top of page

人間のねがい


ウエスターレンがやっと戻ってきたと思ったら、話も近寄る事さえ出来ず、

挙げ句に邪眼で透視され、

バサラにまで手を出してしまった事すらも見透かされてしまった。

全てイザマーレは分かっていた。

言い訳など出来ない。イザマーレの暴走は更に増していった。


人間界に布教活動で降り立ちイザマーレは世仮の姿で夜の街を歩いて

今日も心を満たすため魔界に帰る前に女を探していた…

たまたま見付けた女に声を掛けた。

その女は吾輩を見るなり一瞬顔色が変わった。

「……」

まぁ無理もない。

世仮の姿でも金髪男に声を掛けられれば誰だって身構えるだろう。


「今、仕事帰りかな?」




 

なるべく穏やかに話すがまともに目を見てくれない。

この女…何を考えてる?

普通なら逃げるか適当に話に乗って来るだろがそうじゃない。


「……ち、違います。あ、あの…何か?」


一歩ずつ後ろに下がって遠ざかるのを腕を捕まえて微笑だ。

「!」

「この後予定無ければ俺と飲みに行かないか?」


真っ赤な顔して迷っている。


「…予定は有りませんが…私でよろしいのですか?

明日も貴方様、ご予定があるのでは?」


言い方にますますこの女に興味を持った。

「…予定は無いよ。帰るだけだ」


「……そ、そうですか…私で良ければお供しますよ…」


話に乗ってきた。馬鹿な女だ…酔わせて事済ませたら抹殺すればいい。

イザマーレは心で嘲笑う

全く好みの女ではないが…我慢するか…


……飲みに来て話をしていたが、女が全く酔う感じが見受けられない。

結構飲ませてるのだが…


「君の名前聞いてなかったよね?」


「…私ですか?…」

名前すら言うのを迷っている。


「言うのが怖いの?」

酒を飲みイザマーレは微笑んだ




 

「…クリスと申します。」


「え?東洋人だよね?リトルネーム?」


「はい。友達の間ではそう呼ばれています。」


最近の人間は本名すら語らないのが常識なのか?

「じゃあ俺は…」


言い掛けたとたん前に手を出し遮った

「存じております。多分、私が知ってる方だと思いますので…」


「…え?」

酒を飲みつつ聞き直したがそんな事はどうでもいい事か…

とりあえず早く酔ってくれ。強制に連れて帰るか?と思ったが

話をするとなかなか面白い奴だった。


あっと言う間に終電が過ぎていた。

女はかなり焦った顔を見せた。

終電過ぎまで遊んだ事がないらしい。箱入り娘か?


「……困ったな…帰れなくなっちゃいました」


「じゃあ家に来るか?」

イザマーレは笑顔を見せた。


「……え?聞き間違え?」

困惑しながも真っ赤にしている。


「…終電も終わっちゃってるし、車で送る事も出来ないから泊まってけよ。」


「……良いんですか?泊まっても」


「あぁ。」


…泊まっても抹殺されるだけで、人間界には戻って来る事は二度とないがな…



 

居酒屋から外に出て人気の居ない道に入り魔界に移動した

瞬間でクリスも酔っているせいか何が起こったのか分からなかった

見たこともない広い部屋に辺りを見渡している


「…ここって…」

「吾輩の屋敷だ。」


クリスは振り返って唖然としている。

イザマーレは本来の姿に戻っていた

女は後悔している顔になった


「…やっぱり…貴方様でしたか…」

女はますます青ざめていた


「…何を言ってるかわからんが…お前は生け贄。

たっぷり可愛がってやる。生きて帰れると思うな」


他の女は本来の姿を見て、恐怖で泣き叫び逃げ回るのに彼女は違った。


「……生け贄…ですか…分かりました。どうぞお好きなように…」

目に涙を溜めながらも冷静に話している

何故だ……?


「…いつも遠目に眺めて、羨ましく思っておりました。

彼女にとって、誰よりも大切な方…

貴方様と個人的に少しの時間、過ごせて幸せでした。有難うございました。」


礼まで言って最高な笑顔を見せたのだ。

今からどんな目に遭うのか分かってるのか?


事をしている時も…最期に肌を引き裂いて血まみれになっても…

抵抗すらせずに気を失って行った。


血まみれでベットに横たわり気を失ってる姿を見て

イザマーレはふと思い出していた



 

『やっぱり貴方様でしたか…いつも遠目に眺めて、羨ましく思っておりました。

彼女にとって、誰よりも大切な方…

貴方様と個人的に少しの時間、過ごせて幸せでした。有難うございました。

生け贄ですか。分かりました…お好きなように…』と笑顔を見せていた…


吾輩の事を知っていた…

まさか……コイツは…あいつの知り合いなのか…?

だから抵抗すらしなかったのか?


イザマーレは動揺を隠せなかった。

魔力で引き裂いた肌を元に戻したが余りにも時間が経ちすぎ息はしていない。


なんて事をしてしまったんだ…

あいつが大切にしている存在をズタズタに切り裂いて…


クリスを魔界の死者に喰われないように

結界を貼り死者を弔う場所に生きていた状態にし、保管していた。


イザマーレの気持ちはどうすることも出来ず、

いつも髪に座っている人間、リリエルを呼び出した...



next                           目録に戻る


閲覧数:2回0件のコメント

最新記事

すべて表示

事件当日

…… 大魔王陛下から、久しぶりにお茶会を開こうと誘われたのは数日前。 今日がその日なのだが、まだ少し時間がある。 どうしたものかと思案していると 「あ、……クリス様…」 吾輩の髪に腰掛けている女、リリエルが呟いた あの時吾輩の手に落ちて、一度は瀕死の重傷を負ったが、...

ここに、永久に

久々の晴天... そろそろ人間界では春を迎える季節になっていた。 イザマーレから未だに呼び出しが掛かって来ない… リリエルは寂しさを感じていた。 イザマーレの髪に座るには彼の力も必要だった。 リリエルは寂しさを紛らわすために休まず接客業をしていた。...

陰謀

イザマーレはリリエルが姿を現した途端に抱きしめた。 「!…どうなされたのですか?…閣下」 いつもと違うイザマーレに動揺が隠せない 「…このままで居てくれ」 結構長い時間抱きしめ、やっとイザマーレは離れた 「リリエル…確認したいことがある…コイツ知ってるか?」...

Yorumlar


bottom of page