「お2魔様とも楽しそうですね…
私は別に花に戻っても構わないので…この辺で失礼します」
リリエルは冷めた目で見ながら言った
「「花に戻るって…許さん!」」
ダイヤとイザマーレが声を揃えて言うと、
益々冷めた目で、リリエルはイザマーレを見る。
そして何も言わず、立ち去るリリエル
驚いたダイヤは、慌ててリリエルを追いかけて探すが
どんなに気配を探しても、見つける事ができなかった
「……!!」
愕然とするダイヤに呆れ顔のウエスターレン
「無駄だ。リリエルを本気で怒らせやがって。
お前、半分は面白がって、イザマーレに怒鳴られるのを
喜んでただけだろ。それで満足か?」
「!!どうしよう…リリエル様💦」
「…どうもならんだろう。リリエルの怒りを鎮められるのも
やはりイザマーレだけだからな♪」
ニヤッと八重歯を覗かせ、立ち去るウエスターレン
ダイヤと言い合いになりながらも、
イザマーレはずっとリリエルの心を聞き続けていた。
だが、鍵をかけたリリエルの言葉は何一つ聞こえず、
リリエルから発するオーラがどんどん冷酷になっていくのを
感じ取っていた
姿を消したリリエルが隠れた場所を、静かに見つめながら
そっと結界を施し、イザマーレも姿を消す
数時間後
事の発端となったラオは、テレビ局を後にして、
お決まりのランニングコースを軽快に走っていた
ビルの谷間にある、こじんまりとした公園を通りかかった時
いつもと違う景色に、思わず立ち止まる。
小さな鳥たちが喜び、さえずりながら羽を遊ばせ
木の葉が青々と生い茂っている
何でもないはずの場所が、光に照らされ、輝いている
「……? 海辺の自然豊かな公園なら分かるが…
こんな都会の片隅で…珍しいこともあるもんだな」
訝しげに眺める。不思議に思い首を傾げつつ、走り去る
公園の入り口で、ガードレールに無造作に腰かけ
煙草を燻らせている脚の長い男性が見せた
不敵な笑みに気づくこともなく…
魔界の屋敷では
副大魔王執務室で一魔、仕事を淡々とこなすイザマーレの姿
(閣下、お疲れ様です♪お茶をお持ちしました♪)
いつものリリエルの声が聞こえたと思った途端、
イザマーレの目の前に淹れたてのティーカップが現れる
数秒後、リリエル専用のPCが勝手に起動し
キーボードが音を立て始める
……(笑)
常に仕事も家事も完璧にこなしている彼女の習性で
人間界のどこかに姿を隠しながらも、つい考えてしまうのだろう
(お前は副大魔王妃だからな。思った事が
そのまま魔力になると教えたよな…?)
大量の職務を捌きながら、静かに微笑むイザマーレ
やがて、人間界も魔界も、同じように夜が訪れる。
そう。生出演する「水曜日」は、時空の流れが異なる二つの世界の
時間軸が一時的に揃う日なのだ。
主の居ないはずのキッチンから、美味しそうな香りが漂い始める
イザマーレはその日の仕事を終わらせ、リビングに向かう
食卓に着いた瞬間、目の前に食事が出てくる
季節の旬に合わせた栄養バランス満点の
いつものリリエルの手料理だ
「…いただきます」
彼女を保護するために人間界に留まらせたウエスターレンも居ない
一魔の食卓は少しだけ寂しさもあるが、
リリエルの思ったとおりの行動に、心が軽くなるイザマーレ
もちろん、食後のお茶もいつもの通り差し出され、
食べ終わった食器まで、綺麗に洗われていく
あまりの事に吹き出しそうになりながら
イザマーレは瞬間移動する
人間界の、リリエルが隠れたつもりでいる公園に…
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