一週間の日々が終わり、次に会える時まで
リリエルがイザマーレを呼ぶ事はほとんどなかった。
どんなに多忙でも、リリエルが呼び出せば
必ず会いに来てくれることは分かっているのだが
副大魔王としての立場をとてもよく理解しているリリエルは
少しの甘えでイザマーレを困らせるより
きちんと会えるその時に、笑顔で過ごしたい、そう思っていた
いつも寂しさを堪えて部屋に入るとダイヤが現れ
ウエスターレンから託されたイザマーレのスケジュール表を
渡してくれていたのだが、
その日はなぜか、いつまで経ってもダイヤが現れず
代わりにウエスターレンからDMが届いた。
そして、魔界で起きたすべての事を把握した。
「……」
あまりの事に、しばらく立ち尽くしていた
怒りで、リリエルの髪が揺れる
その時、部屋の空気が揺れた
ハッとして振り返ると、ウエスターレンがいた。
「長官…閣下のご様子は……?」
「次にお前に会える事だけを励みに、
ものすごい勢いで職務をこなしている。
いかに副大魔王といえども、体力には限度があるからな
先日のTV出演の時は、相当限界だったんだろうな」
「……っ」
「でもまあ、いつまでもクヨクヨするような奴じゃない。
こんな事は、あいつにとっては日常茶飯事だからな。
すぐに切り替えて立ち上がる。それもあいつの強さだな」
ウエスターレンの言葉に、リリエルもようやく笑顔になる
「お前にとっても、良かったじゃないか。
王子はようやく、お前だけのものになったんだからな♪」
「…長官ったら…私はそんな事、一度も望んでないですよ」
リリエルは意外にも少し寂しそうな顔をする
不思議に思うウエスターレンだが、この時はやり過ごしてしまった
「ところでリリエル。今回の仕打ちに対して、お前はどうする?
許せるのか?」
「ふふっ…お分かりでしょ?私のことなんか…」
「そうこなくっちゃな♪早速行こうぜ!
まずはすっとぼけたダイヤの奴から、表敬訪問とするか♪」
笑顔で頷くリリエルを連れて、魔界に瞬間移動した
こうして魔宮殿に訪れた後、
ダイヤにとって最後のチャンスをひねり出し
ダンケルを叱り飛ばし、ベルデを論破するリリエルの姿に
俺は心の底から喝采を贈っていた
最上階でダイヤと向き合いながら、
実はしっかりとその様子を透視していたイザマーレも
この時のリリエルの言葉を、胸に刻んでいることだろう
リリエルに促され、ダイヤの元に向かったが、
相変わらず、吾輩の言葉にはひとつも耳を貸さず
ただペラペラと憎まれ口を叩いてくる
この時、確認できた事は「もう戻らない」ということ。
それだけだった。
それでは、いくらなんでも
陛下の前で叱り飛ばすリリエルを、納得させられないだろう
この無意味な時間、吾輩は正直、リリエルの事しか見ていなかった
そして、リリエルの異変を察知した瞬間、
ヨッツンハイムから抜け出して以来の魔力を
解き放ってしまった
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