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ゴールデンウィーク


5月の初旬…

世の中が休みになる期間が、果たして公休と言えるのか

甚だ疑問に思いつつ、なるべく週末を含める形で

なんとか5日間の休みをもぎ取った副理事長


当然、校長のリリエルのスケジュール調整は、

ウエスターレンが抜かりなく行っていた


その初日


イザマーレはオルドに特別注文を出した

事情を察したランソフは、満面の笑みで衣装を仕立て始めた

5日後に向けて…


その日の朝、いつものように

イザマーレの腕の中で目を覚ましたリリエル


「…イザマーレ様…」

「…おはよう、リリエル。よく眠れたか?」

そっとキスを交わす


「久しぶりの休みだ。たまには出かけようか。」

「えっ…」


イザマーレの言葉に、驚いたリリエルは飛び起きる

そんなリリエルに笑いを堪え、抱き寄せる


「お前、この屋敷と学園以外、まだよく知らないだろ?

吾輩が魔界中を案内してやる。良いな…」


そう言って、深く口づける。

たちまち、リリエルのお出かけスタイルが完成した


朝食後、さっそく馬車に乗り込み、出発した


王都、雄大な森に囲まれた文化局、

高級貴族の住む邸宅…


各地でその館の主たちにリリエルを紹介し、挨拶させて回る

最後に元老院を訪れ、副大魔王のお膝元、枢密院に行き

悪魔軍666師団のスタッフ魔たちにも紹介した




 

そして…


リリエルのたっての希望から、元老院の裏庭に再び訪れた

かつて自分が生まれ育った場所にもう一度訪れ、

懐かしさがこみ上げる


「イザマーレ様、今日はたくさん、いろんな所や大事な方々を

紹介してくださって、本当にありがとうございました。

私は本当に何も知らなくて…

こんなに素敵な世界に生まれてこれて、本当に嬉しいです。」


見るもの聞くもの、すべてが新鮮で、

楽しそうに微笑むリリエル


「…お前が望むなら、これからもずっと、

いろんな事を教えてやるぞ」

穏やかに見つめるイザマーレ


「////…ありがとうございます。

イザマーレ様、本当に素敵な王子様です。

とても優しくしていただいて、本当に本当に、大好きです。

何もお返しできなくて、申し訳ありません…」


恥ずかしそうに俯くリリエルを、イザマーレは抱きしめた


「お前を初めて抱きしめたのは、この場所だったな。

あの日から吾輩の気持ちは少しも変わってない。

それどころか、気持ちが増えている。

こんな気持ちをお前は吾輩に教えてくれた。

それだけで十分だぞ。リリエル」


「…!……///////」


イザマーレの言葉に驚き、

真っ赤になって見上げるリリエル


「お互いに大好きな者同士なら、夫婦と呼ぶのだ。

リリエル、お前は吾輩の事が好きか?」


「…!…はい、大好きです。」


即答するリリエルに微笑むイザマーレ


「吾輩も大好きだ。それなら、夫婦になれるな?」


「ふうふ…?なにか、違うのですか?」


「いや、何も変わらない。ただ、言い方が変わる。

『好き』から『愛してる』にな♪言ってみろ」




 

「…愛しています。イザマーレ様…」

言った瞬間、胸が高鳴り始め、真っ赤になるリリエル


「吾輩も、愛しているぞ。リリエル…」


リリエルの髪を撫で、口唇を重ね合わす

イザマーレの言葉とぬくもりに、涙が溢れるリリエル


「…愛しています、イザマーレ様…

ずっとお傍に…夫婦でいさせてください」


初めて自分からイザマーレに抱きついたリリエル


そっとリリエルの手を取り、エスコートしながら馬車に乗り

屋敷の中のある部屋に向かった


高級ホテルのスイートルームのような、豪華な部屋の扉を消し

残りの4日間、濃密な時間を過ごした


そして5日間の公休が終わり、

いつもの仕事着に着替えようとしたリリエルに

ランソフがそっと近寄る。


「リリエル様、本日はこちらをお召しくださいませ」


手渡された衣装に驚いた


それは純白のウェディングドレス…

現れたイザマーレも白いタキシード


その姿で揃って理事長室を訪れた


「陛下。この度、リリエルを吾輩の妻として

正式に迎え入れたことをご報告します。

つきましては、全然足りない儀式の時間の代償として、

学園内の扉をいつでも消させていただきますので、

ご了承ください。」


「なんだ、そうだったのか。うむ。良かろう。

おめでとう、イザマーレ。そしてリリエル。

末永く幸せになれよ。」


理事長室で退屈そうな冷笑を浮かべ、承諾するダンケルだった







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事件

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