top of page

彷徨う言霊


イザマーレは人間界で布教活動し、夜になると世仮の姿になり

人間界の女性を捕まえて魔界に連れて帰り次々に事を終えると

口封じの為に抹殺するようになっていった。まるで何かを埋めるように…


そのうちに、人間界では大地震、台風による水害、川の氾濫、

さらには疫病の蔓延……

様々な天変地異が起こり始める。

まるで、イザマーレの孤独、悲しみ、怒りを

地球が代弁しているかのように……


さすがにダンケルと構成員もイザマーレの異変に気が付いた。

ダンケルは頭を悩ませた。人間界の天変地異を起こしてるのは

確実にイザマーレの言霊なのは明らかだ。


「ダンケル?大丈夫?」

「…あぁ…ベルデ…居たのか…」


ダンケルらしくない言葉が返ってきた。

ダンケルは目頭を押さえてため息を付いた


「…少し休んだ方がいいよ…トップの大魔王が倒れたら…」

「…気持ちは有難いが…」


ダンケルは王座から立ち上がり、窓の外を見詰めていた。


「…ベルデ…私はどうしたらいい?…イザマーレを追い詰めたのは私だ...

この様な事態になるとは予想もつかなかった…」


「…ダンケル…」


慰める言葉も出てこない。ダンケルの気持ちは充分に理解しているからだ。

腕を組み考えながらダンケルは窓の外を見つめていた




 

…………



バサラは真夜中に魔方陣を使い、イザマーレの部屋に姿を見せた。

「イザマーレ!やっと会えた…」

バサラはイザマーレを抱きしめた


「バサラか…何しに来た?こんな真夜中に」

イザマーレは冷たく言った


「会いたかった!何があったのさ…心配で来たんだよ」


イザマーレはバサラから離れた

「もう帰れ。吾輩は大丈夫だ。何も心配は無用だ。帰れ。」


「帰らない。イザマーレが心配だから」


「帰らない…だと?…良いのか?どうなっても知らんぞ…」

「!!」


一瞬のうちにベットに移動させられ、バサラは押し倒されていた

「イザマーレ!ちょっと!まて!」

バサラは焦って抵抗したがイザマーレの魔力には敵わなかった

両手も自由が効かずガッシリと魔力で縛り上げられてしまった


「バサラ…前に吾輩の事が好きって言ってたよな…」

イザマーレがのし掛かってくる




 

「待った!イザマーレ!まずいって!

お前の恋魔居るだろ!バレたら俺が殺されるから!」

バサラはじたばた暴れ言ったが聞く耳を持たない。


「恋魔…?そんなのはもう居ない。大丈夫だ。後はお前の記憶を消せばいい」


「嫌だ!お前正気か!?」


「…帰れと言ったよな?お前は帰ろうとしなかった。

受け入れたと同じだよな?食わせて貰うぞ…バサラ…」


何を言っても無駄と分かったバサラは諦めてイザマーレを睨んだ

「イザマーレ…今回はたっぷり骨の髄まで食わしてやる。

だが!もう2度と暴走は止めろ!事を済ましたら俺の記憶も消せ!

それが条件だ!約束できるな?」

怒鳴り散らしバサラは言った。


「…たっぷり可愛がってやる…」

イザマーレは口唇を重ねて服を破っていく…


…最悪だ…心配して来たのに…俺が恋したイザマーレではない…

俺は暴走したイザマーレの捌け口なのか?…それとも…ただの魔形か?

…やめてくれ…イザマーレ…





 



人間界では凄まじい状況だった


『次のニュースです。只今○県に大雨特別警報が出ました。

…速報です△地域の堤防が水の勢いで決壊しました。

一刻も早く避難してください。繰り返します…』


『土砂崩れにより行方不明者○名未だ発見されてません…現場から中継です…』


人間界のテレビで毎日のようにニュースで流れている。

雨が止んだ途端に疫病、地震と次々に天変地異が起こっていた



 

「......」


ウエスターレンは愕然として立ち尽くしていた。

度々起こる天変地異…この現象…まさか…


ウエスターレンは誰も来ない廃墟のビルに向かう。外は土砂降り雨。

ビルに叩き付けられる音が響いている。久々に本来の姿になりベルデを呼び出した


「久しぶりだね?ウエスターレン、元気そうで良かった」

ベルデはニコニコして言った


「…悪いな…来てもらって」

ウエスターレンは煙草を出し吸った


「良いんだよ。いつでも来れるから…」


「…あいつは元気にしてるか?人間界にも来て活動している様だが…」


「……」


ベルデはウエスターレンを見て静かに話し出した

「…イザマーレは…我慢の限界だったみたい。

暴走してるよ。ウエスターレンに会えずに…」


ベルデの言葉に唖然とした


「まさか…この人間界の天変地異って…」

ウエスターレンは血の気が引く思いだった


「そう。イザマーレの行き場を失った言霊だよ。

君も気が付いてたんじゃないの?」

ベルデはウエスターレンをじっと見ていた。


「………」

ウエスターレンは何も言い返せなかった…




 

更にベルデはイザマーレの暴走した内容も全て伝えた


「…正直に言えば僕らにはもう止める事が出来ない。

ウエスターレンが魔界に帰ってイザマーレと会わなければ止まらないだろうね。」


「………」


「…脅す訳じゃないけど人間界の天変地異すらも止まらないと思う。

魔界に帰ってくるのは君次第だ。僕らには強制する事が出来ないから…」


愕然とするウエスターレン

外の雨の音が止むこともなく…

何かを訴えている音のように聞こえてならなかった…



………

魔界にある処刑所


ダンケルが冷酷な笑みをみせている

『…最後に言う事はないか?』

ダンケルは剣を持ち聞いている

『……後悔などない…ただ…最期にウエスターレンに会いたかっただけだな…

まぁ…こんな姿まで…見られたくはないがな…早く殺ってくれ…』


…何だ…これは…ダンケルの前に磔されてるのは…イザマーレなのか?

血まみれで金の長い髪も血に染まっている…顔が…下を向いていて見えない


『お前の恋魔なんぞ戻ってくる事もないのに…

お前の暴走したお陰で魔界までとんだ災難を引き起こした。

死んで詫びろ…私の手で幕を引いてやる…感謝するんだな!』


…ダンケル何を言ってる?…イザマーレ…逃げろ!

ダンケルは剣を振り下ろし鮮血が飛び散り、とてつもない叫び声が響きわたった


「やめろ!ダンケル!」

ウエスターレンは叫んで目を覚ました…



 

動悸が収まらない。

ベルデに会い、イザマーレの暴走の話を聞いてから

毎日イザマーレの夢を見る...今日は一番最悪な夢だった...


ダンケルが行事を終わらせ部屋に戻ってきた同時に

魔方陣が現れウエスターレンが姿をみせた


「……ウエスターレン!よく戻ってきた!心配したぞ!」

ダンケルはウエスターレンが戻ってきたことに喜んだ。


だが、抱きつこうとした途端、冷静に問いかけるウエスターレン

「ダンケル…イザマーレが暴走してるらしいじゃないか…」

「おや?心配で帰ってきたようだな…」

ダンケルは肩をすくめて言った


「…確かに。暴走している。私にもどうすることも出来ない。

イザマーレを止める為に手を掛けてもいいのだが…お前が悲しむだろ?」

ダンケルは微笑んで言った。


「……」

ウエスターレンは悪夢を思い出していた…絶対に避けなければ…


「今から私も行事がある。久々に護衛しろ」

「え?…護衛って…ダンケル、俺は…」

「大魔王の命令だ。直ぐに用意しろ」

「……」


舌打ちしながらもウエスターレンは従った。

イザマーレに会えると思いつつも複雑な思いだった。


ウエスターレンはダンケルの護衛で行事に出向く。

イザマーレも来ていた。

ウエスターレンはイザマーレに目を合わせることもなくダミアンの後ろにいた。


イザマーレはウエスターレンが居たことに驚き固まっていた。



 

しかしウエスターレンはイザマーレを見ることもなく

ダンケルだけを見て周りを警戒している。

イザマーレの心が更に凍り付いた

目の前に居て話すことも、近寄る事すら出来ない。


ウエスターレンはイザマーレを完全に無視していたように見えたが、

気が付かれないように邪眼を開いて、イザマーレを見ていた。


そして…今までの暴走…

バサラまで手を出していた事まで読み取ってしまった…


ショックで固まる


「ウエスターレン…大丈夫か?」

ウエスターレンの様子に気が付いたダンケルは、小声で囁いた

ハッとして邪眼を閉じ頷くウエスターレン。


「……」

ウエスターレンが邪眼を開いて見ていた事に、イザマーレも気が付いていた


ダンケルの護衛が終わり魔宮殿に戻ってきた2魔。


「…ダンケル…そろそろ人間界に帰るわ…」

ウエスターレンは疲れた顔を除かせ軍服の上着を脱いでいる


「また?魔界に居ろって言っても無駄な事だろうけど…」


「…俺のせいであいつを傷付けて…これ以上は…ここにいる資格なんかない」

ウエスターレンは煙草を取り出しバルコニーに行った


「…好きにしなさい…お前の思った通りにして気が済むのなら…」


ダンケルも止めることはせず、ウエスターレンは再び人間界へ戻っていった




 

ウエスターレンは本来の姿に戻り

共に活動していた人間を呼び出した。


「久々に悪魔の姿もカッコいいですね!戻るんですか?」

「…魔界に戻る。ちょっと長くなりそうだが…世話になった。」


ウエスターレンは黙って帰るわけにはいかなかった。

人間界に絶望しながら来た時、助けてくれた相手だった。


「そうですか…またいつでも戻ってきてくださいね」

彼はにこやかに言った。


「…有難うな…」

ウエスターレンも微笑んで魔方陣を魔力で出し消えて行った…

彼の前には床に焼き付いた魔方陣だけが残っていた




next                     目録に戻る

閲覧数:2回0件のコメント

最新記事

すべて表示

事件当日

…… 大魔王陛下から、久しぶりにお茶会を開こうと誘われたのは数日前。 今日がその日なのだが、まだ少し時間がある。 どうしたものかと思案していると 「あ、……クリス様…」 吾輩の髪に腰掛けている女、リリエルが呟いた あの時吾輩の手に落ちて、一度は瀕死の重傷を負ったが、...

ここに、永久に

久々の晴天... そろそろ人間界では春を迎える季節になっていた。 イザマーレから未だに呼び出しが掛かって来ない… リリエルは寂しさを感じていた。 イザマーレの髪に座るには彼の力も必要だった。 リリエルは寂しさを紛らわすために休まず接客業をしていた。...

陰謀

イザマーレはリリエルが姿を現した途端に抱きしめた。 「!…どうなされたのですか?…閣下」 いつもと違うイザマーレに動揺が隠せない 「…このままで居てくれ」 結構長い時間抱きしめ、やっとイザマーレは離れた 「リリエル…確認したいことがある…コイツ知ってるか?」...

Comentarios


bottom of page