……
「おのれゼウス!可愛いリリエルを
怯えさせることしかできなかった下手くそ野郎め、
さまあみろ!
独りよがりの幼稚なテクで奪いきれると思ったか!
女を喜ばせる方法も知らぬゼウスなど、
吾輩の足元にも及ばんわ!!!
吾輩に逆らうなど10万年早い!分かったか!!!」
……
イザマーレの強い言霊は時空を飛び越え、
ゼウスの脳内に直接届いていた
あまりのヘタレっぷりを暴露され、
落ち込むゼウスを表面上は取り繕いながら
心の中で爆笑していたミカエル。
「さすが、イザマーレだ。やってくれたな♪
胸がスッとしたぜ!ごめんな、イザマーレ。
ゼウスの馬鹿野郎、ほんと悪趣味だよな
でも、僅かながら協力してたんだぜ?
リリエルちゃんが完全に愛を失わないよう
歌う機会を与えたりとかな…」
聞いているのは雷神界の皇太子、ラァードルだ。
「多分、リリエルちゃんを完全に失っていたら、地球まるごと
吹き飛ばされてたよね……」
いつの頃からか、天界に現れ、
大天使として君臨続けるミカエル。
その後、魔界と絶妙なバランスを保ち、
安定するようになったのも頷ける
この性格の持ち主。
実はそこに、真相が隠されていたのだ。
イザマーレがヨッツンハイムに囚われた時、
言霊でいち早く取り戻した感情の一部。
言霊で命を吹き込み、脱出の手助けをさせた。
せっかくの好機を無駄にする悪魔ではない。
大魔王に忠誠を誓い、
腹心として生きていくために不必要な感情
誰よりも偉い、誰よりも強いといった類のもの。
大悪魔であることを自覚するが故の感情を
自身から切り離し、天使として生まれ変わらせた。
それがミカエルの正体なのである。
自身が一番遠ざけたかった感情を利用し、天界に一矢報いる
それによりもたらされた、この世の安泰。
誰も知らない奇蹟……
Comments