top of page

一週間の日々

花と光シリーズ 番外編


人間界の屋敷で逢瀬を続けるイザマーレとリリエル。

そこには当然、紅蓮の悪魔の姿も…

そんな一週間の日々~あれこれ~



人間界。

長い金髪をかなりキツく縛り上げ、サングラスをかけ

車を運転していたイザム


多忙過ぎる激務の中、今日は久しぶりに取れた休暇だった。


たまにはウエスターレンも一緒にBBQでもするか、ということになり

リリエルが仕事をしている間に買い出しを済ませようと思い立ったのだ。


その時、足元をふらつかせながら歩く女を見つけた。

かなり泥酔してるようで、危なっかしい。

案の定、イザムの車の前に飛び出すように倒れ込んだ。


「…やれやれ、吾輩じゃなければ轢き殺されるところだったぞ」


女はすっかり酔い潰れている。


「このまま放置する訳にもいかんな。かといって、目覚めて

いきなり吾輩の姿を目にするもの酷だろう…

ちょうどいい、リリエルが話を聞いてやるだろうから…」


女を抱き上げ、車に乗せる。そして、人間界の屋敷に連れ帰った。

イザムは自身のベッドに寝かせたまま、BBQのための設営をしたり

リリエルを迎えに行っている間に、すっかり忘れていた。


……

「……?あれ、ここは……?」

静かになった部屋で、目を覚ましたリリア。

たしか、旦那と大げんかして飛び出し、酔いつぶれて大通りを

歩いていたところまで覚えている。

だが、今は見たこともないような広い部屋のベッドに寝かされている。


「……ひょっとして、交通事故で死んで、あの世に来てしまったんじゃ……」



 

不安になってあたふたしていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「閣下、お待たせしました♪お買い物まで行ってくださったんですか?」

嬉しそうに微笑んでるのは……


「……リリエル様?」


そして、

「おいリリエル、ワインはこれでいいか?」と聞いているのは長身で赤い……


さらに

「リリエルの手料理は久しぶりだな。砂糖は極力使わないでくれよ」

と髪を撫でているのは///////////////まさか!!!

驚きのあまり、腰をぬかしてしまった リリア。


物音に気付いたリリエル。


「?あれ、閣下、あんなところに誰か……って、リリア様?!」

「ん、ああ、忘れてた。昼間、酔いつぶれて

轢きそうになった女を連れてきたんだった」


「ええっ!リリア様、大丈夫?ケガしてない?」

慌てて駆け寄るリリエル。


「…女特有の悩みなんかがありそうだったし、

リリエルならうまく相談相手になってやれるかと思って連れてきたんだが…」


そう話すイザマーレに対し、ウエスターレンはやや呆れ顔。


「はあぁ、イザマーレ、お前ってやつは。」

「ん?別によかろう?」


「どこまでお人好しなんだ、大悪魔のくせになぁ。

相手が人間の女じゃなく、危険な何かだったらどうするんだ」

顔を近づけてイザマーレを睨むウエスターレン。

「…れ、レン?」



 

ウエスターレンが怒っていることを察して

イザマーレは、はじめて動揺する。


「お前は、お前の魅力に無自覚すぎる!どこまで警戒心が薄いんだ!

今日という今日は、思い知らせてやる!」

そう言って、イザマーレを姫抱っこするウエスターレン。


「ちょ、ちょっと待て!ウエスターレン!」

慌てるイザマーレを無視し、

「おい、リリエル。小休止だ。俺は今からこいつをお仕置きするからな。

その間に彼女の話を聞いてやってくれ」

そう言い放ち、魔法陣で瞬間移動してしまった……


あっけにとられ、見送るリリエル。だが、やがてリリアに向き直り

にっこり微笑んで手を差し出す。

「今日は大変だったね。何かあったの?話きかせて?」


……

イザマーレは、ウエスターレンにこってりお仕置きを受け

バスローブ姿で金の長い髪をサラサラさせていた。

そこに、リリエルが姿を見せる。


「クスクス、閣下、今日は災難?それともお幸せだったのかしら?」

「……リリエル。お前も同じ目にあわせてやろうか?」

憎まれ口とは裏腹に、優しい表情でリリエルを抱き寄せるイザマーレ。


「ふふ。無理なさらないで。今日は私も人間界に帰りますから」

「……リリエル、それでどうだった?」


「やっぱり閣下はお優しいですね。リリア様は私のお仲魔です。彼女、

イザマーレ閣下の大ファンなんですよ。」


「…そうだったのか?」

「今日は、旦那様と喧嘩してしまって、寂しさを紛らわすためにお酒を…」

「なるほどな。轢き殺さなくて本当に良かったな」

「それで…閣下?ひとつお願いが…」



 

リリアは、心臓の音が聞こえそうなくらい緊張していた。

そこに一台の車が止まる。


中から現れたのは、長い金髪をサラサラとなびかせたイザム。


「待たせたな。お前の家まで送ってやる。

途中でどこか、行きたいところはあるか?」


「…よ、良かったら、閣下と…ドライブデート、したいです!!」

顔を真っ赤にしながら、必死に伝えるリリア。


「いいよ。それなら早速行くか。」

リリアを助手席に座らせ、近場の海まで車を走らせる。


「リリア、だったよな?スピードは大丈夫か?怖くないか?」

優しく尋ねながらハンドルを操作するイザムの横顔…


胸がきゅんきゅんして、爆発しそうなリリア。

波打ち際に車を止めて、並んで立つ。


心地よい海風

「気持ちいいな。どうだ、少しは気分は晴れたか?」

振り返って優しく見つめるイザムが眩しすぎて、クラクラする。


「…は、はい!素敵な時間を…ありがとうございました!

一生の思い出にします!」


「おいおい、こんな事くらいで大げさだな。

でも、これからはあまり飲みすぎるなよ?

悩みがあったら、リリエルに話せばいい。

きっといい相談相手になるぞ」


「…はい!」


「…そろそろ帰るか。旦那ももうすぐ帰る頃だろ?」

そう言って車に戻る。助手席に座りながら

「はぁ、…そうでした」

一気に楽しかった気持ちが萎んでいくリリア。


「こらこら、そんな顔じゃ、お前の魅力は半減するぞ。

短い時間ではあったが、お前は綺麗で魅力的な女だ。

吾輩に向けたような笑顔を、旦那にも見せてやれ。」



 

「・・・!そっ、そんなこと…」

俯いたリリア。その時、フワッとした感覚に驚いて見上げる。

イザムの顔がすぐ近くにあった。


「///////////////!!」


イザムにハグされた事に気づいたのは、3秒固まってからだ。


「自信をもって生きていけ。約束できるな?」

「…閣下」

涙を浮かべるリリアの髪を優しく撫で、頬にキスをする。

「お前が旦那ときちんと仲直りしたら

また遊んでやる。待ってるからな」



…………

イザマーレがリリアを家まで送り届けている間

魔界の屋敷にある情報局の部屋を尋ねて行ったリリエル


「お?どうした、リリエル。イザマーレが出かけて寂しいのか?」

「…いえ、私がお願いした事ですから。」


にこやかに話をするリリエルだが、少しだけ真面目な表情で見つめる。


「私のお願いを聞いてくださって、

ありがとうございました。ウエスターレン様。」


「…お前に頼まれたからではないけどな。

ただ、身体を張った捨て身のおねだりには、流石に面食らったな(苦笑)」




時は人間界の一年前に遡る。

悪魔と人間の、一日限りのお祭り企画として

プエブロドラドツアーなるものが開催され、参加していたリリエルは

旅先で見かけたウエスターレンに、意を決して懇願したのだ。



 

「…お前の望みを聞くだけか?」

笑って優しく髪を撫でるウエスターレン。


「…聞き入れてくださるのなら、構いません」


ツアーの最中、魔界まで連れて行きリリエルを抱いたウエスターレン。

「…お願いします。最高魔軍に戻ってください。

あの方が待ち焦がれてます。私も皆も、お待ちしてますから…」


「まったく、お前もあいつも、

追い込まれるとやる事が大胆になるのは一緒だな。」

「すみませんでした。これからも、閣下を愛してくださいね」


ウエスターレンはため息をつきながら、微笑み返す。


「また、お仲魔さま達と旅行に行きたいです」

「ああ、そうだな。イザマーレも一緒にな。古代遺跡巡りなんて

どうだ?必要なら調査してやるぞ」


嬉しそうに微笑むリリエル。

「はい!楽しみです!…あ、そういえば…、

セルダ様がよく行く猫カフェってご存知ですか?

セルダ代官の事が大好きなお仲魔様がいて、

今度一緒に遊びに行きたいんですが」


「…まったく。俺はお前の便利なナビか?…」




 

プルーニャは、ソワソワしながら紅茶を飲んでいる。

周りには可愛い猫ちゃんたちが、

潤んだ瞳でプルーニャを見つめている。


リリエルに教えてもらった猫カフェに、

勇気を出して来店したはいいものの、

(そう簡単に会えるわけじゃないよね、アハ!)

セルダに会えるかもしれない緊張をほぐしながら

猫ちゃんに癒されている。


その時、フワッと空気が揺れた。





 

さっきまで一人で座っていたテーブルの向こうに、男性が座っている。

少し長めの髪を無造作にかき揚げ、グラサンをかけている

人間の姿のセルダだった。


「やぁ。君がプルーニャ?」


「!!!!!」

ビックリして固まるプルーニャ。

「あ、あっ、、あのっ、、」


「良かったら、今日一日、君をエスコートさせて貰えるか?」

ピリッとした雰囲気なのに、言葉遣いは優しいセルダに

「おっお願いします!」

真っ赤になりながら答えるプルーニャ。


優しく微笑んだセルダは、

「さっそく行こう。外にハルミちゃんを待たせたままじゃんね」

そう言って手を繋ぎ、プルーニャを外に連れ出す。


天気の良い公園を、のんびりと散歩する 2 名と一匹。

ハルミちゃんの可愛さに、緊張もほぐれてきたプルーニャ。

最初に出会った猫カフェまで戻り、

「それじゃあ、またね。今日は楽しかった。

また一緒にお散歩デートしような」

そう言ってプルーニャを抱きしめるセルダ…

……


「あ~あ、キスのひとつくらいしてやれよな、セルダのやつ」

「ふっ、あいつも意外に照れ屋だからなあ」


上空で見守っていたのは、

今回もリリエルのおねだりを引き受けていた

ウエスターレンとイザマーレ。


「…ところでウエスターレン。本当なのか?その…リリエルと…」

「ん?ああ、お前、知ってただろ?」



 

「まあ……何となく。」

自分のためだったとはいえ、何となく面白くないイザマーレだ。


「許してやれよ、お前のことを思っての事だったんだ」


「…まあ、そうだな。リリエルを責めるのはお門違いだ。」


ウエスターレンの音楽活動については

寛容な態度を見せたイザマーレだが

さすがにリリエルのことになるとヤキモキするのか、と

イザマーレの様子を見つめるウエスターレン。だが…


「ま!それに、これでお互い様だな。吾輩も…その、バサラと…」


顔を赤らめて暴露し始めたイザマーレには、

さすがにあの時の怒りが湧いてきた。


「それに関してはな、俺は一切認めていないんだがな…」

「!んっ、んん!……」

悔しさのあまり、イザマーレの口唇を奪うウエスターレン。


(ちょうどその頃だったな、リリエルが俺の元にやってきたのは……)


そんな事を思い返しながら、

イザマーレにお仕置きをするウエスターレン…



Fin.



次の扉に進む                                  

閲覧数:2回0件のコメント

Comments


bottom of page