あれは魔界小学校高学年の頃…
そもそもあいつは、名門イザマーレ族の中で、
生まれ出でたときからその一族の名を与えられ、
トップに立つことを約束された後継者。
当時から魔力も並外れていた。
周りからは慕われてるように見えるが、
建前だけ取り繕い、
本音は自分の将来の為に仲良くしているだけの悪魔だらけだった。
他者の心くらい簡単に見えてしまうイザマーレは
慕う奴らでも全く相手にせず常に孤独であった。
学校主催の音楽祭で、イザマーレとウエスターレンはペアになり
練習も常にしていたが、いつも不機嫌だった。
あいつの気持ち的には
『どうせお前も建前だけで組んだのだろうが!』というのが顔に出ている。
まぁ気持ちも分からなくはない。
たまに顔に出てしまうイザマーレ。
嫌いじゃない。守ってやりたい気持ちになる。
「ウエスターレン、調整はまだなのか?」
ギターを調整しているウエスターレンに向かって
不機嫌そうな顔を覗かせるイザマーレ
「もう少しかな…」
ウエスターレンは呟くように言いながらギターを調整していた。
「吾輩を待たせるなんて…なんて奴だ!」
実は、調整にかかりっきりで、自分を見ない
ウエスターレンに苛立っているのだ。
そう言って頬を膨らませる姿が、何とも言えず可愛くて仕方ない。
「ぷっ…イザマーレ。なんでそんなにイライラしてるんだ?」
ウエスターレンは調整を止めてイザマーレを見た。
建前で仲良くしている悪魔なら、絶対に言い返さない言葉に
イザマーレは驚きを隠せない
「…ど、どうせお前も建前で吾輩に近づいたのだろうが!」
「何を言ってる?建前で近づいた?
そんな奴と一緒にしないでほしいな。
俺はイザマーレに最高な舞台で歌って欲しいから参加したの」
ウエスターレンの言葉に真っ赤になりながら、俯いていじけている
「……どうせ…吾輩は…」
呟いているイザマーレを愛しく思い、ギターを置いて抱きしめた。
そして顎に手を添え優しくキスをした。
「!!!」
驚くイザマーレを見つめ再び抱きしめた
「俺は…お前が孤独でどうしようもない気持ちも知っている。
そんなお前が好きだ…お前の全てを守りたい…
建前で近寄る奴らと一緒にしないでくれ。
イザマーレ、俺がお前を守るから。」
「な…!な!何を言ってるんだ!ウエスターレンっ」
アワアワしているイザマーレに微笑みかけた
「イザマーレ…俺の目を見てみろ…」
ウエスターレンはイザマーレの視線に合わせた
「俺の目にはお前がいるだろ?お前の居場所はここだから…
未来永劫、絶対に守ってやる。命を掛けて…約束する…信じろ」
イザマーレはウエスターレンの顔をずっと見つめていた。
瞳に映るウエスターレンにイザマーレは目を潤ませ
そのまま、ウエスターレンの首に手をまわす。
「守ってやる…信じろ」
再びイザマーレにキスをした…
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