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たいせつなもの


…………


花のリリからLilyelに化身して一年が過ぎた頃

イザマーレは彼女を連れ、夜の庭園を散歩していた


夜空には無数に煌めく星…

心地よい風が肌を吹き抜ける


屋敷に連れて行かれてから、外を出歩く事がなかったLilyel

見るもの、感じるもの全てが新鮮で、胸をときめかす


「!!…イザマーレ様…?」

ふいに優しく抱きしめられ、首を傾げるLilyel


「お前は吾輩の大切な宝物だ。お前を愛しく思うこの気持ちを

決して見失わず、永遠に保管できる器があれば良いのにな……」

優しく髪を撫で、見つめながら、何かを躊躇うイザマーレ


Lilyelは見つめ返し、イザマーレの胸に手を添えて微笑む

「私はいつも、ここに居ます。誰よりも大きくて暖かい…

イザマーレ様の心の中に…お邪魔じゃなければ良いのですが…」


恥ずかしそうに俯くLilyelに、イザマーレは堪らず強く抱き締める

「…まったく、お前と言う奴は…とっくの昔から吾輩の心を

満たしているではないか…」


ついに決断し、Lilyelの頬に手を添え、真っ直ぐな目で見つめる


「夫婦になろう、Lilyel。妻として、これからも

吾輩の心に笑顔の花を咲かせてくれ…良いな…」


「…はい…イザマーレ様…」

涙を浮かべるLilyelに微笑み、ゆっくりと口唇を重ねた…

…………




 

…リリエルちゃん、俺はね、イザマーレの傍で

朗らかに微笑んでいる君が好きなんだ…


大切なことに、ずっと気づかずにいた

あの時、ミカエル様の中に、たしかに貴方が居た事を…


大切な宝物は、決して忘れることなく

いつも心の中に咲かせて下さい


またいつか会えたなら、

遠く離れている貴方にも、ありがとうとお伝えしたい

私はいつもここに居ます


………


ミカエルに残るイザマーレの心境を想い、涙を堪えるリリエル

静かに瞳を閉じて、深く息を吐く


「…リリエル。花の種を……」


「……はい。閣下、よろしくお願いします」


ウエスターレンに促され、種を取り出し

再びイザマーレと目を合わせ、手を取り合う 

そしてまた歌い始める



 
 
 

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