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宙―SOLA―



「長官。ミカエル様の中にいらっしゃる閣下が

とても苦しそうです…」


「そのようだな。先日、出来もしない宣言をしたからだな(笑)」


ウエスターレンは苦笑しながら頷く


「はい…その事は、閣下に教えていただきました。

だけど、これまで私はミカエル様に、

そのような想いを抱くことが出来ませんでした

ミカエル様の中にいらっしゃるのは、

閣下なのだと分かっているのに…」


「……」


率直な思いを吐露するリリエルを静かに見つめる2魔


「長官は、私以上に閣下を愛していらっしゃるはずです。

それでもミカエル様には本当に何も、心が動きませんか?」


「当たり前だ。

俺はミカエルの中にある残像を愛しているのではない。

イザマーレという大悪魔。お前そのものを愛しているからな。」


ウエスターレンは力強く言いながら

イザマーレを見つめ、優しく髪を撫でる


「…だがウエスターレン。

お前が本当に愛しているのは吾輩だけではない。

そうであろう?今さら、嘘や誤魔化しは許さんぞ。

本当の事を言え」


「嘘ではない!何度言えば分かるんだ💦」


「…まあ良い。だがそれでは、

リリエルの疑問は解消されないだろう。

そうだよな?リリエル」



 

「……///////」

申し訳なさそうに頷くリリエル


「実はな、リリエル。お前のその疑問は、

お前とウエスターレンだけでは解決しないのだ。

吾輩の事情も絡んでいるからな」


「えっ……」


「よく考えてみてくれ。我々は、出会った時から今の今まで

お互いに思いを寄せ合っている。それは確かなのだが…

だからこそ、愛されることを望まない、

そう思った事がなかったか?」


「!!……」


イザマーレの言葉に、ウエスターレンもリリエルも

言葉を詰まらせる


「……私はずっと、閣下と長官が結ばれ、

幸せになる事だけを願っておりました。

もちろんそれは、今もですが…」


「吾輩とウエスターレンの事だけを眺めていられれば、

それだけで良いと思っていた頃があったな。

リリエル。お前がまだ花のリリだった頃だ」


イザマーレは微笑み、リリエルの髪を撫でる


「ウエスターレン、お前もだろう。

吾輩の事を…心配しすぎだぞ?

吾輩の為に傍を離れるなど、二度と許さんからな」


(Lilyelに寄り添う吾輩に抱いた嫉妬心さえ

許せないなど…二度と思うな)


「!!…」

ウエスターレンだけに聞こえるよう飛ばしたテレパシーに、

さすがに言葉を詰まらせる紅蓮の悪魔


「そして…ウエスターレン。やはりお前の言う通りなのだ。

出来もしない事を、軽々しく思うべきではないな。

だが…吾輩も、情けなかったのだ。

そう思わずにはいられない時期が確かにあったのだ。

吾輩にも……」



 

そう言いながら、遠くを見つめるイザマーレ


「ウエスターレン。お前からは、

言霊に操られた、まやかしの愛などを受け取りたくなかった

そんなもので、お前を縛り付けるくらいなら、愛など要らん。

吾輩だけが思い続ければ良い。

そんな風に、吾輩自身を縛り続けていた。」


「…イザマーレ…」


「無論、そんな事は無理な話だ。

その程度の事で、お前を諦められるくらいなら苦労はないな」


少しだけ顔を赤く染めながら、俯きがちになるイザマーレだが

すぐにリリエルに向き直る


「リリエル。お前には、直接伝えた事もあったな。覚えているか?」


「…そういえば…」

口に手を当て、首を傾げて考え出すリリエル


……

「せめてお前が花ではなく、女だったらな。

代わりに慰めてもらっただろう。

だか、花のままでも構わない。

お前が女の姿になったら、

愛さずにはいられないだろうからな……」

……


リリエルの心に浮かんだ、かつて自分の言葉に

苦笑しながら見つめるイザマーレ


「お前をすでに愛していたにも関わらず、

そんな事を伝えていたな。

だがそれは、そうしなければならないと願う、

ある理由があった。分かってくれるか?

リリエル、お前なら…」


イザマーレの言葉に、すでに涙が溢れ、

声にすら出来ず頷くリリエル




 

副大魔王として生まれたからこその宿業

何万年かに一度の生贄生き血祭り……



「吾輩の場合は、ただの生贄などで理性を戻せるわけはない

それは、最も愛する女でなければならない事は明白だからな」


「閣下…でも、私は…///////」


「リリエル。お前を愛さずに居続けるなど、無理に決まっておるな。

例えそうなっても、お前を苦しめてでも、手放さない事に決めたのだ

その事は、お前が吾輩に教えてくれたな」


「…はい。リリエルはいつも閣下のお傍におります。お約束します」


泣きながら、イザマーレに抱きつく

そんなリリエルの髪を撫でながら、イザマーレは話を進める


「実はな、リリエル。生き血祭り以前に、吾輩に強く決意させた

ある事件があったのだ。お前は知らんだろうが。

誰かさんを失う恐怖を味わうくらいなら、どんな代償も厭わず

愛し抜こうと思う、そんな事がな…♪」


「!!」

リリエルは驚いて見上げる


「そうだ。忘れもしない、あの忌々しい事件だ。

その時、吾輩がそれまでクヨクヨと思い悩んでいた感情は

全て捨て去ったのだ。だから今、吾輩には

お前を求め続ける感情しかない。そうだろ?」


「///////」


ニヤッと笑うイザマーレに、真っ赤になるリリエル




 

「なるほどな…そういう事か♪」

すべての真相が分かり、ウエスターレンもニヤッと笑う


「つまり、ミカエルの中にあるイザマーレに

リリエルや俺への想いはあっても、

添い遂げたいと願う気持ちはないと…」


「そういう事になるな。元々はな。だが当然、

ミカエル自身の感情にも左右されるだろうし、

今回のように、大きなきっかけがあれば、迷いも生じるだろう」


「…閣下、それなら……」

ずっと考えていたリリエルは、ようやく顔を上げる


「閣下がずっと大切に保管してくださっている

私の種を……蒔きませんか?

ミカエル様の中にいる閣下をお救いするために」


「!!」


イザマーレは驚いてリリエルを見る


「忘れる必要などないです。

たとえ、成就することはなくても、思い続ける事はできます。

それを奪う権利は、誰にもありません。

むしろ…ずっと覚えていて欲しい。

そう願う私の事を、お許しいただけますか?」


「お前が願わなくとも、そうあり続けるに決まっている。だが…」



「はい。それは大切な宝物として残して貰えたら、それで良いのです。

閣下、お願いがあるのですが……リリの花の種の名前を

変えていただけないでしょうか。大切な宝物を胸に抱きながら

新しい道にも進めるように、そう願いを込めて…」


「!!……リリエル、それはつまり……」




 

「リリの花の種なら、リリエルがここに居るのですから、

またいつでも作れますよね。だから…いいでしょ?閣下♪」



「…そうだな。そうしよう。それならいっその事

吾輩とウエスターレンのオーラも混ぜてやろうか?」


「!!!それ!!!素敵です(≧∇≦)

…お願いしてもよろしいですか?」


ウキウキしておきながら、俯きがちに見上げるリリエルに

イザマーレもウエスターレンも微笑む


「リリエル、おいで…」

イザマーレがリリエルを抱きしめる

「ウエスターレン、お前も…」

呼びかけるイザマーレを、

リリエルごと抱きしめるウエスターレン


その瞬間、凄まじいオーラが解き放たれ

プライベートルームにある一室の扉が開かれる

その中に保管されていた宝箱から

リリの花の種が吸い寄せられ

虹色に光を放ちながら、変化させていく


ウエスターレンの炎とリリエルの花、

そして大宇宙を意味する名前

COSMOSへ……






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