top of page

契約の真相


やがて雷神界への旅を終え、イザマーレの屋敷に大集結した

ラァードルたち。


少々押しが強過ぎたのか

恐れをなして震えているスプネリアをリリエルに預け、

どうにか心の扉を開けてほしいと祈る思いで待っていたラァードル


それと同時に、リリエルの出生の秘密を知り、改めて感動していた


雷神帝の秘密の暴露には、さすがのイザマーレも驚いていた

「…そうでしたか。今の私があるのは、リリエルのお陰です。

ラァードル、御母上にもよろしくお伝えしてくれ。」


薄っすらと涙を浮かべながら、微笑むイザマーレ

そんなイザマーレの様子をにこやかに見つめるラァードル


そこへ、ウエスターレンが口をはさむ

「おいイザマーレ。雷神殿のプエブロドラド往来については

ダンケルの許可がいる。だがまあ、特段問題はないだろう。

後は、ラァードル。お前次第だな♪」


「ああ~リリエルちゃん、よろしく頼むよ~~」

突然頼りなく、ソワソワし始めるラァードル。


「(笑) ラァードル。もしも今すぐが無理だとしても、

順序立てていく方法はいくらでもある。あまり、焦るんじゃないぞ」

そう言って笑いかけるイザマーレ


「…そう言えば、サムちゃん。リリエルちゃんがまだ人間の頃に

契約を交わして髪に乗せたりとかしてたよね?

その後、ダイヤちゃんも居たと思ったら、すぐに消えてたけど…」


「ダイヤの愛契約と、リリエルとのそれは全然別物だ。

同列に扱うのはやめてくれ」


そう言い置いて、語り始めるイザマーレ



 

「一点の曇りもない、リリエルの笑顔を見ていたい。それだけの事だ。

そのためなら、どんな代償も厭わない。まあ、吾輩の言霊が利かない

リリエルだからこそ、出来た事だが…」


「!!」


「あいつの本来の居場所が、まさにこの屋敷である事を

いつだって伝えてやりたかったが、

それは人間として懸命に生きていたリリエルを否定することになる。

一時の感情で、そんな悲しみを背負わせるわけにはいかない

『契約』と言ってやりさえすれば、安心させてやれるのなら、

躊躇う必要もないだろ」


「…つまり、リリエルちゃんとのそれは偽りの契約だったという事か…」


「ラァードル。お前も分かっているだろう?

本来、そんな契約など交わさなくても

信者の奴らは自由に髪に座ることができる。まあ、一時のことだが」


「確かに…。ミサツアーになると、オンライン上で魂を飛ばし合うし

本番中は、誰の髪にも信者の魂が座っているね

大人気のサムちゃんは、いつも鈴なり状態だよね(笑)」


「(笑)そうだな。そして、リリエルもいつの頃からか、

信者に交じって吾輩の髪にこっそりと座っていたのだ。

もちろん、乗せ続けてやる為に、吾輩も魔力を使っていたのだが。」


「そうそう! いっつも座ってたよね(笑)」


「だから、こっそり座ってるくらいなら、

堂々と座ってろと言ってやっただけなんだ。あの時はな」


「うんうん。そうか…ん?それで、ダイヤちゃんの愛契約ってのは…?」




 

「文字通り。単なる契約に過ぎない。本当ならダイヤも

リリエルの結晶として吾輩の元で守ってやりたかったが、

先に陛下から変に入れ知恵されててな。

逆に言霊が利きすぎるあいつは、ただ単に『髪に座れ』だけで

言う事を聞くような奴ではなくてな」


当時の事を思い出し、苦笑いするイザマーレ


「間を取って忠誠契約で良いかと思ったが、

リリエルにねだられて愛契約になっただけだ。

だが、あんな面倒な事、やるもんじゃないな(笑)

ラァードルには、とてもじゃないがお勧めできない」


(なるほど…そういう事だったのか…)

聞いていたベルデも、様々な想いを巡らす


「リリエルの笑顔を守りたかった吾輩だが、

情けなくも、あいつの笑顔に救われ続けている。

今でもリリエルに見限られないよう

必死なんだぞ。少しでもカッコつけて、

あいつの望む王子になってやりたいだけだ。」


率直な思いを述べて笑うイザマーレを、改めて尊敬したラァードル


「そうそう。俺も、そんなイザマーレの王子で居続けたい。な♪」

そう言って、イザマーレの髪を撫でてやるウエスターレン


そんな彼らの幸せが永遠に続くよう、その場に居た全員が願っていた





その後、自らの出生の秘密を知らされ、涙を流すリリエルに

そっと寄り添い、抱きしめるイザマーレのように、

スプネリアを守れる存在になりたい

ラァードルは改めて強く思うのだった



 

イザマーレがラァードルに語って聞かせている間、

リリエルはスプネリアを部屋に誘い、話を聞いていた


「…そうか。スプネリア様、殿下と…。良かったね♪

優しくしてくださったでしょ?」


「///…はい。信じられないくらい優しくて、幸せでした…///

でもあの、あまりに急展開すぎて、ちょっと追いつかないというか💦

私なんかが、殿下のお役に立てるなんて…思ったこともなくて…」


「そんな心配はいらないわ。

いつだって殿下の気持ちに寄り添おうとされる、

そんなスプネリア様だからこそよ。

殿下がお選びになったのも当然よ。」

リリエルは笑顔のまま、はっきりと言う


「…リリエル様に言っていただけると、すごく安心します。

あの…リリエル様、お尋ねしてもよろしいですか?」

少しだけ、落ち着きを取り戻したスプネリアは

改めてリリエルに向き合った


「…? なんだろう?」

リリエルは首を傾げて、スプネリアの言葉を待つ


「リリエル様は、私以上に壮絶な体験を何度も経験されてますよね。

そんな中でも、あまりにも急展開な事で戸惑ってしまうようなことって

どんな事でしたか?」


「え?…うーん…そうだね。どちらかと言うと、いつも

そんな事の繰り返しだな。私もいつも、必死なのよ。

閣下の御心が、少しでも軽くなれるように力を尽くしたいだけなの

お傍にいたいという私の気持ちが強すぎて、

閣下にはいつもご迷惑をおかけしてます。」




 

「…でも、そうだな。『髪に乗ってくれないか』と

仰っていただいた時も、ビックリして、動揺しちゃったかな。

本当は閣下と長官のために、私は身を引くべきだった。

人間界に家族も居た私が、そんな事、許されるわけないんだから。」


「それでも髪に座ると決断できたのは、なぜですか?」


「閣下が、そんな私を丸ごと受け入れてくださったからです。

私は記憶を失っている間、閣下をどれだけ傷つけてしまっていたかも

知らないで、のうのうと生きていたというのに…」


当時の事を思い返して、うっすらと涙を浮かべるリリエル


「あっ、ごめんね。今はスプネリア様の事を考えなくちゃ💦」


慌てて笑顔になるリリエルに、スプネリアも少し前向きになれた気がした

今はまだ自信がないけれど、いつか自分も、

こんな風に殿下をお支えできるようになれたら…


「いえ…ありがとうございます。リリエル様…あの、これからも

相談に乗ってもらえますか…?」


「勿論ですよ♪私なんかがお役に立てるなら、いつでもどうぞ♪」






閲覧数:0回0件のコメント

最新記事

すべて表示

進言

イザマーレたちがリリエル達との旅から戻り、 屋敷でビデオ鑑賞会を開いた時のこと 上映中のビデオは 泥酔いのリリエルが服を脱ぎ始め、 ダイヤが慌てて止めている場面になった 素知らぬ振りをしていたイザマーレが焦り始めた。 リリエルは全く覚えていなかったので、かなりの衝撃で...

トラウマ

イザマーレが、ラァードルとスプネリアの背負っていた孤独に気づき、 全面的に後押ししようと決意を固めたのは、それからすぐの事だった その日、スプネリアはたくさんの料理を作っていた ミサの練習に明け暮れ、 お腹を空かせて帰って来るラァードルのために...

再会

イザマーレがリリエルと直接関わりを持てたのは ウエスターレンを一時的に失い 孤独に苦しむ最中、25周年が過ぎた頃だった その後、『アーティストとファン』を装い、 逢瀬を重ねるイザマーレを微笑ましく見ていたラァードル。 「いいよな、サムちゃんは。魔界と人間界だけど…...

댓글


bottom of page