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雪の奇蹟


ドアを開けた瞬間、そこにウエスターレンが待ち構えていた


「よお♪持ち場をこっそりと抜け出してデートか。

どこへ行くつもりだ?」

紫煙を燻らせながら、ニヤッと笑いかける


「ウエスターレン。奇遇だな。姫君からの熱いラブコールに

応えてやらねばならんのだ。ちょうどいい。お前も来い♪」


イザマーレもウエスターレンと目配せしながら

ニコニコと微笑む


ウエスターレンも連れ立って共に理事長室へ向かう


「あれ、奇遇だね。」

理事長室の廊下の前で、魔法陣が現れ、ベルデが姿を見せた


「ベルデ先生♪こんにちは~(*^▽^*)」

リリエルが笑顔で挨拶する


「リリエル先生、こんにちは♪ 急な雪だからね。

オーラと結界の様子を確認しに来たんだよ」


「そうでしたか。いつもありがとうございます♪」


「お~い、ベルデ。お待たせ。

どうも予定では、後2時間くらいは降り続けると思うんだ。

すまないね。おや!サムちゃんたちも一緒か。」

そう言いながら駆けつけたのはラァードル。


「ラァードル先生、素敵な雪景色、ありがとうございます♪」

ニコニコお礼を言っている間、イザマーレが理事長室をノックし、

中に入って行った


…いつもスプネリアとワチャコラし合うラァードルも、

実は副担任だったのだ



 

イザマーレはダンケルに向かい、頭を下げる

「陛下、失礼します。急に冷えましたので、

なにか熱い飲み物でもお出しするべきかと、

リリエルが気にしておりまして。」


(…♪)

髪に乗ったまま、聞いていたリリエルはますますご機嫌になる


「イザマーレ♪よく来たな!!

どんなに凍えるような世界でも、

お前さえいれば光に満ちて、暖かい。さあ、おいで。

リリエル、気にするな。今日は私がお前らに振舞ってやるぞ♪」


突然のイザマーレの表敬訪問と、滅多にないゲストの多さに、

ダンケルも久しぶりにウキウキしていた


ダンケルが魔宮殿にいる使用魔に命じて、紅茶を用意している時


「いや~、今日は寒いねえ。一番暖房の利く理事長室で

おやつ貰っちゃおうっと…って、あれ?な~んだ、皆、お揃いで!」

「おいバサラ!抜け駆けすんなよ、俺も行く…ってあれ?」


「…バサラ。いい加減、私の部屋を

都合の良いコンビニ代わりに使うのはよせ(笑)

だが、まあいい。君らも座り給え。」


連れ立って現れたバサラとセルダも、ダンケルを中心に腰かける


淹れたての紅茶の香りを嗜みながら、優雅なお茶会となった


しばらくして、イザマーレが口を開く

「いい加減、隠れてないで姿を見せろ。ミカエル」


「!!!」



 

イザマーレの言霊で、消えていた扉が開き、

中から気まずそうな顔を浮かべたミカエルが現れた


そんなミカエルに、微笑みながら

静かに語りかけるイザマーレ


「今日は、地平線まで消えるような雪だ。

誰もお前のオーラに惑わされる者などいない。こんな時くらい、

世界の歪みなど気にせず、共に過ごそうではないか」


「イザマーレ。お前がそう言ってくれるなら…

おや?髪に座る素敵なお嬢様は…」

イザマーレに促され、テーブルに着いたミカエルは

リリエルに向かい、にこやかに微笑む


「クスクス♪ ミカエル様、こんにちは。

いつもあまりご挨拶できなくて、ごめんなさい。」

リリエルは微笑みながら、ミカエルに挨拶する


「リリエルは、吾輩の妻だ。会ったことはあるだろ?ミカエル」


「そうだね。いつもダンケルと、イザマーレの取り合いっこをする

可愛らしい姫君なのは知ってるよ♪今のところ、圧勝のようだね。

リリエルちゃん♪」


「ふふっ はい♪ミカエル様の大事な理事長を

副理事長に取られないよう、私も協力しますよ♪」


ミカエルとやり取りするリリエルを眺めながら、

微笑むイザマーレ


「リリエル、よく言った!俺もささやかだが、

援護射撃させてもらおう♪」


そんなイザマーレの髪を撫でながら、

ウエスターレンが八重歯を見せて笑う


「…あれ、…イザマーレ様…雪、凄い積もってます…

今日はこのまま、皆さんと過ごしませんか?

雪だるま作りたーい♪♪」


深々と降り積もる雪の中、

天真爛漫なリリエルの声がこだまする




 

イザマーレは、すべて理解していた


ミカエルに分け与えることで

失ったように思える魂の一部は

何も示し合わすことなくとも、一同に集まれるほどの

絆を誇る構成員と、彼らを我が子のように慈しむダンケル


そして、リリエルと出会う事で知る事となった感情により

失うどころか、足りないものなど何一つないという事に


「イザマーレ様、お慕いしています。ただ眺めていた時も

出会ってから今日までずっと、『好き』の気持ちは増えております。

あの時イザマーレ様は、その事を私に教えてくださった。

それを、『愛』と呼ぶのだと…」


「そうだな。…さて。そうは言っても、あまり長居は陛下に失礼だ。

我々はこの辺で失礼しよう。リリエル、雪だるまは、また今度な♪」


ダンケルに一礼をして、ウエスターレンと共に立ち去る。


その日、屋敷のプライベートルームの扉が消え

解き放たれた炎のオーラで、

積もった雪が解けた事は言うまでもない…





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