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スターマイン


いよいよ花火大会が始まった。


海から夜空に打ち上がる花火…

菊花火や牡丹花火、八重芯花火などの模様が

暗い夜空を明るくする。


音の大きさに身体の中まで振動し

ダイヤは目を輝かせて夜空を見ていた

ダンケルも彼女の肩を抱きながら見上げていた


人間の時に叶わなかった、

ダンケルと一緒に見る打ち上げ花火…


何万と打ち上げられ、嬉しさで自然に涙が溢れる




 

イザマーレ達も夜空を見上げていた


「そう言えば…ダイヤ様の元彼さん?見て思ったのですが…

私か昔お付き合いしていた方々は皆、

何処かにいなくなってしまいました…

どなたかに処刑されちゃったのかなぁ?」


リリエルが花火を見ながら首を傾げる。


ウエスターレンは笑いを堪えながらビールを飲む…


「え?…ま、まぁ気にするな…リリエル、どんどん飲め〜!」

話を終わらせようと必死になるイザマーレ…




 

そして…裕子とベルデは…

肩を並べ、ベンチに座り花火を見ていた

「…和尚…あの…」

「なんだい?」

ベルデはゆっくり裕子を見た。


裕子は真っ赤になりながらベルデを見つめていた


「なっちゃんが悪魔になってすぐの頃は、

正直、悪魔化ってどうなの?って思っていました…」


ベルデは裕子の話を黙って聞いていた


「…でも…あんなに陛下と幸せそうにしているなっちゃんや

リリエル様を見て悪魔になるのも悪くないな…って

思ってしまうんです。な、何て言うか…

人間界に戻らずに和尚と入れるのなら…って」

裕子最大の告白だった。


「……悪魔になったら…人間界に簡単に戻ってこれないよ?」

ベルデは裕子を見て言った。


「…私は…」


花火の音が響き渡る中…


裕子は勇気を出して今の気持ちをベルデに伝えた…


「…君の気持ちは分かった」

ベルデは一言呟き微笑んだ




 

「綺麗だな…」

ダンケルが微笑んでダイヤを見詰めた


「ね〜!!綺麗…やっと私の夢が叶った…

一緒に見たかったの…麗ちゃんと…」

光輝く夜空に照らされるダイヤの嬉しそうな顔…


……あの時はどうしても魔界に帰還しなければならなかった… 

出来る事ならダイヤを無理やりでも魔界に連れて行きたかったが…

人間としての生活を全うしてもらいたいと

悪魔らしかぬ思いがあった。   


あの時に連れて帰還していたら…時空にも耐えられず

すぐに命を落としたはずだ。

この花火すらも一緒に見ることはなかっただろう…


最後にスターマイン花火が何発も打ち上がった

ダイヤはキャーキャー騒いで喜んで見ていた

「ダイヤ…」

ダンケルがしゃがみダイヤの目線に合わせた

「…陛下?」

ダイヤはニコニコしてダンケルを見つめた


「今日は楽しかった。人間界の花火大会も悪くないな」

「でしょ?良かった…楽しんでくれて…

陛下、私の我儘聞いてくれて有難う」

はにかみながらダンケルを見詰めた

「何があっても…もう、2度と離さない…覚悟しろよ?」

「はい。喜んで生涯陛下と共に…これからも宜しくお願いします」

ダイヤはダンケルに抱きついた


最後を飾るスターマイン花火…


まるで2魔を祝福しているようだった


暑い夏の花火大会が幕を閉じようとしていた…



Fin.









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