ちょうどその頃、
ウエスターレンはプエブロドラドの警備室で
セリーヌと打ち合わせをしていた。
「事件の時は、お陰様で、陛下も王室に詰めてくれていたから
助かったわ(笑)ありがとうございます」
彼女は王室の専属警備隊のリーダーだ。
「すべてはイザマーレ閣下の判断になるけど…
リリエルちゃんとの時間が終わって、扉が開いたら直ぐにでも
正式に依頼することになると思うわ」
「そうだな。承知した。ちょうど今朝、扉が開いて
日常に戻ったところだ。」
「あら♪…でも、良いじゃない。たまには3魔でゆっくりと
地方行脚してらっしゃいよ♪」
「…どうだろうな。天界と触れる可能性がある以上
リリエルを連れて行く事は出来ないかもな。
そうだ、ちょうど今、レストランに居るぞ。会っていくか?」
「そうね。ご挨拶だけしていこうかな…」
セリーヌを連れて、プエブロドラド内を歩いていると
リリエルの事を心配していたLily‘sのメンバーが駆けつけてくる
「長官、あの後リリエルちゃん大丈夫だったの?」
「しばらく姿見てないから心配だよ💦」
「リリエルなら大丈夫だ。しばらくイザマーレと扉を消していたが、
今日はオルドのレストランに来ている。
ラァードル達も来ている筈だから、行ってみるか?」
「レストランにいるの?!是非行きたいです!
でも、なぜレストランに?」
ウエスターレンと一緒にレストランに向かいながら
矢継ぎ早に質問する彼女たち
「少し前にスプネリアが世話になったからって、パンケーキを俺たちに
ご馳走してくれてな。それでいろいろなレシピを考えたいって事でな」
「エェー!?パンケーキ?是非食べたーい!!」
きゃあきゃあ言いながらレストランに着くと、
ほんのり甘い香りが漂ってくる
中に入ると、丁度いろいろなパンケーキの試作品が
沢山出来上がったところだった
「あら、皆様いらっしゃい(*^^*)
ちょうど良かった、是非ご賞味してくださいな♪」
「リリエルちゃん!!…良かった~元気そうで。心配したよ~💦」
ホッとした途端、食事系からスイーツまで
山の様に置かれたテーブルの中に、
構成員の顔を模したネコ型パンケーキを見つけて、
さらに盛り上がる
「ねえ、スプネリアちゃん。確か殿下とは
人間界で知り合ったんだよね?
その頃の殿下ってどうだったの?
蛍の事があるからちょっと気になっちゃって……」
パンケーキを試食しながら、バナトラが質問してきた。
人間として生活していた事を
あまり周囲に話していないラァードルの事を思うと、
勝手に話していいものか迷うスプネリア。
「スプネリアとは家が近所だったんだけど、
顔合わせると吾輩、こいつの事よくからかってたな」
「そ、そう。私が何かやってると文句というか、憎まれ口というか
何かしら言ってきたね💦」
「へ~なるほど~殿下って、
好きな子をからかっちゃうタイプだったんだ~♪」
「ま、まあ、こいつが自分の事より
他人の事を優先しちゃう奴だから、ほっとけなかったんだ///」
照れながらそう答えるラァードル
その横からウエスターレンが会話に加わる
「封印が解けて魔界に戻り、
最高魔軍のドラマーとして活躍しながらも
ずっとスプネリアの事を気にしてたし、
お前も急に姿を消したラァードルを探して続けてたな。
あの時まで……」
「だから蛍見て不安になったんだね……?」
バナトラは納得した顔で頷いている
「でも今は再会出来て、一緒になれたから幸せだよね?」
にこやかに笑いかけるセリーヌ
「殿下とスプネリアちゃんの生活に興味あるなぁ~」
「(o^o^)o ウンウン♪特に夜の生活にね(*^艸^)クスクスw」
いつの間にか元老院での新婚生活に話がシフトしていき
ニヤニヤし続けている彼女たちに、セリーヌはやや呆れ顔だ
「…////そ、それよりこの前の事件はびっくりしたけど
リリエル様の歌声良かったよね?」
真っ赤になりながらはぐらかし、先日の事件を振り返るスプネリア
そこへ、試作品を作り終えたリリエルがやってきた
「先日は気がついたら知らない場所にいて
びっくりしちゃったよね…皆、大丈夫だった? 」
「リリエルちゃん、1魔で背負い込み過ぎだよ!
私たちにも手伝わせてよ!」
「ホントだよ! 一緒に戦う事くらいなんともないから!」
リリエルの事が心配で、口々に言い合う
「天界相手に、なりふり構ってられなくて
皆を守りきれる自信もなかったから
逃げてもらったの。心配かけてごめんね」
「…天界相手だと、確かに石だけじゃ太刀打ち出来なかったかも💦」
穏やかに語るリリエルの説明を聞いて、
少し青ざめた顔で呟くプルーニャ
「……でも、リリエル様が無事で本当に良かった……😢」
「リリエルちゃんが歌っていたあの歌、なんていう曲なの?
素敵な歌で耳に残ってるよ。気に入ったから教えて貰えない?」
「あの歌って、どの歌の事かな……?」
首を傾げているリリエルに、一斉に答えるLily‘s
「ああ、あれかあ……うん
すっごく素敵な曲だよね。私も大好きなの💕だけどね……」
リリエルはチラッとイザマーレを見る
そんなリリエルの様子に、
ウエスターレンがニヤッと笑いながら髪を撫でる
「あれは、イザマーレとリリエルにとって特別な曲だからな
やはり、生半可な気持ちで歌うのは危険が伴う。
お前たち信者を信用してない訳ではないが……
俺も参加して歌った曲が他にもある。
覚える気があるなら教えてやるぞ♪」
ギターを取り出し弾き始める
「お前たちに、リリエルの役に立ちたいという思いがあるなら、
この歌が1番だと思うぞ」
「あら?懐かしいですわね💕」
「そうだな(笑)」
ウエスターレンのギターに合わせ
軽く歌声を乗せるイザマーレとリリエル
途端に感情が大きく揺り動かされ、聴き惚れる
「これなら、お前たちでも歌える筈だ」
ニカッと八重歯を見せ笑顔で告げるウエスターレン
「はぁ~この歌もすごくいい💕長官、教えて貰えますか?」
「合唱なんて学校卒業以来してないからなあ~」
そう言いながら歌ってみるが、
声が出ない、裏返ると散々な結果に……
そこにバサラ、セルダ、ベルデの3魔と
巡回が終わり甘いパンケーキの香りに誘われて
ダイヤも姿を見せた
「なんかパンケーキの試食してるって聞いてきたんだけど……💦」
「ちょっと上手とは言い難い歌声が外まで聞こえてきたじゃんね(^-^;」
控えめながらも辛辣な酷評に、多少なりにショックを受けつつ、
ダイヤにも合唱団結成の経緯を話し、仲間に引き入れた
バサラ達からダメ出しを食らったバナトラとプルーニャは2魔に詰め寄る
「「じゃあ歌唱指導してよ!」」
「「は、はいぃー!か、畏まりました💦」」
彼女たちの迫力に押されながら、個人レッスンの約束を快諾する
喧騒を余所に、ベルデの持って来た資料に
目を通しているイザマーレ
「…ふふ。合唱隊の誕生ですね♪凄いなあ…」
彼女たちのやり取りを遠巻きに眺めながら
イザマーレに話しかけるセリーヌ
「…結界の件は承知している。ベルデの調査結果を踏まえて
我々も動く予定だ。その間、陛下の事はお前に任せたぞ、セリーヌ」
「セリーヌ様…今回は、私のせいでご迷惑をおかけしています
申し訳ありません…」
イザマーレの隣ですまなそうに頭を下げるリリエル
「リリエル。お前が謝る事ではない。吾輩に任せておけ。良いな?」
そう言って、リリエルの髪を優しく撫でるイザマーレ
「そうよ、リリエルちゃん…でも、そうね。
後の事は、私たちに任せてちょうだいね。
イザマーレ閣下、それでは私はこれで…。
詳細は改めて連絡致しますね。」
セリーヌはにっこりと笑いながら頭を下げ、魔法陣で消えて行く
「…やれやれ、仕方ないな。リリエル、この次の地方公務は
お前を連れて行けない。良い子で我慢できるか?」
「…も、もう…///お留守番くらい、できますぅ…」
恥ずかしそうに俯いて、口を尖らせるリリエル
抱き寄せて、すぐにでも屋敷に連れて行くか…そう思った矢先
2魔の傍らで、全員で練習するのは何処でするか
相談し合うLily‘s
すると、少し涙目のオルドから提案された
「それなら皆様の練習場所として、
是非このレストランをお使い下さい」
「ありがとうございます💦 でもご迷惑では?」
驚いて恐縮しながら問いかけるバナトラ
「いえいえ、ランチタイムを過ぎると暇になりますし、
久しぶりにイザマーレ様達の美しい旋律を聴かせて貰えました。
なにより皆様の熱いお気持ちに、このオルドは感激しております。
どうぞ、このレストランを練習場所としてお使い下さい。
よろしいですよね?イザマーレ様」
柔和に微笑みながら、遠くを見つめるオルド
(ランソフ。お前にも聴かせてやりたかったな…御三方の旋律を…)
「吾輩に異論は無いな。せっかくのオルドからの好意の提供だからな
遠慮なく使わせて貰えばどうだ?」
「そうだな。ここなら皆集まりやすいからな。俺も指導にすぐ来れるし」
イザマーレとウエスターレンは快諾する。
「オルド先生、皆様の為にありがとうございます♪」
嬉しそうに頭を下げるリリエル
こうして、週1でレストランで練習する事に決まった
「皆様、パンケーキも是非召し上がってくださいね(*^^*)
あ、ダイヤ様はこちらのパンケーキを
召し上がって頂きます( ̄▽ ̄)ニヤ」
リリエルがダイヤの目の前に置かれたのは
青汁入りパンケーキ……
「マジか……💦」
引きつった表情のダイヤ
スプネリアがフレッシュな苺で作ったいちごミルクを
そっとパンケーキの横に置いた……
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