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宮中晩餐会


大広間には、魔界中から招待された高級貴族悪魔たちが

次々に訪れ、それぞれ指定された席に座る。


最高魔軍の構成員たちも

意中の相手を華麗にエスコートしながら、大広間に現れる。


Lily‘sや、ダイヤの人間界の友人たちは、

緊張しなくて済むよう、近くに配席されており、

皆、ワクワクしながら時を待っている


バナトラはシースルーの黒ブラウスを着こなすバサラに

優雅にエスコートされている。

普段は強気のバナトラだが、厳かな雰囲気に緊張していた。

そんなバナトラを優しくフォローしながら

華麗に振る舞う水の悪魔。


いつもと違い、気品溢れるバサラにときめくバナトラ。

誤魔化すように、会話を続ける

「ダイヤちゃんのウェディング姿、楽しみね!」


黒地に四季折々の花々を金色に散りばめた極道風の着物。

赤い帯締めを可憐に着こなすのは、プルーニャ。

同じく和風の羽織に身を包んだ火炎の悪魔、セルダに手を引かれ、

帯締めのように顔を赤く染めている。


「よ…良かったんでしょうか、私まで…」

オロオロと躊躇うプルーニャに、優しく微笑みかけるセルダ

「心配しなくていいよ。俺も堅苦しい席は苦手じゃんね。

ちょっとだけ参加したら、すぐにハルミちゃんの散歩に行こうよ♪」


セリーヌはメーラの隣で、いつものように談笑している

「リリエルちゃんが一緒の席じゃないのは残念~」

「そうだね…でも、そりゃあ副大魔王様だもん。主賓扱いだよ。」

「…ドレス、決めてないって言ってたよね。楽しみ~♪」




 

「スプネリアちゃん、ラァードルの傍じゃなくて良かったの?」

Lily‘sの為に、特殊な結界を施しつつ

穏やかに見守っていた緑の悪魔、ベルデがそれとなく訊ねる


「いっ、いえいえ……とんでもないです!」

恐縮して真っ青になるスプネリア。



ラァードルは、雷神界からの招待客として

ダンケルが座る玉座の真横に威風堂々と座っている




 

その時、大広間の照明が落とされる

緩慢になりつつあった空気が、一変する


場内にアナウンスが流れる

『主賓、副大魔王様とお妃様がお見えになりました』


ピンスポットで照らされ、イザマーレとリリエルが姿を現す。

ウエスターレンに誘導されながら、ゆっくりと場内を進んでいく


それぞれのテーブルで、官僚クラスの悪魔たちに

挨拶で応えながら、主賓席に向かう


Lily‘sのいるテーブルに近づき、

ベルデに微笑みかけるリリエル。


「和尚、今回はたくさんお願いをしてしまって、すみません」


「(苦笑)いいんだよ。元々は、僕の我儘のせいだもんね。

あ、そうそう。この後は『始まりの場所』で、こじんまりと

お茶会を開こうかと思ってるんだけど、いいかな?」




 

「どうぞどうぞ。

パンデモニウム宮殿よりは保護しやすいでしょうし

皆様もゆっくり楽しめるでしょうから……」


リリエルはにこやかに答え、隣の席で一連の流れを

目を輝かせて見とれていた裕子に微笑みかける


「貴女は…ダイヤ様のご友人よね。裕子さん、でしたっけ?」


「!…っ、はい。お久しぶりです。

今日はこのような席に参加させてくださって

ありがとうございました!」


「遠方よりご苦労。魔界にいる間は、ベルデに任せてあるから

気兼ねなく楽しめば良い。」

イザマーレも気さくに声をかけ、そのまま主賓席に進んでいった。


裕子はため息をついて、独り言ちていた

(…なんて素敵な世界なの!閣下にエスコートされるリリエル様、とっても綺麗…

なっちゃん、ありゃあ勝ち目ないよ。私でも分かるわ(苦笑)…恋か…)



他の構成員様のように派手な見た目ではないけど、穏やかで

困ったことがあったら何でも対応してくれそう…

今回、裕子ような人間が座っていても

他の魔族や低級悪魔に嗅ぎ取られないよう、

細心の注意を施してくれていると、ダイヤから聞いていた


(…すっごい才能の持ち主なんだろうな…カッコいい…)


隣に座るベルデを、いつの間にか熱いまなざしで見つめていた裕子




 

やがて主賓席にイザマーレ夫妻が着座し

一斉にファンファーレが鳴り響く

王室専用の音楽隊による演奏だ。


情報局長として軍服を纏い、インカムで指示を出しながら

周辺警護を続けるウエスターレンも

キーボード奏者に気さくに笑いかける


「よろしく頼むな」

「はいよ!任せてくださいな♪」


そのやり取りを、穏やかに見つめるイザマーレ。

リリエルはテーブルの下でイザマーレの手を握り、微笑みかける

「…相変わらず、良い音だな。」

イザマーレもご満悦だった


音楽隊の演奏が終わり、薔薇の装飾で施された玉座が

闇のオーラに包まれる

純白のウェディングドレス、薔薇の花冠に身を包むダイヤと

黒のタキシードを華麗に着こなしたダンケルが姿を現す


「大魔王陛下、万歳!!!」

「お后様、おめでとうございます!!!!!」


参列していた悪魔たちは一斉に唱和する


「皆の者、今宵は楽しむがよい。」


ダンケルの一声を合図に、乾杯となった


美しく着飾ったダイヤは、玉座の隣に着座し、

なぜか虚空を睨みつけるように一点を見つめている




 

主賓席から様子を伺っていたリリエルたち


「なんだあ?あいつ。しかめっ面じゃねーか(笑)」

呆れ顔のウエスターレン

「…ふっ(失笑)どうやら、緊張Maxのようだな(苦笑)」

イザマーレもほくそ笑む


「ああ~(汗)だから言ったんですよ、やっぱり私がお傍に

いて差し上げたら良かった…(^-^; ダイヤ様、笑顔よ~…」

心から激励の声援を送りつつ、傍に行こうとはしないリリエル


ダイヤの傍に行きたがっても

許すつもりはなかったイザマーレだが、念のため、問いかける


「いいのか?リリエル。

あいつは今まさに、お前を求めているようだが」


「こういった試練を一つ一つ乗り越えていくこと

それが、何にも代え難い絆になっていくものですから。

ダイヤ様の幸せは、ご自分で掴み取ってこそ。

私の支えなど、お邪魔でしょう♪」


「なるほどな……」

にこやかに微笑むリリエルに

イザマーレもウエスターレンも感心する


「さて…そうは言っても警護上の手間はある。

ド緊張の姫君など、さっさと扉の向こうに消えてもらおう♪

どうせ、ダンケルもそのつもりだろうからな」

ウエスターレンは仕事モードに切り替わる


「…ダイヤ様たち、舞踏会には参加されないのですか?」

イザマーレは、残念そうなリリエルの髪を撫でてやる


「陛下が面倒だとおっしゃられてな(笑)

扉の奥で、特攻服でもヘビメタドレスでも

いくらでも勝手に楽しめば良いだろう。」



「…(失笑)」

さすがに言葉を失うリリエルに、イザマーレは畳みかける

「だが、お前の不参加は許さんぞ?約束は守らないとな♪」






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