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サロン開設


「リリエル様。先程ベルデ様がお見えになりまして、

イザマーレ様がリビングに来るようにと仰せです。」


「あ、は~い。かしこまりました。ありがとう、ランソフさん」



学園が休日で、屋敷の中でくつろいでいたリリエルは、

すぐに1階のリビングに降りて行った




 

「やあ、リリエル先生。…ここでは、

リリエルちゃんで良いかな?」


イザマーレと談笑していたベルデは

リリエルを見てにこやかに挨拶をした


「ベルデ先生、こんにちは。どうなさったのですか?」


「リリエル、おいで。約束通り、お前へのプレゼントだ。」


イザマーレは隣にリリエルを座らせ、

カタログを並べて見せた


「…えっ…!これ…」


様々なキッチンのモデルが掲載されたカタログだった


「料理の腕を上げた褒美に、部屋の中にキッチンを作ってやる。

どんなタイプが良いかは、お前に任せる。

設営工事はベルデに頼んだからな」


「!!!わあ♪ありがとうございます…素敵……」


イザマーレの言葉に驚き、カタログを眺め始めたリリエル


リリエルとイザマーレのやり取りを、静かに見つめていたベルデ


「イザマーレに聞いたよ。何やらすごい腕前なんだってね。

是非、僕も味わってみたいな。」


「そ、そんなっ…オルド先生に比べたら、まだまだ素人ですよ。

ちょっとしたお茶やお菓子などを

お部屋で作れたら嬉しいのですが////」


「…ただいま、イザマーレ。

おっ、いよいよ、リリエルの城の完成か?」


その時、ウエスターレンが姿を現した。


学園の休みに関わらず、魔界全体の監視は

24時間年中無休の情報局。

今日もいくつかの雑務をこなし、休憩で戻ってきたのだ。




 

「オルド直伝のリリエルの料理の腕は本物だ。

俺も保証してやる。ただ、

それを楽しめるのが休日だけなのは残念だよな」


「…平日も料理が楽しめるように、学園内で

リリエルちゃん用のキッチンやサロンを

作ってあげたらいいじゃない?」


「…!」


ベルデの提案に、リリエルは驚く


「そうか…お前も、授業の合間だけでなく、

ゆっくり生徒と話が出来る場所が欲しいと言ってたよな。

構わないが、リリエル、負担にならないか?」


「…!!宜しいのですか?嬉しい!!

ありがとうございます(≧∇≦)」


「ふふふ…善は急げだね。早速取り掛かるよ。

まずは、この屋敷の部屋の中からね。

じゃ、ちょっと待っててくれる?」


よっこいしょ、とベルデは立ち上がり

先程からカタログの中で

リリエルが目を一際輝かせていたキッチンを横目に

両手をパンと叩いた。


「…お待たせ、リリエルちゃん。一応、確認してくれるかな?」


「!!?!…は、はい!」


慌てて2階に駆け上がるリリエル。


あっという間に、

プライベートルーム内に小洒落たキッチンが作られていた

独立タイプのL型。冷蔵庫やオーブンレンジ、調理器具の全てが

リリエル1魔で効率よく動けるよう配置されていた


「キャーーー(≧∇≦)素敵です!凄い!ありがとうございます♪」

飛び上がるように喜ぶリリエル



 

後からゆっくり確認しに来たイザマーレは

リリエルの髪を撫で、抱きしめる


「良かったな、リリエル。学園内でも頑張れよ」

「はい!イザマーレ様、ありがとうございます……」


「一通りの調味料なども、揃えてくれたそうだ。

早速お前の手料理を楽しみたかったが…

学園のサロン開設については、陛下の許可もいるのでな。

これからすぐ、王室に行く。お前も一緒に来るか?」


「! よろしいのですか?是非!ご一緒させてください」


ワクワクし始めるリリエルの髪を撫で、

指魔形サイズに小型化させ、イザマーレの髪に座らせた。


「…!イザマーレ様…」

ビックリして見上げるリリエル


「お前専用の特等席な♪」

ニヤッと笑みを浮かべ、瞬間移動した……



 

一瞬で魔宮殿に到着すると、魔法陣が現れ、ベルデも姿を見せた


「お待たせ。じゃあ早速行こうか」


3魔で王室に入っていく


「やあ、イザマーレ。休日なのにどうした?

私と遊んでくれるのかな?」


珍しくウエスターレンを帯同せず訪れたイザマーレに

満面の笑みを浮かべるダンケル


だが、付き添うベルデとリリエルを見て、遠慮なくため息を零す


「陛下、お休みのところ、

急にお伺いしてしまい申し訳ありません。

学園の事で、お伝えしたいことがございまして。」




 

イザマーレの言葉に、さらにダンケルは肩を落とす

「やれやれ、仕事の話か?まあ良い。

お前との時間なら、他を蹴散らしてでも用意するぞ」


「あ、ありがとうございます。」


アワアワし始めるイザマーレを優しく抱きしめながら、

すぐ横にいるリリエルを冷徹に睨み付けるダンケル


イザマーレとダンケルの間を割り込むように

目玉蝙蝠が姿を現した


「…ちっ、暑苦しい御守も一緒か、ウエスターレン…」

一気にシラケて呟くダンケル


「聞こえないな。なんか言ったか?ダンケル。

今すぐイザマーレから離れろ。

そしてこの契約書にサインをするんだ。

5秒で出来るな?分かってんだろうなあ?」


「ふう、やれやれ。こんな事で宮殿を燃やされては困る。

話を聞かせてくれ。」


名残惜しくイザマーレの髪を撫で、玉座に座り直すダンケル




 

……


「…ほう。学園内に、ベルデの文化局と同じような

サロンを作りたいというのか?」


「はい。校長のリリエルが、気を許せる者たちと

交流できる場を設けてやりたいと思います。

よろしいでしょうか。」


「ダンケル。授業を行う教室以外の設備が充実すれば、

学園の人気につながるよ。悪いことじゃないよね?」


イザマーレの言葉に、ベルデが後押しをする。


「一生懸命、頑張ります。ダンケル陛下、お願いします」

リリエルもペコリと頭を下げた




 

「…まあ良いだろう。許可する。」

ダンケルは退屈そうではあるが、即答する


「ありがとうございます。では、早速、設営作業に向かいます。

お休みのところ、お騒がせしました。失礼します」


イザマーレは頭を下げ、すぐさま立ち上がり、

リリエルと共に王室を後にした


「…邪魔したね。僕も失礼するよ」

のんびり立ち上がり、魔法陣でベルデも姿を消した


後に残されたダンケル


「…私の睨み付けに少しも動じず、

そのくせ、面倒な仕事は苦も無く引き受ける。

何なんだ、あの女…」


数か月前、いきなりイザマーレに連れられ

紹介された時には面食らった


鉄壁の絆で結ばれた

ウエスターレンとイザマーレの元に、彗星のごとく現れ

イザマーレの寵愛を一身に受けるリリエルを、

忌々しくも憎からず思うダンケル


(ひょっとすると、ウエスターレンより、

おっかない女かもしれないな…)


大魔王の第六感が、静かに作動し始めた






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