を傾げてダンケルを見つめる


ダンケルは内心、困っていたが、

言われる通り、リリエルの髪を撫でる


いつもイザマーレに撫でられるリリエルの髪…

驚くほどの艶やかさ、美しさに、

ダンケルも思わず見惚れる


「……!」


あまりの事に、固まり愕然とするダイヤ

悔しさに、闇のオーラが漂い始めていた


ダイヤの様子を横目で確認しながら、

リリエルはダンケルに話しかける


「ねえ、陛下。私は何度も命を奪われ、身体さえ失い続け

何とか生まれ変わっただけの、とるに足らない存在ですわね。

どう生まれたのか、など言われたら、何も言えなくなるのは

私の方ですよね。そんな私の事を、お許しくださいますか?」


「……!当然だろ!お前がいなければ、誰がイザマーレを……

馬鹿な事を言うな!……ていうか、そろそろ降りろ!」


焦ってムキになりながらも、断言するダンケル


リリエルはようやく、ご満悦な様子でダンケルの膝から降り

ダイヤに近寄る


涙を流し、俯くダイヤの顎に手を添え、

見つめるリリエルは笑顔ではなかった



 

「お分かりになったかしら?

どんなに嫌っている相手でも、煙たがってる相手でも

髪を撫でる事くらい、平気で出来るものなのよ。


そして…

『純血』やら『厄介者』やら…

あと、『出戻り』もあったかしら?そんな事に拘るのは

低級悪魔や天界の者にさせておけばいいの


陛下も……そして閣下も、当たり前の事をお伝えしただけ。


それを、愛などと勘違いなさるとは……」


「……!」


ダイヤは震えながら、

リリエルの視線から目を反らせずにいる


「そろそろ、お子様は卒業しないとね♪

ダイヤ様は、私の大切な結晶なんだから。

そして、一番大切なものを

誤った心で見失ってはいけないわ

何もかも、奪われてからでは遅いのよ♪」


夢と同じ言葉を伝え、にっこりと微笑むリリエル




 

ダイヤはこの状況を体験してから

自ら犯していた過ちを

封印することを自分自身で心の底から誓い…

ダンケルの指導の元で訓練して怪我をしても、

全て自分自身の魔力で治した


リリエルの視線を思い出し、

魔物の攻撃にも反撃し、集中力を高めて行った。

ダンケルからの最終チェックの際も全てクリアし、

やっと訓練を終える事が出来た…


その代わり…ダイヤは…


変に甘えてはならないと思いが強くなりすぎ…

数ヶ月はダンケルからの夜の営みは断り続け、

寝る時さえもダイヤ自身の部屋で1魔で寝るようになっていた。


時にはダンケルが我慢出来ず、

ダイヤの部屋に迎えに行くようになり

プライベートルームでダイヤと一緒に寝るようになるのは

半年経ってからだった。





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