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いつかの約束


魔界における様々な柵から解放され

旅を満喫中のイザマーレたち


コテージを運営するコンドミニアムで温泉に入り、

コインランドリーで衣服を洗濯している間、ラウンジで食事をしたり

湖畔まで散歩をしたり…


その間、リリエルはずっと、ある思いを抱いては、やり過ごしていた



(…悪魔なんだから、いくらなんでも無理だよね……)


コンドミニアムの敷地内には、小さなチャペルがあった


綺麗な青一色のステンドグラスが、

その地を訪れる恋人たちを祝福する

幻想的なモニュメントになっていた




 

(それに…)


今回、イザマーレたちと訪れたこの地は、

リリエルがかつて人間だった頃

家族で何度も訪れた、思い出の土地だった


人間界で結ばれた相手とも、恋人時代に訪れ

『この場所で結婚式をあげたい』…そんな思いを抱いたものだ


結果としてその夢は叶わず、都内のホテルで

ありきたりの式しか行わなかったのだが…


「リリエル?どうかしたか?」


いつも優しく髪を撫でて、寄り添ってくれる愛しい悪魔

繋いだ手のぬくもりに、リリエルは笑顔で見つめ返す


「閣下…あの時、仰ってくださった事、本当に嬉しかった…」


「ん?…ああ、…嘘ではないぞ。

何なら今ここで、もう一度言おうか?」


リリエルの心を読み取ったイザマーレは、優しく抱きしめる


「リリエルを心から愛し、永遠に寄り添う事を吾輩自身に誓う

ウエスターレンと共に、必ず守り抜く。

リリエル。お前はいつも、どんな時も吾輩の傍に居ろ。良いな?」


「!……///////」


途端にリリエルの瞳に涙が浮かぶ


「…返事は?泣き虫さん♪」

イザマーレは優しい目でリリエルを見つめる


「……っ…はい。私も…私自身に誓います

どんな時も、永遠に、閣下のお傍に…心から、閣下への愛を誓います…」


リリエルも濡れた瞳のまま、イザマーレを見つめ返す


そこへ…



 

「え~うおっほん。誓いの詞を交わしたか?

そしたら、さっさと誓いのキスを…どうぞ♪」


すぐ傍で見届けていたウエスターレンが、

わざとらしく咳ばらいをしながら促す


「観客は俺様だけだが、文句はないよな?

お前らのキューピットになってやる。有り難く思えよ♪」


やけにイケメンで、足の長いキューピットに促され

イザマーレは微笑みながらリリエルの顎に手を添え、口唇を重ねた…


結婚式の真似事を済ませた3魔


だからといって、特別に燃え上がるものがあるわけでもなく

むしろいつもと同じように(?)穏やかな時間を楽しんでいた


「しかし…柵から解放される事が、こんなにも嬉しいとはな。」


己の持つ多くの肩書。

それらを一旦隅に追いやって、自由を満喫するイザマーレ


「あ~、もう俺、このままここに居てもいいや(笑) 

それくらい、俺にとっても贅沢な時間だったな。

お前のそんな柔らかい笑顔を、

特等席で眺めていられるんだもんな♪」


悪魔でも、副大魔王でも何でもなく、

ただ出会った者同士だったとしても

間違いなくお互いを求め、愛するに違いない。

そう確信できたウエスターレン。


イザマーレを抱き寄せて髪を撫でる


「…ところで、あの時出現して消えてしまった階段と、扉ですが…」


そんなイザマーレたちにお茶を淹れながら、リリエルが問いかける


「ん?気になるか?せっかくなので、

魔界の丸太小屋と半永久的に繋ぐことにした。

いつでも好きな時に来れるようにな♪」


リリエルにとっての思い出の場所は、

イザマーレたちも相当お気に召したようである…




Fin.



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