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怒り狂う花


覚悟ができて冷静になると、

鍵をかけない心の声が駄々洩れに聞こえてくる


どうやら、この場で手荒な真似はせず、どこかに連れ去る算段のようだ

それなら、お店の方に迷惑をかけるより、移動先で暴れてやればいい


(…ふふっ お馬鹿さん♪…あまり難しい場所じゃないといいなあ💦)

そんな事を思いながら、微笑みを絶やさないリリエル


やがて打ち上げもお開きになり、会計を済ませて店の外に出た瞬間

強烈な光を浴びて、Lily‘sは全員気を失ってしまう

かつての恐怖心が蘇り、リリエルは身体の震えが強くなる

(…やはり…)

気を失ったフリをしながら、相手方の正体を確信し怒りが湧き上がる


暖かさも、ぬくもりも感じない、天界の刺客……



空気が振動するのを感じた途端、見ず知らずの場所に移動させられていた


相手方の様子を注意深く気にしながら、リリエルは状況把握に努める

肌に感じる空気……少なくとも人間界である事は間違いないようだ


(…良かった…人間界なら…この子たちも救える)


「……」

リリエルは一瞬迷ったが、こうなったら仕方ない。

この場に居るもう一名の悪魔、ダイヤの肩をゆすって起こす


「ん…え、リリエル様?!どうなさいました?

え、ってか、ここどこ?」

目を覚ましたダイヤは飛び起きて、騒ぎ始める


「ダイヤ様、落ち着いて」



 

「実はね、私たち今、囚われの身なのよ。

さっきのお店に居た時から狙われていたみたい」


「!!なんですって?!」


「ダイヤ様、お願い。心を静めて、私の話を聞いて。

Lily‘sの事は必ず守るから。私は今から、彼らと話をして

皆を解放させるよう頼むから。」


「リリエル様…?! 何言ってんの?!そんな事したら……!!」


リリエルの言葉に愕然とするダイヤは、落ち着いてなど居られず

むしろ大声で騒ぎ始める


その声で、Lily‘sも全員目を覚ました


「もう、ダイヤちゃんうるさいよ!…え、ってか、ここどこ?」

「え、やだ、何ここ!」


周囲の喧騒をよそに、涙を流して叫ぶダイヤ

「リリエル様!!そんな事したら、私が怒られます!嫌だ!絶対

言う事なんか聞くもんか!!!!」


「…ダイヤ様。貴女は泣いてないで、

みんなを閣下たちの元に連れて帰って。

貴女にしか出来ない事なの。分かったわね?」


リリエルの言い放った言葉に、全員が状況を把握した


「リリエル様?何を言ってらっしゃるの?

私もダイヤ様ど同じ意見です。

リリエル様だけこの場に残すような真似は、出来ません!!!」

聞いていたスプネリアも青ざめた顔で見つめている


その内、Lily‘sは口々に騒ぎ始める




 

「あたしらが女だからって舐めてんのよ。女の怖さを知らないのね

ここに注射もあるし、薬でも飲ませればいいんじゃない?」

普段から威勢の良いバナトラは、カバンをゴソゴソし始める


「そうよ、私らは駄目でも、リリエル様だけはお助けしなきゃ!

それこそ閣下に叱られるわ!ちょっと、スプネリアちゃん、石集めて!」

プルーニャも戦闘態勢になろうとする


「プルーニャさん、それなら私は

100トンハンマーありますので(*´艸`*)」

スプネリアは得意のハンマーを取り出してニコニコし始めた


「リリエルちゃんだけを置いてなんて、無理だよ~。

私たちも何が何でも戦うから~」

メーラもスケッチブックを閉じて、ゆっくり立ち上がった


さすがは、最高魔軍を慕う仲魔…


実はリリエルはこの間も、必死に身体の震えを隠し続けていたのだが

彼女たちのなりふり構わない、いつものやり取りに勇気をもらっていた。

いつの間にか、身体の震えも止まっていた


剣呑な雰囲気が立ち込めていた彼女たちの前に立ち、

いつものほんわかした表情で微笑むリリエル


「みんな、ありがとう。でも大丈夫。

これは、私の事件なの。だから、私だけが残ればいいの。

みんなの気持ちだけで十分だよ。安心して。私に任せて♪」


「…リリエル様……」


「申し訳ないのだけど、お見送りは出来なそうなの。

場所がよく分からなくて…

でも、みんなの力なら、きっと大丈夫よね?

ダイヤ様…みんなをお守りしてね。私も必ず、戻るから。

先に帰って待っててね。」




 

「!……分かった。リリエルちゃん、必ずだからね!!」

バナトラの言葉に他のLily‘sも納得して、支度を始める


リリエルは見張りの男に声をかけに行く

「神隠しごっこにはもう飽きたわ。そろそろ帰らせていただきます」


「ふっ 姉ちゃん。馬鹿な事言うな。お前ら全員、人質だからな」


「か弱きレディに対して、大の男が寄ってたかって…

少しは恥を知りなさいな。あなた方の目的は分かっているわ。

私だけは残って差し上げますから。それで十分でしょ?」


「…お前、名前は?」


「リリエルと言います。」


「!!」

案の定、名前を告げた途端、目の色を変える天使たち


「…良いだろう。おい!他の奴らは解放しろ。

せっかくだ。是非とも伝えてもらわなければな。

愛する女を奪われ、せいぜい泣き叫べとな!!」


「……じゃ、みんな。あとの事はよろしくね。」

リリエルは振り返り、いつものように微笑む


「嫌だ…いや!!!!!リリエル様ああああああ」

最後まで納得できず、泣き崩れるダイヤとスプネリアを

プルーニャたちが引きずりながら立ち去る


「さ、お前はこっちだ。来やがれ!」


多勢に無勢。明らかな優位な状況に、隙を見せるのは

どこの世界も同じね…




 

再び彼らと向き合った瞬間、リリエルは猛烈な勢いで睨み付けていた


「!? なんだ?突然命乞いか?」

天使たちは一瞬怯むが、舌なめずりしながらリリエルを取り囲む


「…いいえ。私のお願いを聞いてくださって、どうもありがとう。

一言、お礼を言いたくて。私にこんなチャンスを与えてくださるなんて。

10万年分の謝礼、お受け取りくださいませ♪」


一瞬、リリエルの髪が揺れたかと思うと、針のように先端を尖らせ

全ての天使たちの目を潰す。その攻撃だけで消滅した天使もいる

そのまま、植物の蔓に変化させた髪の先端で

激痛によろめく天使たちの首を絞めつけていく


部屋の中の衝撃に気づいた天使たちが次々に押し寄せキリがない


かつての怒りの記憶が、鮮明によみがえってくる

一名の女の命を奪うだけに飽き足らず、嘲り、暴行を繰り返し

凌辱の限りを尽くし、己の強欲に酔いしれるだけの卑劣さ


それが、どれだけあの方を苦しめた事だろう


「悪いけど、あなた達にお付き合いする気など、これっぽっちもないの

これ以上、無様な姿を晒す前に、さっさと降参なさいませ。」


怯む天使たちを後目に、リリエルも困っていた

(どうしたらいいだろう…急な事だから、種も持ち合わせていない

ずっと攻撃し続けるのも、もう飽きてきちゃったな…)


『リリエル、言霊を使え』


!!



 

その時、かすかに声が聞こえた

聞き間違うはずのない、愛しいイザマーレの声


『お前と吾輩だけが知る、秘密の歌だ。覚えてるだろ…?』





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