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副大魔王と皇太子

2023/11/21 聖飢魔Ⅱ不動のドラマー

ライデン殿下発生日記念作品

※当作品において、他ブログ、SNS等への転載は固くお断りします。



副大魔王と皇太子


元老院


副大魔王の居室で、紫閃と何名かの使用魔に用意された

沢山のお菓子を頬張りながら、のんびりと過ごしている皇太子。


少し前まで

仲良しの悪魔も一緒に過ごすおやつタイムだったのだが

最近の彼は、急に忙しくなってしまったようなのだ


魔宮殿からの頻繁の呼び出し。

その度に、たとえ自分がどのような状況であったとしても

瞬時に駆けつけ、厳命を受けに行く


普段は底抜けに明るくて、やんちゃな遊びが大好きな悪魔なのだが

魔宮殿から戻ると、その明るさは封印される


数秒間、ソファに沈み込み、無限の闇の恐怖に苛まれるのだ


その悪魔の小さめの手の甲には、

幾度も打ち付けられた楔の痕が隠されている

万が一、厳命に従えない結果となった場合

それは自分の命を消滅させる荊となる


類まれなる能力と半端じゃない覚悟と努力によって、

すべて跳ね返しているイザマーレだが

だからと言って、心地の良いものとは言い難いこの感覚は

誰にも理解される事はない


副大魔王という要職

イザマーレ以外にこなせる者は居ないと言われる所以だ


そんな悪魔の元に颯爽と寄り添い、甲斐甲斐しく世話を焼き

支え続ける紅蓮の悪魔




そんなやり取りを、何度も繰り返し見続けてきたラァードル


「大変だよなあ…実際」

5つ目のシフォンケーキを頬張りながら、ため息をつく


「ラァードル坊ちゃま?どうされましたか?」


ラァードルの様子に気がついたシセンが控え目に尋ねる


「吾輩だって、サムちゃんの役に立ちたいと思うんだよ。

ウエスターレンみたいにカッコよく出来るとは思わないけどさ…」


雷神界からの留学生という微妙な立場で

入り込めない僅かな壁さえも悔しく思うのだ


そんなラァードルに、シセンは静かに微笑む


「坊ちゃま。ご安心なさいませ。坊ちゃんだからこそ

彼のお役に立てる、そんな方法が、必ずあるはずです」


「…う~ん。うん!!そうだよね♪おやつ、ありがとね。

じゃ、行ってくるよ」


「…はい。行ってらっしゃいませ」


シセンに、にこやかに見送られ、

ラァードルはすぐ隣のイザマーレの部屋に向かった


「サムちゃあ~ん!!」

ノックをして返事も聞かずにバーンと扉を開け放つ







「…ラァちゃんか。どうしたのだ?…っていうか、

扉はもう少し丁寧に開けような…?」


部屋の主は、手元の書類から目を逸らす事無く

呆れつつも穏やかに返答してくる


「サムちゃん!!遊ぼ!!!」


重厚なデスクに座り、職務に当たるイザマーレの前に

ニコニコしながら駆け寄り、元気よく誘うラァードル


「…そうだな。少し待ってくれな。

あと数分…これが終わったらな(笑)」


予想通りの反応。

いつもすっごく忙しそうで、結局、数分どころか、半日待っても

約束どおり、遊べる事なんか、殆どない


「…ぐえっ…!?」


痺れを切らしたラァードルは、

無理やりイザマーレの背中に飛び乗りせがむ


「ダメ~。今すぐ遊ぶの!!」


「…ラ~ァ~ド~ル~💢💢💢💢」


まさかの仕打ちに、わずかに青筋を立てるイザマーレ


「サムちゃん…分かってる?もう既に、勤務時間を36時間以上

オーバーしてるんだよ?もう、お仕事の時間は終わりにしよう!!」


苛立ちながら、押し返そうとするイザマーレの動きを察知して

素早く逃げ回りながら、挑発するラァードル



「このっ…待たんかーーっ」


つられたイザマーレも拳を振りながら、ラァードルを追いかけ回す


「ギャハハハ…ま、待った待った…タンマ…💦」


ついにイザマーレに捕らえられ、電気アンマを喰らい

悲鳴にも似た叫び声を上げながら爆笑するラァードル


イザマーレが力を抜こうとした隙に、

デスクに置いてあった小さな箱を取り上げて

逃げ出していくラァードル


「あ!!こら!!!!そいつは吾輩のだ!!それは、あいつの…///

ラァードルのじゃないだろ!!返せっ」


「へへ~んだ。知ってるよ♪可愛い彼女の大事な種だよね♪♪」


取り上げた箱をカラカラ鳴らしながら、さらに挑発するラァードルに

プンスカしつつ、追いかけてくるイザマーレ


いつのまにか、本来の天真爛漫な表情に戻り

楽しそうに大暴れし始める


気がつけば部屋中、おもちゃ箱をひっくり返したように

グチャグチャになりながら、悪ふざけを繰り返し

やんちゃな姿になって、弾ける様に遊び倒すラァードルとイザマーレ


部屋の外で結界を張りながら、ほくそ笑むシセン…








…あれから十万数十年


今でも「その日」になると、イザマーレの屋敷と元老院の間に

特別な結界が施される


部屋に飾られたポスターを引き剝がし、落書きをしたり

スリッパを蹴り上げて投げ飛ばしたり

プロレス技を仕掛けては、相撲の決まり手で跳ね返す…


日頃の鬱憤を思う存分吐き出して

さらに強く輝くオーラを放つ副大魔王と雷神界の皇太子


「…とはいえ、まさか今年も…とは思わなかった。

黒ミサの本番がすぐだってのに…(笑)あいつら、ホント、タフだな(^-^;」


「(´∀`*)ウフフ…魔界貴族の、不動の“汗かきセクション”ですものね♪」


リビングでその様子を眺めながら、のんびりとお茶を飲むウエスターレン

キッチンでは、沢山のケーキを作り続けるリリエルを手伝いながら

スプネリアが目をパチクリしている


元老院で過ごすようになり、初めて迎えたこの日

目の当たりにした思わぬ光景に、ただ固まるしかない


そんなスプネリアに、ウエスターレンが笑いかける


「毎年の事だから(笑)あまり気にするんじゃないぞ♪」


「…は、はい…💦」


やがてケーキのいい匂いが漂い始めた頃

他の構成員もLily‘sを連れてやって来た


「お待たせ~。いい匂い♪」

「ラァードルたちは…今年も派手にやってるねえ(笑)」


イザマーレにパンダの着ぐるみを被せられ、

足を取られて転がりながら、すかさずキャッチしたサインペンで

イザマーレの顔にヒマワリの落書きをするラァードル


「…小学生か!! それにしても、楽しそうだよね」

「2魔だけずるいじゃんね。ケーキ喰ったら、

俺たちも混ぜてもらうじゃんね♪」


ちょうどその時、出来立てのケーキを運んできたリリエル

「さ、そろそろ、シャワーを浴びてもらいましょうね」


「そうだな…いくらなんでも、

落書きしたままの顔では失礼にあたるからな(笑)」

リリエルの言葉に、ウエスターレンも同意して立ち上がる


「ああ、やっぱり、出席する事にしたんだね」

ウエスターレンとリリエルのやり取りを聞いて、ベルデがのんびりと笑いかける


「ええ…お父様からの強い御意向で、

今年はラァードル殿下の発生日記念パレードに

私も参加するようにと…仰られまして…💦💦」


「…ミサが翌日にあるので、当日は衣装合わせだけという事で

了承を得た。本番はミサの後だな。」


最終確認をするウエスターレン


「素敵じゃない(笑)楽しんでおいでよ。雷神殿にも、よろしくね」

にこやかに微笑むベルデ


そんな会話の最中にも、言霊で作られた特別な扉の中で

無邪気に遊び続けるラァードルとイザマーレ…





ラァードルとスプネリア

イザマーレとリリエル


それぞれのパレード用の衣装を設える為、専属使用魔が

特別招集された


祝賀用の料理を任されたのは、魔界一の料理魔オルド

雷神界の王家専属シェフたちが、サインをねだる勢いで

次々に繰り出される魔法のような料理の出来栄えに

目を輝かせている


そして、その傍らで

久しぶりに一同に会する事になったシセンとランソフ


「人間になってしまわれたとか…?」


「ええ。本来ならそこで、消滅するべきでしたが

イザマーレ様とリリエル様のご厚意で…///////」


恐縮するランソフをじっと見つめるシセン


「そんな事を言って…実は多少、魔力も回復なされているのでは?

イザマーレ様も寂しがられているでしょう」


「…それより、坊ちゃまも、大層ご立派になりましたな」


シセンの問いをはぐらかし、穏やかな表情を浮かべるランソフ


そこへ、ひと通りの作業を終えて、お茶を運んできたオルドも

一緒のテーブルにつく


「…フフフ…もう、鼻たれ小僧とクソ坊主だなんて、呼べませんね(笑)」

「そうだな…オルド、次の茶会はどうするのだ?」

「彼らの黒ミサに合わせて、こっそりと降臨しちゃいましょうかね」

不敵な笑みを浮かべ企む、白髪の匠たち…






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