学園―魔界専門学校―
- RICOH RICOH
- 2024年11月26日
- 読了時間: 8分
魔界
最高魔イザマーレ族が通う魔界専門学校
パンデモニウム宮殿の特設会場で
各省庁からのスカウト兼運動会を終えた悪魔たちが
その後の配属先を決めるまでのモラトリアム期間を
与えるための学園……
その年、意欲があり向上心のある下級魔にも門戸を開こうと
臨時に新たな校舎を開設した
王都を中心に棲息する魔女が集められ、
新たな学園ドラマが始まろうとしている……
学園の門を通り抜け、その日のカリキュラムを確認するため
掲示板に向かう
校舎も真新しく、見るもの全てに目を輝かせ、
ワクワクする気持ちを誤魔化せずにいる彼女
艶やかな髪、朗らかな笑顔は自然と周囲の視線を惹きつける
頬をほんのりと赤くし、戸惑ったように視線を泳がせ、
薄いピンク色の口唇をそっと開いた
「…あ、あの…」
Anyeの一挙手一投足を、余すことなく
心眼で見つめていた光の悪魔が
彼女の声に視線を向け、静かに微笑む
「どうした?」
「…いや、あの…何故、この場にいらっしゃるの?」
Anyeの戸惑いは至極当然なのだ
イザマーレのプライベートルームで過ごすようになったAnye
執務で屋敷に居合わせられない時間に、Anyeが暇を持て余さないよう
学びの機会を与えられ、今春からここ、魔界専門学校に入学させてもらったのだ
魔界の歴史や、魔力の知識、実践などを多角的に学べるとあって
聞いた時から楽しみに胸をときめかせていたのだ
イザマーレの厚意に誠意をもって応えようとして…いたのだが。
迷子になるAnye
イザマーレと一緒に馬車に乗り、門の前で降ろされた後は
枢密院に向かうもの…と、思っていたのだが
なぜか一緒に馬車を降り、ここ、掲示板の前に至るまで
ずっとAnyeの後をついて来るのだ
「言ってなかったか?吾輩はもちろん、
構成員は全員、この学園に現役で在籍している。」
「!!……えっ?」
「ダンケル陛下の元で、配属された各省庁の公務と学生
二足のワラジだけどな」
「! そ、そうだったんですね💦だけど…それならやはり
私のような出自の卑しい者とは、
一緒に登校などなさらない方がよろしいのでは?
それに…折角の機会だから、少しでも知識を身につけて
貴方に追いつきたいと思っているのに…」
(…いつまで経っても、追いつけないじゃない…////)
俯いて口を尖らせるAnyeから聞こえてくる心の声に
ニヤッと不敵の笑みを浮かべるイザマーレ
「心配するな。学園内ではプライベートな接触は一切禁止だ。
臆することなく立ち向かってこい。
吾輩も、遠慮することなく、お前を叩きのめしてやるから♪」
「なっ…////」
思わず気色ばむAnyeに近寄り、耳元で囁く
「安心しろ。吾輩との関係を公式に発表すれば
そんなルールは無効になる。ま、学園外なら
いつものように可愛がってやるから♪」
「……///」
言われた内容の意味が分からず
真っ赤になってボ~っと固まるAnye
「と、いうわけで、お前が望むなら
今からすぐに学長室へ向かうが…どうする?」
ニヤッと笑いながら腰に手を回す
「///かっ、からかわないでください💢💢」
何とかイザマーレを押し止め、プンスカしながら
その場を駆け出していくAnye
(ククッ…ま、せいぜい頑張れよ♪)
今春から開設された魔女専用の校舎に辿り着いたのを見届け
隣の校舎に向かうイザマーレ
殆どのカリキュラムは単位を取得し終えている
講義室を通り過ぎ、向かった先は生徒会室。
実態は、枢密院の小型版となっており
副大魔王としての執務の傍ら、
学園の運営を取りまとめているのだ
隣の生徒指導室は、某情報局長官部屋と同じく
複数のモニターが設置され、紅蓮の悪魔専用の
遊び場とされている
その他に、角の生えた悪魔、文化局長の別宅とまで
言われている研究室
最悪拷問官の仮眠室などなど……
オリエンテーションとして、学園内を見学し、
HRの時間……
「…委員会?」
担任から呼び止められ、キョトンと首を傾げるAnye
「はい。この学園は、運営・企画も含めて学生の自主性を重んじ
頂点である生徒会を中心に様々な活動に従事する決まりとなっております。
その他に、サークル活動などもございますが……委員会との兼務も
可能です。」
「…そうなんですね…サークル活動も、実は楽しみにしてました。」
柔らかく微笑むAnyeに担任も頷き、続ける
「そうですか。では、その件も考慮させていただきます。実はAnye様には
魔女部の代表委員をお願いしたいと思っておりまして…」
「…えっ」
思わぬことに固まるAnyeに、恐縮しながらも付け加える
「申し訳ございません。生徒会長直々の推薦でして…
今後の事は、会長からの指示を仰いでください。
では、そういう事ですので、よろしくお願いしますね」
「……」
「第一回目の生徒総会は、本日、午後から予定しております。
必ず、出席なさいますようお伝えしましたから。
場所は、隣の本校舎になります。分かりますね?」
有無を言わさず押しつけられた書類を受け取り
ある事に気がつくAnye
「……はい。畏まりました…」
静かに瞳の奥に光を宿しながら、一点を見つめるAnye
ため息をつきながら、手元の書類を見ると
幼稚園児でも分かりそうな、校舎の見取り図のメモが貼り付けてあった
その筆跡と、書類から感じるオーラに、抵抗するだけ無駄だと悟り
指示された場所へ向かう
……
生徒会長室
扉をノックする音に、返事をする
扉越しにチラッと顔を覗かせ(やはり…)とため息を隠そうともせず
口を尖らせているAnye
「どうした?何か、不服でもあるのか?」
「…いいえ。帰りの時刻が遅くなることを
お伝えする手間が省けて、安心致しました。」
精一杯の皮肉をこめた切り返しに、イザマーレはほくそ笑む
「でも…よろしいのですか?私など…お役に立てるのでしょうか…?」
「役に立つかどうかは、お前次第だな。朝も伝えただろう
学内では公私混同は禁止。Anyeだからといって、依怙贔屓もしない。
こき使ってやるから、覚悟しておけ♪」
「…あ、でも…サークル活動もできると伺いました。」
「お前の無理のない範囲でなら構わない。他に質問は?」
「……今のところはありません。
その都度、お尋ねする事になるかと思いますが
よろしくお願い致します」
青筋を立てながらも、どこか楽し気な表情で
ペコリとお辞儀をするAnye
「よし。では早速、今後の予定だが…」
「へっ?ち、ちょっと待ってください…
他の委員の方がまだいらっしゃってませんが?」
当然のようにサクサクと話を進めるイザマーレに、
メモを用意しながらも不思議がるAnye
「ああ、他の奴らは全員、お前にとっては顔見知りだ。
最高魔軍の構成員だから。今さら、紹介など不要だろ」
「!!…そうでしたか…それなら安心しました。」
ようやく腑に落ちて、冷静に指示を仰ぐAnye
「毎年この季節には、オープンキャンパスを行い、
留学生を受け入れている。系列の姉妹校から
募集するのが常なのだが…お前には、
留学生たちが寝泊まりするための寮の準備と取りまとめを頼みたい。」
「はい…畏まりました。学園の敷地内でよろしいのでしょうか。
受け入れる学生さんの数は…」
「相手校の選定もまだこれからだ。今、ウエスターレンに調査させている」
「おいイザマーレ、その事だが…」
イザマーレが言い終えたところで、タイミングよく扉が開き
ウエスターレンが足早に入ってきた
「探ってみたら、タイミング良くあちらの学園の門扉も開いているようだ。」
「! そうか…であれば、折角の機会だからな。接触してみてくれるか?」
「お前ならそう言うと思ってな。先程、交信してみた。返事は良好。
で、選定し送られてきたリストがこれ」
「…相変わらず、仕事が早いな。」
差し出されたリストに目を通しながら、静かに微笑むイザマーレ
「四六時中、校長を連れ込み、扉を消し続けていても許されるのは
この副理事長の手腕があってこそ、だろうからな♪」
「?」
意味深なイザマーレとウエスターレンのやり取りを、
Anyeは不思議そうに眺めていた
そんな彼女に気がついたウエスターレンは、
八重歯を覗かせ、にこやかに笑いかける
「お♪ようやく来たか。Anye。」
「ウエスターレン長官…こちらでもお世話になります。
よろしくお願いします」
笑顔で応え、お辞儀をするAnye
「ま、あまり気負わずに、頑張れよ。それから…」
Anyeに近寄り、耳元で囁く
(私的にイザマーレと甘えたい時は、遠慮するな。俺も協力してやるから♪)
「…なっ…////////」
瞬間湯沸かし器のごとく真っ赤になり、狼狽えた瞬間
胸の鼓動を感じて、目をギュッと瞑るAnye
「…ウエスターレン」
その様子を見ていたイザマーレが、ウエスターレンをじっと睨みつける
「じゃ、後はよろしく。また屋敷でな♪」
素知らぬフリをして、目配せしながら部屋を出て行くウエスターレン
「……Anye」
深いため息をつきながら呼びかけるイザマーレ
「大丈夫だ。吾輩がいるから、安心しろ」
「……良かった、どこも変わりないですね?」
恐る恐る目を開き、ホッとため息をつくAnye
「ほら、リストだ。準備は明日からで良いぞ」
「あ、はい!畏まりました。」
手渡されたリストにすぐ目を通し始めるAnyeを後目に
立ち上がり、扉に向かう
「…早く来い。置いて行くぞ」
イザマーレの言葉にハッとして顔を上げるAnye
「下校時刻だ♪」
「!…ま、まってまって……💦」
慌ててイザマーレの後をついていくAnye…
Comentarios